軽口
- 2023.09.06
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
悟(さとる) 17歳
重行(しげゆき) 17歳
美純(みすみ) 17歳
■台本
学校内。
悟「あ、あの、美純さん。その、きょ、今日も美しいですね!」
美純「……あ、ありがとう」
悟「それで、その……今度の土曜に……」
美純「あ、ごめんなさい。友達が呼んでるから」
美純が歩き去っていく。
悟「あっ……」
場面転換。
教室内。
悟「ってわけで、全然、相手にされないんだよ」
重行「諦めればいいんじゃねーの?」
悟「……お前が欲しがってたゲーム、貸そうと思ったけど、止めた」
重行「待て待て! すまんすまん。えーっと、なんだっけ? 前原さんと仲良くなりたいんだよな?」
悟「ああ」
重行「んー。そうだなぁ。別に前原さんは高嶺の花ってわけじゃないし、お前でもワンチャンはありそうだけどな」
悟「だよな!?」
重行「ってなると、やっぱりアプローチの仕方がダメなんじゃないか?」
悟「アプローチ?」
重行「ほら、お前ってさ、女と話すのに、全然慣れてないだろ?」
悟「そ、そうかな……?」
重行「自覚ねーのかよ」
悟「そんなにか?」
重行「この際だから、はっきり言ってやる。お前の場合、女と話すとき、意識し過ぎて、挙動不審でキモイ」
悟「がーん……」
重行「もっと、こう、軽口を言うくらいの方がいいんだよ」
悟「軽口? 出来る気がしないんだが?」
重行「まあ、慣れるしかねーだろうな」
悟「どうやって?」
重行「簡単なのはクラスの女子に、片っ端から話しかければいいんだけど――」
悟「え? いや、それはどうだろう」
重行「無理なのはわかってる。お前が慣れるよりさきに、変な噂が立つ方が早いだろうからな」
悟「……」
重行「となれば、知り合いを使うしかないだろ」
悟「女の知り合い? んー。母さんくらいしかいないぞ」
重行「親を女の一人に数えるなよ」
悟「じゃあ、誰もいないじゃん」
重行「いるだろ。一人だけ」
悟「だれ?」
重行「俺の姉ちゃん」
場面転換。
重行の家。
重行「ってことで、ねーちゃんには話しておいた。じゃあ、行ってこい」
悟「すーはー。やっぱ、緊張するな」
重行「そうか? ねーちゃんなんて、ほぼ男みたいなもんだろ」
悟「いや、そうじゃなくて、恐怖で」
重行「ああ……。そっちか。まあ、それは我慢しろ」
悟「じゃあ、行ってくる」
ガチャリとドアを開く音。
場面転換。
ガチャリとドアが開く音。
重行「おお! どうだった?」
悟「……ば、ばっちりだ」
重行「……お前、なんで、そんなに顔がボコボコなんだ?」
悟「……特訓の成果だ」
場面転換。
学校内。
悟「じゃあ、行ってくる」
重行「軽口言えるくらいに、自然にだぞ」
悟「任せておけ」
悟が美純に近づいていく。
悟「よお、美純」
美純「……なに?」
悟「相変わらず、今日もダセえ化粧だな。分厚過ぎるぞ」
美純「……」
悟「なんなら、俺がお勧めの化粧品、教えてやるぞ。今度の土曜に、一緒に買いにいかねーか?」
美純「死ね!」
スタスタと歩き去っていく美純。
悟「なっ……」
重行「……」
悟「おい! 軽口で言ったのに、ダメだったぞ!」
重行「さっきのは軽口じゃなくて悪口だ」
悟「……」
終わり。