お金のかからないプレゼント
- 2025.03.27
- ボイスドラマ(10分)

■概要
人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、恋愛
■キャスト
蒼(あおい) 17歳
海(かい) 17歳
■台本
蒼(N)「プレゼントって言うのは、どちらかというともらう側より渡す側の自己満足だと、私は思う。なんていうかな。渡したプレゼントで相手が喜んでくれるのを見る。結局はこれがプレゼントをする意味かなって。だから、私はプレゼントは値段じゃなくて、相手への想いが大事かなって思う」
海「ほい、これ、誕生日プレゼント」
蒼「……」
海「……なんだよ? 不服なのか? もらえるだけ、感謝しろよ」
蒼「……ありがと」
海「おいおいおい。なんだ? お前はあれか? 血も涙もないキャバ嬢的な何かか? もっと高いのが欲しかったとか、そういうのか?」
蒼「違うよ」
海「じゃあ、素直に受け取っておけよ。それ、欲しかったって言ってただろ」
蒼「……あのさ。無理しなくていいよ」
海「なにがだよ?」
蒼「別に私たち、付き合ってるわけじゃないし、ただの幼馴染でしょ? バイトまでして、嫌々プレゼント買うことないのに」
海「別に嫌々じゃねーよ。それに、そんなこと言うなら、お前だって、俺の誕生日にプレゼントくれるじゃねーか」
蒼「あれは、……別にお金かかってないし」
海「プレゼントには変わりないだろ。俺は借りを作っておきたくないだけだ」
蒼「借り? それだけのためにプレゼントしてたの?」
海「……それ以外、なにがあるんだよ?」
蒼「あっそう。わかった。じゃあ、次のあんたの誕生日はプレゼントあげない、それでいいでしょ!?」
海「お、おい、何怒ってるんだよ!」
蒼(N)「正直、ショックだった。いつもプレゼントを渡したときに喜んでくれてたから、嬉しかったんだと思い込んでた。……ずっと、喜ぶフリをさせてたってことか。……なんだか、バカみたい。仕方ないよね、ただの自己満足だったんだもん。……もう、プレゼントを渡すのはやめよう」
場面転換。
海「ほい、これ、誕生日プレゼント」
蒼「……え?」
海「なんだよ?」
蒼「去年、私、あんたにプレゼントしてないけど」
海「ああ、そうだったな」
蒼「じゃあ、なんでプレゼントしてくれるのよ?」
海「あー、なんつーか、やっぱ、プレゼントもらえないと、ちょっと寂しいっていうか……」
蒼「……は? じゃあ、プレゼント欲しいから、私にプレゼントするってこと?」
海「そうだな。……けど、お前は俺にプレゼントしたくねえっていうなら、別にいいけど」
蒼「……はあ。なんか、あんたはズレてるのよね」
海「そうか?」
蒼「プレゼント欲しいから、プレゼントするって……。ああ、もう、わかったわよ。あげればいいんでしょ、あげれば」
海「そんなに凝ったもんじゃなくていいから」
蒼「……」
蒼(N)「プレゼントを貰えるっていう状況で満足するってこと? 相変わらず、何を考えてるか、わからない」
場面転換。
海「ほい、これ、誕生日プレゼント」
蒼「……」
海「……なんだよ?」
蒼「……あのさ、なんで、年々、プレゼントが豪華になっていくのよ?」
海「嫌か?」
蒼「うーん。なんかさ、高いのあげとけばいいや的に思ってない?」
海「うっ、いや、女ってそうじゃないのか?」
蒼「あんた、全然、わかってない。適当に選んだっていうのが、一番嫌なんだよ」
海「て、適当ってわけじゃないぞ……」
蒼「私はさ、あんたがどんなものあげたら喜ぶかなって考えてるよ。もしかしたら、的外れかもしれないけど、それでも喜んで欲しいって思ってプレゼントしてる」
海「俺だって……。あ、いや。……ちょっと考えてみる」
蒼「……うん」
場面転換。
海「これ、誕生日プレゼント」
蒼「……箱? 開けていい?」
海「ああ……」
箱を開ける音。
蒼「あ……」
海「……ど、どうだ?」
蒼「ぷっ! あははははははははは!」
海「お、おい! 笑うなよ。これでも結構、考えたんだぞ」
蒼「ごめんごめん。……ありがと。すごくうれしいよ」
海「そ、そっか……」
蒼(N)「そのときに貰ったプレゼントは、今でも大事に残してある。私の中で一番のプレゼント」
場面転換。
ガチャリとドアが開く音。
海「おーい、そろそろ、行くぞー」
蒼「うん。今、行く」
コトっと、写真立てを置く音。
海「……あ、それって」
蒼「うん。あなたからのプレゼント」
海「……まだ持ってたのか」
蒼「だって。嬉しかったから」
海「……全然、金がかかってないプレゼントだったんだけどな」
蒼「言ったでしょ。金額じゃないって」
海「……そうだったな」
蒼「さ、行きましょ。お義母さんたち待ってる」
海「そうだな」
蒼(N)「彼が私にくれたプレゼント。それは二人で撮った写真。それは大切な思い出としても、私の心に残っている」
終わり。
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