【シナリオブログ】妖怪退治は放課後に 第3話③

【シナリオブログ】妖怪退治は放課後に 第3話③

○  シーン 4
 学園のチャイム。
ざわめく廊下を和馬が歩いている。
  立ち止まり、ドアをノックする和馬。

手塚「どうぞ。空いているよ」
和馬「失礼します」

  和馬がドアを開けて、部室内に入る。

和馬「すいません。昼休みに。あの、忙しかったですか?」
手塚「いや、大丈夫だよ。別件で、待ち合わせをしていたしね」
和馬「そうなんですか。……あの、手塚先輩。この前の事件の事ですけど……」
手塚「君も、色々と調べてるようだね」
和馬「え?」
手塚「目の下にクマができてるよ。ほとんど、寝てないんだろ? 夏姫に聞いた」
和馬「いや……これは……」
手塚「こちらも、今、全力で探しているよ。俺に瑠璃を渡した、あの女生徒をね」
和馬「やっぱり、まだ見つかりませんか?」
手塚「その生徒の動機が分からないからね。だから、しらみ潰しに探すしかないんだよ」
和馬「動機って、恨み……とかじゃないんですか?」
手塚「ふむ……。だが、蘆屋君の交流関係を見る限り、恨みを買うような人間ではないんだけどね」
和馬「そうですか? よく毒を吐きますよ」
手塚「それは、和馬君にだけさ。……いや、逆に言うと、蘆屋君は、きみと夏姫くらいとしか、交流を持っていない。入学してから、ずっとね」
和馬「え? 友達とかはいないんですか?」
手塚「ああ。なるべく、人と付き合わないように過ごしてきたって感じだね」
和馬「……そうなんですか」
手塚「犯人の動機が分からないから、狙いも分からない。そこが、頭の痛いところだ」
和馬「先輩も、そう言ってました。なにか、試されてるみたいだって」
手塚「なるほど……。試す、か。確かに、殺したいとか、深手を負わせたいのなら、もっと簡単な方法があるからね。それをしないってことは、そうかもしれないな」
和馬「でも、相手は妖怪です。怪我したりすることも、十分考えられますよ」
手塚「そうだね。一刻も早く、見つけないといけないな。唯一の手掛かりは、俺に瑠璃を渡した時に見た、顔だけだ」
和馬「名前は聞かなかったんですか?」
手塚「言っていたが、恐らく……いや、絶対に偽名だろうな」
和馬「僕も手塚先輩に聞いた髪型の人を探してるんですけど……」
手塚「こればかりは、顔を見た本人しかわからないさ。髪型と言っても、どうせ変装していただろうしね」
和馬「……」
手塚「こういう時、この学園の生徒の人数の多さは仇になるな。だが、南棟の生徒ではないことは確認済みだ。今、園原君に東棟の女生徒の顔写真を廻してもらっている」
和馬「お手数をかけてすいません」
手塚「俺も当事者だったからね。放っておけないさ。それで芹澤君。頼みごとってなんだい? 事件の事だけじゃないんだろ?」
和馬「はい。これにハンコを押してもらいたくて」

  和馬が紙を出し、手塚が受け取る。

手塚「……創部の申請書か。ん? 占星クラブを部に昇格させたいのかい?」
和馬「はい」
手塚「ふ……む。意外だな。蘆屋君のタイプだと、部にすると色々面倒だから、逆に同好会のままの方がいいと言いそうだが」
和馬「これは、僕の独断です」
手塚「何か、あったのかい?」
和馬「部費が欲しいんです。前回事件で、千愛先輩、随分、費用がかかっていたみたいで……」
手塚「そうか……。俺としても、耳が痛いな」
和馬「というわけで、お願いします」
手塚「なんなら裏に手を廻そうか? 即、昇格できる手筈を整えることも可能だが」
和馬「いえ……。占星クラブは、ちゃんと正規な手続きを踏んで、部にしたいんです」
手塚「(微笑んで)そうか。分かったよ。じゃあ、ここに判を押せばいいんだね」

  手塚が、バンと判を押す。

和馬「ありがとうございます。夏姫先輩にも、押してもらったし、生研の支部長の承認印が二つになりました。これで、何とかなりそうです」
手塚「あとは部員を三人集めるだけだね。君と蘆屋君。もう一人はどうするんだい?」
和馬「……それは、これから探します」
手塚「さて、芹澤君。本題に入ろうか。……君の願いを一つ聞く代わりに、俺の方の願いも、一つ聞く。そういう約束だったね?」
和馬「分かってます。……でも、すいません。こんな写真しか、撮れませんでした」

  和馬が、写真を机の上に置く。
  同時に、小さく、ドアが開く音がする。

手塚「こ、これは……素晴らしいっ!」
和馬「え? そうですか? 夏姫先輩が寝てるところを撮っただけですけど……」
手塚「この、無防備な寝顔……。わずかに笑みを浮かべた口元……。モナリザなんか目ではない美しさ。そう、これは芸術といってもいいほどだ。ああ……どんな夢を見ていたのだろう……」
和馬「(ちょっと、引いて)……手塚先輩?」
手塚「うむ。芹澤君。実に良い仕事だ。君は、立派な盗撮者になれるよ。俺が保障する」
和馬「いや、なりたくないです!」
夏姫「お前ら、何やってんだ?」
和馬「え? な、夏姫先輩!」
夏姫「……ん? あっ。(写真を見て)な、なんで、俺の写真が、机いっぱいに広がってんだ!」
和馬「いや、これは……その……」
夏姫「ふざけんなっ! 没収だ、没収!」

  夏姫が、写真を集め、破り始める。

和馬「それじゃ、没収じゃなくて処分ですよ」
夏姫「あん? 何か、言ったか?」
和馬「い、いえ……なんでもありません」
手塚「(小声で)芹澤君。……もちろん」
和馬「(小声で)はい。大丈夫です。家のパソコンに、データー残ってますから」
夏姫「雫! 和馬の家のパソコンにハッキングして、データーを全部消せ」
雫「……わかった」
和馬「ちょっと待ってください! いくらなんでも、それは、犯罪行為ですよっ。横暴です! 雫先輩も、さらっと、OKしないでください!」
夏姫「なに? 犯罪なのか?」
雫「……当たり前」
夏姫「ちっ、分かったよ。仕方ねえな。じゃあ、データーを消すのは、勘弁してやる」
和馬「ほっ……」
夏姫「お前のパソコンが、この世から消えるのと、お前の首から上が、この世から消えるのと、どっちがいいか選べ」
和馬「データーだけで、勘弁してください」
夏姫「ふんっ」
手塚「……夏姫、遅かったな」
夏姫「わざわざ、昼休みに呼び出しやがって。で? 学、話ってなんだ?」
手塚「文化祭のことで、ちょっとな。……と言うわけで、芹澤君と園原君は、席を外してくれたまえ。これから、夏姫とイチャつかないといけないのでね」
和馬「確実に、話する気ゼロですよね。……あの、夏姫先輩、大丈夫なんですか?」
夏姫「あん? 俺がこんな雑魚に、押し倒されっかよ。襲ってきたら、こいつが死体になるだけだ」
和馬「それは……そうですけど」
夏姫「指一本でも、触れてきたら、アバラ一本ずつ、へし折ってやるさ」
和馬「指一本で、アバラ一本ですか。かなり、ハイリスクですね」
手塚「ふふふ。肋骨は、片側に十二本ずつある。つまり、合計二十四回触ることが出来るということだ。それだけあれば、十分お釣りがくるってものさ」
和馬「おおっ! 手塚先輩、カッコ良い」
夏姫「……むっ、ある意味、男らしいな」
手塚「ふっ。愛とは、力なのだよ」
雫「……バカばっかり」

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