【フリー台本】双子の罠

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■概要
人数:2人
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
奏太(そうた)
結月(ゆづき)
結衣(ゆい)※結月と兼ね役

■台本

奏太(N)「美浦結月。唇の左上のホクロが可愛らしい、俺の彼女。それは、そんな結月の何気ない一言から始まった」

結月「ねえ、奏太。いつ、親に挨拶しに来てくれるの?」

奏太「ぶほっ! な、なんだよ、急に。まだ付き合い始めてばっかりだろ」

結月「なによ? もしかして、結婚する気ないってこと?」

奏太「いやぁ……。待てって。俺達、まだ大学生だぞ。それに出会って、まだ一年も経ってないし」

結月「時間なんて関係ないし。……あーあ。大学生活は奏太に弄ばれて終わるのか」

奏太「人聞きの悪いことを言うなよ!」

結月「私のことは遊びなんでしょ?」

奏太「んなことねーって」

結月「私のこと、好き」

奏太「ああ」

結月「愛してる?」

奏太「あ、あい……? まあ、そうだな」

結月「何よ、その曖昧な返事は。ハッキリ言いなさいよ」

奏太「……恥ずかしくて言えるか」

結月「やっぱり、愛してないんだ」

奏太「んなことねーって。大体、言わなくてもわかるだろ」

結月「あー、そういうとこが奏太のダメなところ。女の子は、はっきり言ってくれないと不安になるものなんだよ。ほら、ハッキリと、今、ここでいいなさい!」

奏太「うっ! いや、その……あー、見ろよ、結月。ほら、あそこの子供、双子だぜ。スゲーそっくり」

結月「え? うあー。ホントだ。凄いね。あれって親とかでもわからないんじゃない?」

奏太「かもな」

結月「……ねえ、奏太は双子の弟とかいないの?」

奏太「いるわけねーだろ。てか、いたらどうするんだよ」

結月「乗り換える」

奏太「なんだよ、そりゃ。じゃあ、お前は俺と同じ顔だったら、誰でもいいのかよ?」

結月「どうせ、奏太だって同じでしょ?」

奏太「んなことねーよ」

結月「ホントかなぁ? じゃあ、試していい?」

奏太「なんだよ、試すって。……って、そろそろ急がないと、講義に間に合わなくなるぞ」

結月「……」

場面転換。

奏太が歩いている。

結衣「あの、奏太さん、ですよね?」

奏太「……何言ってるんだ、結月。頭でも打ったのか?」

結衣「ふふっ。お姉ちゃんが言ってた通りの人ですね」

奏太「……お姉ちゃん?」

結衣「私、お姉ちゃんの双子の妹で、結衣って言います」

奏太「えええー! あいつ、妹がいるなんて一言も……。それに双子なんて」

結衣「あー、その……。お姉ちゃん、ちょっとコンプレックスがあるみたいで」

奏太「コンプレックス?」

結衣「えっと……その……。実は、小さい頃から、よく私と間違えられて」

奏太「ああー。だろうね。俺でも見分けがつかない」

結衣「それで、よく、私と間違われて告白されたりとか、彼氏が出来ても私の方に手を出そうとする人が多くて」

奏太「……」

結衣「だから、別の高校に行ってからは、お姉ちゃんは私のことを隠すようになったんです」

奏太「なるほど……」

結衣「ですが、昨日、急に彼氏に会ってほしいと連絡が来たんです」

奏太「……ああ。試すってそういうことか」

結衣「え?」

奏太「いや、なんでもない。結月に伝えておいてくれ。俺が好きなのは結月だって」

結衣「……」

奏太「どうした?」

結衣「いえ。お姉ちゃんからは、好きとかそいうことは言わないって聞いていたので」

奏太「……本人に面と向かっていうのは恥ずかしいだろ」

結衣「そんなことないですよ。ちゃんと本人に言ってあげてください」

奏太「嫌だよ。恥ずかしい」

結衣「わかりました。それじゃ、お姉ちゃんには伝えません」

奏太「おい!」

結衣「それじゃ、今日はもう帰ります」

結衣が走って行く。

奏太「今日は……?」

場面転換。

結月「奏太、おはよー」

奏太「おう。そういえば、昨日、妹に会ったぞ」

結月「へー。で、どうだった? 可愛かったでしょ?」

奏太「……それって、遠回しに自分も可愛いって言ってないか?」

結月「てへへ」

奏太「……妹から、何か聞いてないか?」

結月「ううん。何にも」

奏太「そ、そうか……」

場面転換。

結衣「奏太さん、こんにちは」

奏太「結衣……ちゃんだっけ? ちゃんと伝えてくれよ」

結衣「えへへ。だって、まだ、奏太さんの試験は終わってませんから」

奏太「試験?」

結衣「私に乗り換えるかどうかです」

奏太「だから、俺が好きなのは結月だって」

結衣「そんなの、まだわからないですよね? 色々デートしてみて、それでもちゃんとお姉ちゃんの方が好きって思えるかどうか、試してみないと」

奏太「いやいや。デートはまずいって」

結衣「大丈夫です。お姉ちゃんには了解えてますから」

奏太「いや、そういうことじゃなくて……」

結衣「さ、行きましょ」

場面転換。

結月「……」

奏太「おう、どうした、結月。元気ないな」

結月「……昨日は随分、結衣と楽しそうだったなーって」

奏太「……あいつ、そういうことだけ伝えるのかよ」

結月「やっぱり、奏太も結衣の方がいい?」

奏太「あのなぁ。お前とした方が楽しいって」

結月「……ねえ、好きって言ってよ」

奏太「……だから、恥ずかしいから言えねーって」

場面転換。

結衣が歩いている。

奏太「よお、結衣。買い物か?」

結衣「え? ああ、奏太さん。……あの、よくわかりましたね」

奏太「へ? なにがだ?」

結衣「私が結衣の方だって」

奏太「そりゃわかるよ」

結衣「あ、もうバレちゃいました?」

奏太「結構分かりやすいだろ」

結衣「あーあ、悔しいなぁ。じゃあ、デートしてください」

奏太「なんでだよ……」

場面転換。

結月「……」

奏太「よお、結月」

結月「……奏太」

奏太「最近、元気ないな。今度の休みに、どっか気晴らしにでも行くか」

結月「別にいいよ。結衣と行けば」

奏太「お前なぁ……」

結月「あ、そうだ。結衣が奏太に話があるって」

奏太「話? 何のだ?」

結月「さあ。とにかく、今度の土曜日に、この前デートの待ち合わせしたところだって」

奏太「……」

場面転換。

奏太が歩いて来る。

結衣「あ、奏太さん、遅いですよ」

奏太「……話って何?」

結衣「あの、奏太さん。お姉ちゃんと別れて、私と付き合いませんか?」

奏太「……そっか。ごめんな。不安にさせて」

結衣「……何の話ですか?」

奏太「おほん! ……俺は結月が好きだ。この世の誰よりも」

結衣「奏太……」

奏太「あ、愛してる……」

結衣「……」

奏太「これでいいか、結月」

結衣「え?」

奏太「お前、結月の方だろ?」

結衣「え? え? え?」

奏太「ホクロ」

結月「……あっ!」

奏太「結衣は唇の右上で、結月は左上だ」

結月「……やり忘れちゃった」

奏太「ごめんな。俺が変なところで恥ずかしがってたせいで、不安にさせて」

結月「ううん。こっちこそ、ごめん。奏太を騙すようなことして」

奏太「いいさ。……それより、お前、凄いな」

結月「なにが?」

奏太「ホクロのことが無かったら、分からなかったぞ。雰囲気も結衣そっくりだった」

結月「あー、いやー、そのー」

奏太「ん? なんだ?」

結月「実は……結衣自体、嘘なんだ」

奏太「……は?」

終わり。

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