姉ちゃんの手料理

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
拓也(たくや)
環奈(かんな)
蒼汰(そうた)
祐樹(ゆうき)

■台本

拓也(N)「俺の家は、両親が共働きで、いつも買えりが遅かった。だから、俺にとって、母親のような存在は姉になる。俺の身の回りのことはもちろん、掃除や洗濯は姉の仕事だった。……そして、料理も」

場面転換。

拓也が7歳、環奈が9歳の頃。

環奈「拓也―、ご飯できたよー」

拓也「はーい!」

ドタドタと走ってやって来る拓也。

拓也「うわー。ハンバーグだー!」

環奈「えへへ。いつもお弁当だと味気ないでしょ? だから、今日は頑張って、お姉ちゃんが作ってみたんだ」

拓也「美味しそー! いただきまーす」

拓也が一口食べる。

拓也「もぐもぐもぐ。美味……うっ!」

バタリと机に突っ伏す、拓也。

環奈「拓也? 拓也―――!」

場面転換。

拓也(N)「俺は初めて、姉の料理を食べたとき、1週間入院することになったのだ」

場面転換。

拓也が高校1年生になっている。

拓也がバタバタとリビングに走って来る。

拓也「やべぇ! 寝坊した! 遅刻遅刻」

環奈「ちょっと、拓也! パンだけでも食べていきなさい!」

拓也「そんな時間ねーって」

環奈「咥えて走ればいいでしょ」

拓也「んな、ベタベタ王道のラブコメみたいなこと、できるかよ」

環奈「いいから、はい。用意してあるから」

拓也「……」

環奈「大丈夫よ。パンは市販のもので、焼いて、バター塗っただけだから」

拓也「そっか。じゃあ、いただきます」

一口、パンをかじる拓也。

拓也「うおっ! がはっ! なんだ、こりゃ!」

環奈「……あ、そういえば、そのバター、私が作ってみたやつだった」

拓也「先に言え!」

場面転換。

昼休みの学校の教室。

蒼汰「で、遅刻と? 情け―な」

拓也「いや、そこは15分でトイレから出れた俺を称賛してほしいところだ」

蒼汰「お前さあ、いつも環奈さんの料理は殺人級とか言うけどさ、あんな美人に作ってもらった料理は、味なんか関係ないだろ。食べさせてもらえるだけ、幸せだと思え」

拓也「じゃあ、ほれ。俺の弁当、一口食ってみろ。姉ちゃんが作ったやつだから」

蒼汰「……」

拓也「どうした? 箸が止まってるぞ」

蒼汰「きょ、今日のところは許してやる」

拓也「なにがだよ。……っていうか、祐樹、お前大丈夫か? 最近、ずーっと虚ろな目をしてるけど」

祐樹「え? あー、まあ」

蒼汰「祐樹のやつ、不眠症なんだってよ」

拓也「へー。なんだ? 新しいゲームでも出たのか?」

蒼汰「ちげーって。それはただの夜更かしだろ。祐樹の場合、夜、寝たくても寝れねーんだってよ」

拓也「そうなのか?」

蒼汰「そのせいで、昼はスゲー眠くなるんだってよ」

拓也「よし、俺が目を覚まさせてやろう」

蒼汰「どうやって?」

拓也「ほら、祐樹! これ、一口食べてみろ」

祐樹「え? ……あー、うん」

祐樹がフラフラとした手つきで拓也の弁当のおかずを一つ取って、口に入れる。

祐樹「むぐむぐむぐ(食べている音)」

バタンとそのまま気絶して机に突っ伏す。

蒼汰「……目を覚ますどころか、止め刺してどうする?」

拓也「……ね、眠たいときは寝るのが一番だ」

蒼汰「鬼だな」

場面転換。

通学路。

拓也と蒼汰が歩きながら話している。

蒼汰「じゃあ、また明日な」

拓也「おう!」

場面転換。

玄関のドアを開ける拓也。

拓也「ただいまー。って、うお!」

男「ありがとうございます! それじゃ」

拓也とすれ違うように、ドアを開けて出て行く男。

拓也「……姉ちゃん、今の誰?」

環奈「いや、良く知らない」

拓也「……知らない奴を家に入れるなよ」

環奈「だって、料理渡すだけだから」

拓也「……は?」

場面転換。

休み時間の教室。

蒼汰「環奈さんの料理が大人気?」

拓也「そうなんだよ。連日、色んなやつがやって来てさ。で、姉ちゃんが張り切っちゃって」

蒼汰「んなの、料理じゃなくて、環奈さん目当てなだけだろ」

拓也「俺も最初はそう思ったんだけどさ、どうやら違うみたいなんだよ」

蒼汰「というと?」

拓也「まず、女も来てる」

蒼汰「……ま、まあ、人の性癖なんて色々だからな」

拓也「あとは、本当に料理を受け取って帰るだけだ。その際、一切、話をしようとしないんだ」

蒼汰「……それは、あれだろ。いきなり、下心見え見えだったら、警戒されるからじゃないか?」

拓也「んー。どう見ても、姉ちゃん目当てじゃなさそうなんだよな。なんか、料理にしか興味がないって感じって言うか……」

蒼汰「うーん。あ、わかった!」

拓也「お? なんだ?」

蒼汰「きっと、ドMなんだよ」

拓也「……まあ、確かにあれは他では味わえない苦痛だけどさ」

蒼汰「きっと、ドMがドMを呼んで、大人気になったんだよ」

拓也「夜も末だな」

そのとき、ガラガラと教室のドアが開く。

祐樹「よお! おはよう!」

拓也「お、祐樹。いつになく元気だな」

祐樹「ああ、最近はちゃんと寝れてるからな」

拓也「例の、不眠症ってやつは治ったのか?」

祐樹「ああ。薬を飲まなくてもばっちりだ」

蒼汰「よかったじゃねーか」

祐樹「ホント、環奈さんのおかげだよ」

拓也「……え? なんだって?」

祐樹「だから、環奈さんの料理のおかげだって話だよ」

拓也「……」

蒼汰「……」

祐樹「え? なになに? どうしたの、二人とも、そんな引いた目で見て」

蒼汰「お前もドMだったのか」

拓也「ま、まあ、性癖は人それぞれだからな。俺はそういうところで差別はしない人間だから安心してくれ」

蒼汰「なら、なんで離れるんだよ」

祐樹「何言ってるの? 俺はただ、寝る前に一口、環奈さんの料理を食べてるだけだっての」

拓也「へ?」

蒼汰「まさか……」

祐樹「一瞬で寝れるし、朝まで全く起きないんだ。いやー、不眠症が嘘のようだよ」

拓也「それって、単に気絶してるだけでは?」

祐樹「そのことを、他の不眠症の人には為したらさ、みんな大好評だよ」

拓也「……なるほど。そういうことだったのか」

終わり。

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