本当に好きだから
- 2024.06.28
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
大我(たいが)
姫奈(ひな)
母親
店員
■台本
母親「大我―、コーヒー淹れたわよ」
大我「はーい」
ドタドタと大我がやってくる。
大我「母さん。これって……」
母親「言われた通り、インスタントじゃなくて、ドリップよ」
大我「ありがと」
大我がコーヒーを啜る。
大我「うっ!」
母親「どう? 美味しい?」
大我「……砂糖と牛乳ある?」
母親「(ため息)無理して飲むことないのに」
大我「べ、別に無理なんかしてないって! 俺は本当にコーヒーが好きなんだから!」
母親「はいはい。次はインスタントに戻すからね。ドリップだと高上りなんだから」
大我「うーん。ドリップならいけると思ったんだけどなぁ」
場面転換。
コーヒーショップ。
自動ドアが開き、大我が入って来る。
店内は割と賑わっている。
大我「えーっと……。あ、いた。……よし」
大我が受付の方へ行く。
店員「いらっしゃいませ」
大我「えーっと、ホットコーヒー。Sサイズで」
店員「ありがとうございます」
場面転換。
店員「お待たせしました。コーヒーSサイズです」
大我「どうも……」
コーヒーを持って歩く大我。
大我「えーっと、よし! ちょうど席が空いたぞ」
大我が駆け足気味に、席に向かい、座る。
大我「……(コーヒーを啜る)ふう」
姫奈「あれ? また会ったね」
大我「あ、う、うん! 奇遇だね(棒読み気味)」
姫奈「あ、またコーヒーなんだ?」
大我「コーヒー好きなんだ」
姫奈「へー。私と一緒だね。ここのコーヒー美味しいよね」
大我「うん。だから、つい、通っちゃうんだよね」
姫奈「同じだね。周りじゃあんまり、コーヒー好きって人がいなくて……」
大我「俺もそうだよ。高校生でコーヒー好きなんて言ったら、カッコつけだなんて言われちゃってさ」
姫奈「わかるー。コーヒーって、なんか大人の飲み物って感じがするもんね」
大我「うん」
姫奈「でも、お小遣いが足りないから、あんまり来られないんだよね」
大我「お、俺もだよ」
姫奈「あ、そういえば……」
女性客「あのー。飲み終わったなら、席、譲ってくれませんか……?」
姫奈「え? あ、すみません」
大我「あっ……」
姫奈が立ち上がる。
姫奈「それじゃね」
姫奈が歩き去っていく。
大我「……」
女性客「……なんですか?」
大我「いや、別に……」
大我が残ったコーヒーを飲み干す。
大我「にがっ……」
場面転換。
大我の家。
大我がやってくる。
大我「母さん、なんか手伝うことある?」
母親「はあ……。あんた、最近、ちょっと無駄遣い多いんじゃない?」
大我「い、いいじゃん。別に。母さんには関係ないだろ」
母親「ふーん。じゃあ、買い物行ってくれる?」
大我「いくらくれる?」
母親「たまにはタダで手伝ってくれてもいいじゃない?」
大我「それじゃ、意味ないじゃん」
母親「じゃあ、自分で行くからいいわよ」
大我「えー! お願い! 300円でいいから」
母親「だーかーら、無駄遣いし過ぎだってば」
大我「……お願い」
母親「何に使うの?」
大我「……コーヒー」
母親「……そこまでして格好つけたいの?」
大我「違う! ……本当に好きだから」
母親「はあ……。買い物と肩もみ」
大我「サンキュー!」
場面転換。
コーヒーショップ。
自動ドアが開き、大我が入って来る。
大我「えーっと……あ、いた」
大我が足早に姫奈の方へ向かう。
大我「あ、あの……偶然だね」
姫奈「あっ! よかった。今日は来ないかと思った……」
大我「え?」
姫奈「う、ううん。何でもない」
店員「お待たせしました。ホットコーヒーです。ミルクとガムシロップはどうしますか?」
姫奈「ガムシロップ2個で」
大我「え?」
姫奈「……あっ!」
店員「ガムシロップ2個です」
姫奈「……」
大我「……」
姫奈「えっと……その……」
大我「あの、注文いいですか?」
店員「どうぞ」
大我「ホットコーヒーをSで。ミルクとガムシロップは2個ずつで」
姫奈「え?」
大我「コーヒーってさ、苦いよね」
姫奈「……」
大我「でも、本当に好きだから」
姫奈「わ、私も」
大我「あ、あのさ」
姫奈「なに?」
大我「今度は、その……ファミレスで会わない?」
姫奈「え?」
大我「ドリンクバーで安いところ、知ってるんだ」
姫奈「う、うん!」
大我(N)「本当に好きなのはうそじゃない。……コーヒーじゃなくて、君のことだけど」
終わり。