【シナリオブログ】蒼天の星のように①

人 物 表

京 四 郎 ( 2 1) ス リ 師
お 銀 ( 1 6) ス リ 師
条 庵 ( 4 3) ス リ 師

直 江 忠 正( 4 3)代 官
今 井 一 良( 4 5)番 頭

市 蔵 ( 4 1) 中 む ら 屋 の 店 主
赤 川 重 幸( 3 2)直 江 の 部下
茂吉 ( 1 9) ス リ 師

そ の 他

1 城下町
お銀(N)「江戸時代末期。幕末と言われた時代。世間では、大騒ぎをしている中、私たちは何も変わらない生活を送っていた。この、京四郎って男も……」

2 街中。往来
様々な人々が歩いている。
そんな中で京四郎が、数人の女性を連れて、歩いている。
街娘1「京様、最近全然、お店に顔出してくれないわね。浮気してるんじゃないの?」
街娘2「ただ、あんたに飽きただけでしょ」
街娘1「なにをー!」
京四郎「おいおい、喧嘩するなって。ちゃんと銭が入ったら、全員まとめて相手してやっからよ」
街娘1「きゃー! 約束よ」
狂四郎が、歩いている赤川重幸(32)とぶつかる。
京四郎「おっと、すまねえな。お侍さん」
赤川「貴様! どこを見て歩いておる」
京四郎「いやぁ。こいつらに夢中になっててね。まあ、許してくれや(ポンと肩を叩く)」
赤川「無礼な! 叩き斬ってやる」
街娘2「きゃー!」
そこに、茂吉が走ってくる。
茂吉「まあまあ、お侍様。ここは一つ穏便に」
赤川「なんだ、貴様」
京四郎「……茂吉」
茂吉「ぶつかったくらいで人を斬ったとなれば、お侍様の品が落ちます。今日のところは、これで勘弁してくださせえ」
チャリっとお金を渡す音。
赤川「ふん。こんなはした金、賄賂にもならんわ。……だが、まあ、今日の俺は機嫌が良い。見逃してやる」
歩き去っていく赤川。
京四郎「なんだよ、茂吉。しゃしゃり出……」
茂吉に引っ張られる京四郎。
茂吉「京四郎の兄貴。ちょっと、こっちへ来てくだせえ」
京四郎「おい、引っ張るなよ!」
街娘1「あー、京様ー」
物陰まで京四郎を連れて行く茂吉。
茂吉「どういうつもりなんです」
京四郎「何がだよ」
茂吉「もう少しで、叩き斬られるところだったんですよ」
京四郎「別に。そんときゃ、そんときだ」
茂吉「……兄貴」
京四郎「(懐から財布を出して)ほら、茂吉、さっき、あいつに渡した分の金だ。返す」
茂吉「え? その財布って……。まさか、さっきの……赤川から、スったんですか?」
京四郎「隙だらけだったから、つい、な」
茂吉「冗談じゃないっすよ。あいつ、直江の直属の部下って知らないんですか?」
京四郎「直江?」
茂吉「この街の関税を仕切ってる奴ですよ。裏で、色々悪どいことしてるって噂っす」
京四郎「直江? 直江……どっかで……」
茂吉「実は、俺、次の獲物に赤川を狙ってるんすよ。見てください」
茂吉が物陰から指を差す。
赤川が店へ入っていく。
その店の屋根には『中むら屋』と書かれた看板が掲げられている。
茂吉「赤川のやつがあそこに通うようになってから、あそこの店主、妙に羽振りがよくなったって噂っす。きっと赤川とつるんで、なんかやってるんですよ」
京四郎「……」

3 呉服屋中むら・店内
赤川が店に入ってくる。
赤川「市蔵、いるか?」
すると奥から、店主の市蔵(41)が出てくる。
市蔵「これはこれは赤川様。ようこそお越しくださいました」
赤川「最近は、随分と稼いでいるようだな。直江様も喜んでいらっしゃる」
市蔵「今月の上納金です」
市蔵が、布にくるんだ小判を赤川に渡す。
布を開いて、小判を確認する赤川。
赤川「ふむ。確かに(袖の下にしまう)」
市蔵「で、次の『あれ』の仕入れですが……」

4 街中
中むらを物陰から覗き見ている茂吉。
興味なさそうに、赤川の財布を物色している京四郎。
茂吉「今回は、スリじゃなくて、盗みに入ろうかと思ってるんです。赤川のやつ、絶対溜め込んで……って、聞いてんすか?」
京四郎「(物色しながら)興味ねえ」
茂吉「あれ? らしくないっすね。侍専門に狙ってる兄貴が、そんな弱腰なんて」
京四郎「バーカ。性に合わねえんだよ、盗みは。その場で、相手の懐からスるのが、醍醐味ってもんだろ」
茂吉「相手は侍っすよ。捕まったら、一巻の終わりじゃないですか」
京四郎「だから面白れぇんだろうが」
茂吉「いつか、本当に斬られちまいますよ」
京四郎「……だと、良いがな」
茂吉「え?」
京四郎「いや……」
財布の中に折りたたまれた紙を見つける。
京志郎「ん? なんだこりゃ?」
京四郎が取り出して紙を広げる。
茂吉「(覗き見て)地図っすね。この街の」
地図には数か所、丸と矢印が書いてある。
茂吉「丸と矢印は、なんなんすかね?」
京四郎「さあな(懐にしまう)」
歩き始める京四郎。
茂吉「あ、兄貴。もし、気が変わったら、声かけてくださいね」
京四郎「しくじって打首になるんじゃねえぞ」
茂吉「縁起でもねえ」
京四郎「はっはっは」

5 同・往来
往来を歩く京四郎。
ふと、櫛屋の前で立ち止まる。
櫛屋の親父「お、兄ちゃん、これなんかどうだい? 贈り物にしたら、吉原の姉ちゃんだって落とせるよ」
京四郎「……いや、間に合ってる。ほら」
京四郎が懐から櫛を出す。
櫛は古くて色褪せ、所々欠けている。
櫛屋の親父「(顔をしかめて)新しいやつにした方がいいんじゃねーのかい?」
京四郎「(微笑んで)これで良いんだ」
×     ×    ×
街の往来。
菊(5)が櫛を手に持ってにっこりと微笑んでいる。
菊「ありがとう、お兄ちゃん! 菊、大事にするね」
×     ×    ×
6 同(回想終わり)
京四郎「……」
櫛屋の親父「どうしたんで? ボーっとして」
京四郎「(ハッとして)なんでもねえさ」
再び歩き出す、京四郎。

タイトル「蒼天に光る星たち」

7 城の大広間
直江忠正(43)と今井一良(45)が並んで座っている。
直江「ちっ、今井! なんなのだ。この忙しい時期に呼びつけおって!」
今井「静かにしろ、直江。もうすぐ殿がいらっしゃる。話はその時にする」
直江「ふん!」
大名が、広間へ入ってくる。
大名「待たせて、すまんな」
直江と今井の前に座る、大名。
大名「ときに、今井」
今井「はっ」
大名「そちの考案した、番所の制度だが、他の藩にも注目されるほど好評だぞ」
今井「ありがとうございます」
直江「(悔しそうに)ちっ」
大名「直江も、商いの方の制度で力を尽くしていると聞く」
直江「勿体無いお言葉」
今井「……(チラリと直江を窺う)」
大名「(笑って)二人が優秀なせいで、わしは何もすることがない」
今井「……殿」
大名「ああ。話があると言っておったな」
今井「最近、巷で妙なものが流通しているようで……」
直江「……(ドキリとして)」
大名「妙なもの?」
今井「それで心を病んだ者がいるらしく……」
大名「……阿片か?」
今井「そのようで」
大名「ふむ。直江、そちはそれについて何か聞いておるか?」
直江「いえ、特には……」
今井「その阿片、どうやら、外から入ってきているようです」
直江「今井、貴様! ワシが仕入れているとでも言うのか!」
今井「……(怪しんで)」
大名「まあ、落ち着け、直江。今井、そちに権限を与える。早急に真偽を確かめるのだ」
今井「(平伏して)はっ。直ちに……」
直江「(今井を睨みつけて)……」

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