【声劇台本】お引越し

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
静修(せいしゅう)
一(はじめ)
果歩(かほ)

■台本

ガチャリとドアが開き、静修が入って来る。

静修「おはよー」

母親「やっと起きて来たのね。ほら、早くしないと学校遅刻するわよ」

静修「うん……」

トコトコと歩く静修。

静修「……ねえ、お母さん。この段ボールの山、なに?」

母親「あれ? 静修に言ってなかったっけ? 引っ越しするのよ」

静修「……は?」

場面転換。

静修「はあああ!」

静修が一に向かって走る。

静修「やあ!」

一「はっ!」

静修「うわっ!」

静修の攻撃は躱されて、一の拳が静修の顔面に当たり、派手に倒れる静修。

一「俺の勝ちだな」

静修「まだまだ! もう一回勝負だ!」

一「へえ。今日は随分と気合い入ってるじゃねーか、静修」

静修「今日は、一に勝つまでやる!」

一「なんかあったのか? ……まあいいや。来いよ。何回やっても俺が勝つ」

静修「はああああ!」

場面転換。

教室内。

静修「いててて……」

果歩「あれ? 静修くん。お昼休みに喧嘩したの?」

静修「喧嘩じゃなくて、勝負!」

果歩「ふーん。違いがよくわからないけど。でも今日は随分とボコボコにされたんだね」

静修「ちくしょう。一回くらいは勝ちたかったなぁ」

果歩「ははは。一くん、めちゃくちゃ喧嘩強いもんね。中学生にも勝ったことあるんでしょ?」

静修「高校生にも勝ったことあるよ、あいつ」

果歩「強いことがそんなにいいことなのかはわからないけど、諦めずに頑張れば、そのうち、静修くんだって勝てるようになるわよ」

静修「そのうちじゃなく、今日、勝ちたかったんだよ……」

果歩「……何かあったの?」

静修「果歩ちゃん、これ、誰にも言わないでほしいんだけど、俺、転校することになった」

果歩「ええ! いつ?」

静修「今度の日曜……」

果歩「嘘……。なんで、そんな急に?」

静修「俺だって、母さんから今日の朝に聞いたんだよ」

果歩「おばさんが言ってたなら、本当なんだね……」

静修「こんな嘘付くかよ」

果歩「……なんとかならないの?」

静修「なると思うか?」

果歩「……だよね」

静修「だから、今日中にあいつに勝っておきたかったんだよ」

果歩「ねえ、どこに転校するの? 隣町とか?」

静修「……知らねえけど、外国だって。父さんの仕事の関係で」

果歩「……そっか。じゃあ、お別れ会しないと!」

静修「ああ、いい。そういうの、苦手だから」

果歩「でも……」

静修「いいって、ホントに。黙っていなくなる方がクールで格好いいだろ?」

果歩「……バカ」

場面転換。

学校のチャイム。

生徒たちが下校している。

教師「みんなー、気を付けて帰るのよー」

静修「あの、先生!」

教師「ん? どうしたの、静修くん」

静修「今までありがとうございました。さようなら」

教師「え? あ、うん。さようなら」

静修が走っていく。

場面転換。

トボトボと歩く静修。

一「おい、静修」

静修「一……」

一「ちょっと面貸せ」

静修「……ああ」

場面転換。

一と静修が歩いているが、立ち止まる。

一「着いたぞ」

静修「河川敷? こんなとこに何の用?」

果歩「静修くん……」

静修「果歩ちゃん?」

男子生徒1「おい、静修! 黙って転校するなんて許さないぞ」

男子生徒2「そうだ、そうだ!」

女子生徒「転校するのに、お別れ会しないなんて、イジメっぽく見えるじゃない」

静修「みんな……」

果歩「大したことはできなけどさ、みんなでお小遣い出し合って、お菓子とジュース買ったの。さ、お別れ会、しよ?」

静修「(涙ぐんで)バカ……。こういうの苦手だって言ったのに……」

一「ほら、最後の晩餐ってやつだ」

静修「うん」

場面転換。

みんながワイワイ騒いでる。

男子生徒1「いいなー。外国かー。格好いいなー」

静修「だろ?」

一「よし、お菓子もなくなったことだし、そろそろ始めるか」

静修「なにを?」

一「一回でも俺に勝っておきたいんだろ?」

静修「……ああ」

場面転換。

ドカッと静修の腹に一のパンチがめり込む。

静修「うっ!」

一「いいか、静修。最後だからって、手加減はしねえからな。実力で、俺から一勝をもぎ取れ!」

静修「わかってる! うおおお!」

一「はっ!」

静修「うっ! まだまだ!」

一「おら! 腰が引けてるぞ! もう一歩踏み込め!」

静修「はああああ!」

ドカッと静修のパンチが一の顔を捕える。

一「ぐあっ!」

一が倒れる。

静修「やった……」

一「……ああ。お前の勝ちだ」

静修「やったー! やっと勝てた!」

果歩「静修くん、おめでとう」

静修「果歩ちゃん、ありがとう」

果歩「ねえ、外国でもスマホって使えるのよね?」

静修「うん……。多分」

果歩「じゃあ、メールはできるよね?」

静修「う、うん……」

果歩「10年」

静修「え?」

果歩「10年だけ、待ってあげる。その間は彼氏を作らないでおくから」

静修「う、うん……。わかった。10年したらちゃんと戻って来る」

果歩「うん。でも、メールはちゃんと毎日してね」

静修「わかった」

一「それなら、このリベンジマッチは10年後だな」

静修「ああ。そのときも俺が勝つ!」

一「ふっ! 楽しみにしてるぜ」

静修「じゃあ、みんな、10年後に会おうぜ! バイバイ!」

場面転換。

教室内がざわざわしてる。

静修「……」

一「おい、静修」

静修「っ!」

一「お前、なんでここにいるんだ?」

静修「えっと、その……引っ越しは父さんだけみたいで……」

一「ふざけんなっ! あの感動を返せ!」

静修「うわっ! ちょ、タンマ!」

果歩「……バカ」

バコバコと殴られる音。

静修「ぎゃー! 父さん、俺も連れてってー」

終わり。

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