それは恋の予感

それは恋の予感

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、童話、コメディ

■キャスト
隼人(はやと) 17歳
兵吾(ひょうご) 17歳
健斗(けんと) 17歳
美乃梨(みのり) 17歳

■台本

休み時間の教室内。

隼人「……」
兵吾「なあ、隼人。お前、夏休み、何か予定あるか?」
隼人「あん? ねーよ、んなもん」
兵吾「よし、じゃあ、隼人は参加で」
健斗「じゃあ、次は吉沢さんにも声かけようか」
兵吾「だな」
隼人「おい! ちょっと待てよ! 勝手に話進めんな。何の話だよ?」
兵吾「ああ。えっとな。夏休みにみんなで集まって肝試しすることになったんだよ」
隼人「……なったんだよ、じゃねえし。きいてないぞ」
兵吾「だろうな。さっき決まったんだよ」
隼人「あっそう」
健斗「隼人も参加でいいんだよね?」
隼人「ああ。まあ、なんもねーし」
兵吾「今年こそは美乃梨ちゃんとの仲を進展させろよ。ちゃんと一緒になるようにするからさ」
隼人「はあ? だから、美乃梨はただ家が隣なだけって言ってるだろ。恋愛感情はねーよ。俺も美乃梨も」
健斗「ホントに?」
隼人「なんだよ、その疑いの目は?」
兵吾「まあ、恋なんて、ちょっとしたことで、始まるもんだからな」
隼人「はっ! 今更、美乃梨とはねーよ」
健斗「まあまあ。とにかく、その日は開けといてよ」
隼人「はいはい。わかったよ」

場面展開。
夜の神社の境内。多くの人がいて、賑わっている。
そこに隼人がやってくる。

隼人「よお、結構、人集まったな」
兵吾「おお、隼人、来たか」
健斗「すごいよねー。クラスのみんな、ほとんど集まっちゃったんだもん」
隼人「よくもまあ。なんだかんだ言ってみんな、暇なんだな」
兵吾「まだ、例の感染症があるからな。どこも自粛自粛で嫌になるってもんだ」
健斗「だから、みんな、こういう機会を待ってたのかも。隼人は別として」
隼人「うっせーよ。どうせ、感染症がなくても、暇だよ」
兵吾「まあまあ。じゃあ、そろそろ、くじ引きでもするか」
健斗「隼人は美乃梨ちゃんと一緒がいいんだよね?」
隼人「なんでだよ」
健斗「ははは。冗談冗談。ま、隼人も楽しんで行ってよ」

健斗が行ってしまう。

兵吾「俺も手伝うか。言い出しっぺだし」
隼人「俺も手伝おうか?」
兵吾「いや、いいよ。もうすぐ始めるから待っててくれ」
隼人「……」

場面転換。
周りがワイワイと騒がしい。

隼人「……俺は5番か」
兵吾「じゃあ、紙に書いてある番号で同じ人とペアなー」
隼人「えーと、5番いるかー? 5番―」
美乃梨「……隼人、あんた仕込んだんでしょ?」
隼人「は? 何言ってんだ?」
美乃梨「……」
隼人「え? お前、5番なのか……」
美乃梨「……嫌なら、代わってもらうけど?」
隼人「いや、いいさ。こんなとこでゴネても寒いだけだろ」
美乃梨「そうだね。……まあ、仕方ないか。……っくしゅん」
隼人「おいおい。まさか、例の感染症じゃねーだろうな?」
美乃梨「ただの風邪よ」
隼人「風邪なら、無理してこなけりゃいいのに」
美乃梨「うっさいわね」
隼人「ま、パパっと行って帰ってこようぜ」
美乃梨「そうね」

場面転換。
ザッザッと隼人と美乃梨が並んで歩いている。

隼人「お前さ」
美乃梨「なに?」
隼人「こういう肝試しとか好きなのか?」
美乃梨「もしかして、あんたは苦手なの?」
隼人「いや、苦手っていうより、興味ない」
美乃梨「なら、なんで来てるのよ」
隼人「うっさいな」
美乃梨「まあ、私も三奈の付き合いで来ただけなんだけど」
隼人「お前は昔から、平然とお化け屋敷を通過するタイプだからな」
美乃梨「あんなの怖がる方がおかしくない? どうせ作り物なんだよ?」
隼人「可愛くないな」
美乃梨「うっさいわね」
隼人「じゃあ、今も、怖くないのか?」
美乃梨「うん。全然」
隼人「だよな。ただ、暗いだけだもんな」
美乃梨「うん」

二人が黙って歩いている。

美乃梨「ねえ、隼人」
隼人「ん?」
美乃梨「あんた、好きな人、いる?」
隼人「いや……いないけど。お前は?」
美乃梨「私もいない……」
隼人「そっか……」
美乃梨「彼女、欲しいと思う?」
隼人「まあ……な」
美乃梨「どんな子がいいの?」
隼人「んー。話が合う子、かな」
美乃梨「口下手なあんたと話が合う子なんているの?」
隼人「うっせーよ。お前はどうなんだ?」
美乃梨「そりゃ、私も……欲しい……かな」
隼人「どんな奴がいいんだ?」
美乃梨「一緒にいて、楽な人、かな」
隼人「なんだ、そりゃ?」
美乃梨「っていうかさ、異性って、あんたくらいしか接点ないから、あんまりイメージがわかないのよね」
隼人「あー、俺もそうだな」
美乃梨「なんだかねー」
隼人「なんだかなー」

二人が沈黙する。

隼人「……ん?」
美乃梨「どうかした?」
隼人「あー、いや、なんでもない」
美乃梨「あれ? あんた、顔、赤くない?」
隼人「そんなことねーし、お前だって赤いぞ」
美乃梨「え?」

二人が立ち止まって見つめ合う。

隼人「……」
美乃梨「……」
隼人「なんか、胸がドキドキする」
美乃梨「顔も熱い」
隼人「もしかして、これって……」
美乃梨「……恋の……予感?」
隼人「そ、そうかも……」
美乃梨「まさか、あんたに恋するなんて……」
隼人「……俺のセリフだよ」
美乃梨「隼人……」
隼人「美乃梨……」

見つめ合う二人。
そして。

隼人・美乃梨「はっくしゅん!」

場面転換。
隼人の部屋。

隼人「はっくしゅん! うう……」

ガチャリとドアが開く。

兵吾「おーっす。調子はどうだ?」
隼人「最悪だ」
兵吾「ははは。せっかくの夏休みなのにな」
隼人「……」
兵吾「そういえば、美乃梨ちゃんも寝込んでるらしいぞ。ホント、仲がいいな、お前ら」
隼人「……あいつにうつされんだよ、くそ」
兵吾「はははは。美乃梨ちゃんも同じこと言ってたよ」
隼人「……それにしても」
兵吾「ん?」
隼人「恋の予感じゃなかったのか……」
兵吾「何の話だ?」
隼人「いや、なんでもない。……はっくしょん!」

終わり。

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