お金のかからないプレゼント

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■概要
人数:2人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、恋愛

■キャスト
蒼(あおい) 17歳
海(かい) 17歳

■台本

蒼(N)「プレゼントって言うのは、どちらかというともらう側より渡す側の自己満足だと、私は思う。なんていうかな。渡したプレゼントで相手が喜んでくれるのを見る。結局はこれがプレゼントをする意味かなって。だから、私はプレゼントは値段じゃなくて、相手への想いが大事かなって思う」

海「ほい、これ、誕生日プレゼント」

蒼「……」

海「……なんだよ? 不服なのか? もらえるだけ、感謝しろよ」

蒼「……ありがと」

海「おいおいおい。なんだ? お前はあれか? 血も涙もないキャバ嬢的な何かか? もっと高いのが欲しかったとか、そういうのか?」

蒼「違うよ」

海「じゃあ、素直に受け取っておけよ。それ、欲しかったって言ってただろ」

蒼「……あのさ。無理しなくていいよ」

海「なにがだよ?」

蒼「別に私たち、付き合ってるわけじゃないし、ただの幼馴染でしょ? バイトまでして、嫌々プレゼント買うことないのに」

海「別に嫌々じゃねーよ。それに、そんなこと言うなら、お前だって、俺の誕生日にプレゼントくれるじゃねーか」

蒼「あれは、……別にお金かかってないし」

海「プレゼントには変わりないだろ。俺は借りを作っておきたくないだけだ」

蒼「借り? それだけのためにプレゼントしてたの?」

海「……それ以外、なにがあるんだよ?」

蒼「あっそう。わかった。じゃあ、次のあんたの誕生日はプレゼントあげない、それでいいでしょ!?」

海「お、おい、何怒ってるんだよ!」

蒼(N)「正直、ショックだった。いつもプレゼントを渡したときに喜んでくれてたから、嬉しかったんだと思い込んでた。……ずっと、喜ぶフリをさせてたってことか。……なんだか、バカみたい。仕方ないよね、ただの自己満足だったんだもん。……もう、プレゼントを渡すのはやめよう」

場面転換。

海「ほい、これ、誕生日プレゼント」

蒼「……え?」

海「なんだよ?」

蒼「去年、私、あんたにプレゼントしてないけど」

海「ああ、そうだったな」

蒼「じゃあ、なんでプレゼントしてくれるのよ?」

海「あー、なんつーか、やっぱ、プレゼントもらえないと、ちょっと寂しいっていうか……」

蒼「……は? じゃあ、プレゼント欲しいから、私にプレゼントするってこと?」

海「そうだな。……けど、お前は俺にプレゼントしたくねえっていうなら、別にいいけど」

蒼「……はあ。なんか、あんたはズレてるのよね」

海「そうか?」

蒼「プレゼント欲しいから、プレゼントするって……。ああ、もう、わかったわよ。あげればいいんでしょ、あげれば」

海「そんなに凝ったもんじゃなくていいから」

蒼「……」

蒼(N)「プレゼントを貰えるっていう状況で満足するってこと? 相変わらず、何を考えてるか、わからない」

場面転換。

海「ほい、これ、誕生日プレゼント」

蒼「……」

海「……なんだよ?」

蒼「……あのさ、なんで、年々、プレゼントが豪華になっていくのよ?」

海「嫌か?」

蒼「うーん。なんかさ、高いのあげとけばいいや的に思ってない?」

海「うっ、いや、女ってそうじゃないのか?」

蒼「あんた、全然、わかってない。適当に選んだっていうのが、一番嫌なんだよ」

海「て、適当ってわけじゃないぞ……」

蒼「私はさ、あんたがどんなものあげたら喜ぶかなって考えてるよ。もしかしたら、的外れかもしれないけど、それでも喜んで欲しいって思ってプレゼントしてる」

海「俺だって……。あ、いや。……ちょっと考えてみる」

蒼「……うん」

場面転換。

海「これ、誕生日プレゼント」

蒼「……箱? 開けていい?」

海「ああ……」

箱を開ける音。

蒼「あ……」

海「……ど、どうだ?」

蒼「ぷっ! あははははははははは!」

海「お、おい! 笑うなよ。これでも結構、考えたんだぞ」

蒼「ごめんごめん。……ありがと。すごくうれしいよ」

海「そ、そっか……」

蒼(N)「そのときに貰ったプレゼントは、今でも大事に残してある。私の中で一番のプレゼント」

場面転換。

ガチャリとドアが開く音。

海「おーい、そろそろ、行くぞー」

蒼「うん。今、行く」

コトっと、写真立てを置く音。

海「……あ、それって」

蒼「うん。あなたからのプレゼント」

海「……まだ持ってたのか」

蒼「だって。嬉しかったから」

海「……全然、金がかかってないプレゼントだったんだけどな」

蒼「言ったでしょ。金額じゃないって」

海「……そうだったな」

蒼「さ、行きましょ。お義母さんたち待ってる」

海「そうだな」

蒼(N)「彼が私にくれたプレゼント。それは二人で撮った写真。それは大切な思い出としても、私の心に残っている」

終わり。