強力な催眠術
- 2024.06.17
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブコメ
■キャスト
由梨花(ゆりか) 17歳
一輝(いつき) 17歳
女生徒 17歳
男生徒 17歳
ジョン 58歳
■台本
一輝と由梨花が5歳の頃。
一輝「由梨花ちゃんは、僕のことが好きになーる。好きになーる。好きになーる。はああああ!」
由梨花「……」
由梨花(N)「この日、私は一輝に催眠術にかけられた。それはとても強力で、今もその効果は持続している……」
場面転換。
一輝と由梨花が17歳になっている。
図書館の中。
椅子に座って、ペラペラとページをめくる由梨花。
由梨花「……」
そこに一冊の本を持った一輝がやってくる。
一輝「由梨花。これ見てくれ」
由梨花「……催眠術全集。あ、これって!」
一輝「しー。(小声で)D・R・グレー著書の奴だ」
由梨花「(小声で)凄い。よくこんな本が図書館にあったわね」
一輝「俺もビビった。これなら、きっと、お前の催眠術も解けるはずだ」
由梨花「うん。そうだね。さっそく借りて帰るわよ」
場面転換。
一輝の部屋。
一輝「はい!」
掛け声を出すと同時に手を叩く一輝。
由梨花「……」
一輝「どうだ?」
由梨花「っ!? 顔近い近い! ……ダメみたい。解けてない」
一輝「……そっか。これでも失敗か」
由梨花「やっぱり、一輝が最初にかけた本じゃないと無理なのかな?」
一輝「うーん。あの本、絶版でどこの本屋の在庫にもないんだよな。一応、オークションサイトとかも定期的に覗いてみるけど、売りに出されてない……」
由梨花「そっか……」
一輝「ごめんな。絶対に解いてやるから、もう少しだけ待っててくれ」
由梨花「あのさ、一輝」
一輝「ん?」
由梨花「どうして、ここまでしてくれるの?」
一輝「そりゃ、俺が最初に由梨花に催眠術をかけたのが原因だからな。俺が頑張るのは当然のことだろ?」
由梨花「でもそれってさ……」
一輝「なんだ?」
由梨花「……ううん。なんでもない」
由梨花(N)「私が一輝のことを、好きなままでいられるのは困るってこと、なのかな?」
場面転換。
体育祭。
競技が行われていて、大盛り上がり。
由梨花「一輝―! 頑張れー!」
ワーッと歓声が上がる。
女生徒「ふふふ。由梨花、必死に応援してるね。違うクラスなのに。って、彼氏だから当たり前か」
由梨花「ち、違うよ! 別に一輝は彼氏なんかじゃ……」
女生徒「嘘だぁ。いつも一緒にいるじゃん。一輝くん、由梨花にベタ惚れだね」
由梨花「……逆だよ」
女生徒「え?」
由梨花「とにかく、一輝は彼氏じゃないよ」
女生徒「ふーん。そうなんだ? じゃあ、私、狙っちゃおうかな。考えてみれば、一輝くん、運動もできるし、勉強もトップクラス、さらに生徒会にも入ってるんだもんね」
由梨花「……そうだね」
女生徒「まさに、完璧だよねー。天才ってやつかしら」
そこに男生徒が通りかかる。
男生徒「おいおいおい。勘違いしてもらったら困るぜ!」
女生徒「なに、あんた?」
男生徒「お、俺はあれだよ。一輝の親友ってやつさ」
女生徒「ふーん。で、何が勘違いなの?」
男生徒「あいつはさ、天才なんかじゃないんだ。努力家だよ。すごく」
女生徒「そうなんだ?」
男生徒「あいつは、いつも言ってるんだ。『そのままの俺でも、好きだと胸を張って言えるような男になるんだ』ってな」
女生徒「きゃー! もう! ラブラブじゃん、由梨花」
由梨花「……」
場面転換。
リビングのソファーに座っている由梨花。
インターフォンが鳴る。
由梨花「……誰だろ?」
場面転換。
ドアが開く音。
一輝「由梨花!」
由梨花「一輝? どうしたの?」
一輝「来てる! 駅前でイベント!」
由梨花「え? なにが?」
一輝「ジョン・モーリスが来てるんだ!」
由梨花「……その人って」
一輝「そう。俺が最初に由梨花にかけた催眠術の本を書いた人だ」
由梨花「それじゃ……」
一輝「ああ。今度こそ、由梨花の催眠が解けるかもしれない」
由梨花「……」
場面転換。
ジョン「……そうですか。私が書いた催眠術が……」
一輝「なんとか、お願いできませんか?」
由梨花「……」
ジョン「わかりました」
一輝「ありがとうございます!」
ジョン「では、こっちに来てください」
由梨花「は、はい」
ジョン「……」
由梨花「……」
ジョン「やっぱり、無理です。催眠術を解くことはできません」
一輝「そんなっ!」
由梨花「……」
ジョン「なぜなら、もう、とっくに催眠術が解けてるからです」
一輝「え?」
ジョン「そもそも、催眠術が何年もかかったままなんて、あり得ません」
一輝「……」
ジョン「いいですか? あなたのその気持ちは催眠じゃなく、本物です。ちゃんと認めてあげてください」
そう言って、ジョンが行ってしまう。
一輝「……」
由梨花「……」
一輝「えっと、その……ってことは」
由梨花「……そうみたい」
由梨花(N)「なんてことはない。私は昔からずーっと、一輝のことが好きだっただけだったのだ」
終わり。
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