【シナリオブログ】決着はヒーローショーで⑥

【シナリオブログ】決着はヒーローショーで⑥

○ 学校・校門
  校門から、正治が出てくる。
響子「正治!(駆け寄ってくる)」
正治「(立ち止まって)……母さん」
  響子が正治の前で立ち止まる。
正治「僕……、帰らないよ」
響子「見に来て」
正治「え?」
  響子が正治に一枚の紙を手渡す。
  それは、神田原遊園地の入場券。
正治「これって、遊園地の入場券?」
響子「私のショーを見て欲しいの」
正治「……でも」
響子「(真っ直ぐ正治の目を見て)絶対に来て」
  響子が走り去っていく。
正治「(入場券を見て)……」

○ 神田原遊園地・舞台裏
怪人姿の響子が、動きを入念にチェックしている。
香田「いいか? 戦闘は基本、アドリブってことになってる。いつも通り、自由に動き回っていい」
響子「……(うなづく)」
香田「だが、最後だけは、絶対に負けるんだぞ。合図は、相手が「とどめだ!」と叫んで、飛び蹴りをするから、それをくらって倒れて終わりだ。いいな」
響子「……」
山城「大丈夫、リラックスしてください」
  舞台の方では、ワッと歓声があがる。
客の声「すげー、本物のガオレインだ」
子供客の声「がんばれー、ガオレイン!」
香田「始まったみたいだな」
山城「頑張ってくださいね」
響子「(つぶやくように)……負けるもんか」

○ 同・舞台
  舞台では、ガオレインと、五人ほどの雑魚敵が戦いを繰り広げている。
  ガオレインは、軽やかにバク宙をして、観客を魅了する。
  雑魚敵が全員倒れると、舞台の裏側から、怪人の響子が出てくる。
香田の声「おのれ! ガオレイン。今度は俺様が相手だ」
  怪人の姿を見て、観客も歓声を上げる。
客「待ってたぞ、怪人!」
子供「怪人さんも、頑張ってぇ」
  ガオレインと響子が対峙する。
ガオレイン「……」
響子「……」
  先に動いたのは、ガオレイン。
  響子に向ってハイキック。
  バックスウェーで避ける響子。
  反撃に、響子も蹴りを放つ。
  ガオレインは、連続バク転でかわす。
  その攻防を見て、観客は一瞬言葉を失う。が、一気に拍手が沸きあがる。

○ 同・入り口
正治が遊園地の入り口で立っている。
その手には、入場券を持っている。
正治「……」

○ 同・舞台
盛り上がっている観客達。
すると、ガオレインが響子を指さす。
ガオレイン「とどめだ!」
  ガオレインが響子に向って飛び蹴りを放つ。
  当る瞬間、響子はブリッジをして、その蹴りをかわす。
ガオレイン「……!」

○ 同・舞台裏
香田「なんで、それをかわすんだ! 打  ち合わせと違うじゃないか!」
山城「……加納さん」

○ 同・舞台
  着地したガオレインに、尻尾を振り回す響子。
  だが、転がって避けるガオレイン。
ガオレイン「……(響子をジッと見て)」
響子「行くわよ」
  ガオレインに向って走る響子。
  響子は、蹴りやパンチを繰り出すが、怪人の手足が短いため、うまく攻められない。
  そんな響子に、ガオレインは強烈なミドルキックを放つ。
  吹っ飛ぶ響子。

○ 同・入り口
  遊園地内から、大きな歓声が聞こえてくる。
正治「……母さん!」
  遊園地内に入っていく正治。

○ 同・舞台
サンドバック状態の響子。
ガオレインに打たれ放題。
着ぐるみがボロボロになっている。
そして、ついにガオレインのハイキックが、響子の頭部にモロに当る。
響子「きゃあっ」
  倒れる響子。

○ 同・舞台裏
香田「もういい。そのまま寝てろ。あとは、俺がなんとかする」
  香田がマイクに向って、台詞を言おうとする。が、それを山城が止める。
香田「お、おい!」
山城「……(響子をジッと見て)」

○ 同・舞台
倒れている響子。
何とか立ち上がろうとするが、腕が震えてうまく力が入らない。
その時――
正治の声「お母さん!」
  正治の声が響く。
響子「!(顔を上げる)」
  観客の後ろの方に、正治の姿。
響子「……正治」
  響子がスクッと立ち上がる。
  その響子に向って、ガオレインが走ってくる。

○ 同・舞台裏
山城「いけ! 加納さん」

○ 同・舞台
怪人の右手のところにボタンがある。それを、押す響子。
すると、怪人の口から炎が吐き出される。炎がガオレインを襲う。
ガオレイン「!」
  ひるんだガオレイン。
  その隙に響子がジャンプする。
  そして、ガオレインの頭部に飛び蹴りを放つ。
ガオレイン「ぐあぁぁ」
  直撃して、すっ飛ぶガオレイン。
  倒れた拍子に、ガオレインの頭の部分がとれる。
  中に入っていたのは、明だった。
響子「よっしゃぁぁー」
  響子が右腕を上げて叫ぶ。
  すると、一気に観客達も盛り上がり始めた。
  正治も拍手している。

○ 同・舞台休憩室
  休憩室には、響子しかいない。
  そこに正治が入ってくる。
響子「……正治」
正治「(微笑んで)かっこよかったよ」
響子「そう」
正治「僕もやってみたいな」
響子「(笑って)あんたがやりたいって言うなら、応援するよ」
正治「じゃあ、母さんに特訓してもらわないと」
響子「……でも、いいの? お母さん、今日のことでクビになるかも」
正治「そしたら、僕がバイトでも、家事でもして、家計を助けるよ」
響子「うん。そうだね。お願いしようかな」
  響子と正治が笑いだす。
  そこに、山城が入ってくる。
山城「加納さん。ビックニュースです」
響子・正治「?」

○ 加納家・リビング
テレビがついている。
アナウンサーの声「遊園地で行なわれていたヒーローショーがなんと、映画化されるという話題でもちきりです。さらに、なんと、この怪人とヒーロー役が親子で……」
サイドボードの上には、写真立てがある。
写真に、加納響子と加納正治が写っている。正治の、小学校入学式に撮った写真。
  その隣には、怪人の着ぐるみを着た響子と、ヒーローの着ぐるみを着た正治が仲よく映った写真が飾られている。

おわり

<5ページ目へ>