【声劇台本】おむすびころりん
- 2019.07.04
- ボイスドラマ(10分)
■概要
主要人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、童話、コメディ
■キャスト
青年
母親
ねずみ1
ねずみ2
ナレーション
■台本
ナレーション「昔々、あるところに一人の青年がおりました。青年はいい年をして親のスネをかじって暮らしています。そんなある日、ついに母親が怒り狂ってしまいました」
母親「というわけで、働きなさい」
青年「無理です!」
母親「なら、ご飯は出さないからね」
青年「え? じゃあ、俺、どうしたらいいの?」
母親「働きなさいよ」
青年「それは無理だよ。だって、俺、働きたくないんだもん」
母親「お母さんね、もうあんたにご飯出したくないのよ」
青年「……お母さん、親だよね。子供を育てるのが義務なんじゃないの?」
母親「お母さんはね、あんたに養って悠々自適な生活を送りたいから、あんたを生んだの」
青年「そこに愛情はないの?」
母親「最近のあんたを見てると、殺意しか湧かない」
青年「ひどいよ! 子供は親が選べないのに!」
母親「親も、子供を選べないのよね……」
青年「俺、どうしたらいいんだよ」
母親「働けよ」
青年「いや、無理だって! だって、三十年間、一度も働いたことないんだよ? 今更無理だって!」
母親「お母さん、これ以上、あんたを養うのは無理。だって、三十年間、ずっと無駄飯食らいだったのよ?」
青年「じゃあ、今日のところはハローワーク行くから許して」
母親「あんたの手口はわかってる。どうせ行くだけで、希望にそった求人が出てないとか言って帰ってくるんでしょ?」
青年「……」
母親「ってわけで、こっちで指定するわ。はい、これ」
青年「……斧?」
母親「木を切って、薪にして売るのよ」
青年「ええー、面倒くさい」
母親「そっか。じゃあ、お母さん、手伝ってあげる。これであんたの頭、カチ割るの」
青年「……職業、変わってるよ?」
場面転換。
森の中を歩く青年。
青年「とはいってもなー。木を切るっていっても、どの木を切ればいいんだろ?」
ドサッと、座り込む青年。
青年「ふう、疲れた。斧もって歩くだけでも、重労働だよ。お腹減ったから、もうお弁当食べようっと」
ガサガサとお弁当を広げる青年。
青年「なんだよ、おにぎりかよ! しかも、おかずもねえし! うう……。肉食べないと力出ねーっての!」
そのとき、ツルっと手が滑って、おにぎりを落とす。
青年「しまった!」
ころころと転がっていくおにぎり。
青年「待ってくれ! 待てって!」
コロコロコロ転がり続けるおにぎり。
青年「はあはあはあ。もう無理、走れない」
おにぎりがストンと穴に入っていく。
青年「あー! ダメダメダメ!」
ヒューっと穴を落ちていく。
青年「あー……穴に落ちちゃった」
ため息をつく青年。
青年「仕方ない。諦めるか。まあ、どっちにしても土だらけのおにぎりは、食べる気しないし」
そのとき、穴の中から歌声が聞こえる。
ねずみ「おむすびころりん、すっとんとん。おむすびころりん、すっとんとん」
青年「なんだ、穴から歌声が聞こえるぞ?」
ねずみ「おむすびころりん、すっとんとん。おむすびころりん、すっとんとん」
青年「……まあ、いいや。さっさと残りのおにぎり食べようっと」
そのとき、さらに歌声が大きくなる。
ねずみ「おむすびころりん、すっとんとん! おむすびころりん、すっとんとん!」
青年「……うるさいなぁ。他のところで食べるか」
ねずみ1「おかしいな。こうやって歌えば、またおにぎりが降ってくるって聞いたんだけど」
ねずみ2「やっぱ、デマだったんじゃん? かなり古い言い伝えだったし」
青年「はあ、下手な歌を歌ったら飯がもらえるなんて、そんな美味い話があるかよ」
ねずみ1「ん! 人間の声だ! 追加がもらえるかもだぞ! おむすびころりん! すっとんとん! おむすびころりん! すっとんとん!」
青年「いやいやいや。やらねーって」
ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。おにぎりくれるといいことあるよ」
青年「……マジか?」
ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。僕たちが集めた金銀財宝。おむすびくれたら、もらえるかも?」
青年「よし! わかった。財宝のためなら、おにぎりくらい諦めるぜ。ほら、おむすびだ!」
青年がおにぎりを穴の中に放り込む。
青年「……」
ねずみ1「おむすびころりん、すっとんとん」
青年「いや、歌はいいから、財宝よこせ」
ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。これだけじゃたりないよ」
青年「ちっ! 足元見やがって。……仕方ない。もうおにぎりはないからな。また明日来るか」
場面転換。
青年「よお、今日は昨日より多めにおにぎり作ってもらったぞ」
ねずみ1「おむすびころりん、すっとんとん」
青年「いや、もう歌はいいよ。……ほら」
青年が穴におにぎりを放り込む。
青年「……」
ねずみ1「おむすびころりん、すっとんとん」
青年「ほら、早く、財宝よこせって」
ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。まだまだ足りないよ」
青年「くそ、ほら、今日の分、全部だ!」
ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。まだまだ足りないよ」
青年「ふざけんな! 二日分のおにぎりを投資したんだぞ!」
ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。金銀財宝と二日分のおにぎりじゃ、釣り合わないよ」
青年「まあ、そりゃそうか……」
場面転換。
青年「ほら、おにぎりだ」
ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。まだまだ足りないよ」
場面転換。
青年「ほら、おにぎりだ」
ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。まだまだ足りないよ」
場面転換。
青年「ほら、おにぎりだ」
ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。まだまだ足りないよ」
場面転換。
青年「ほら、おにぎりだ」
ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。まだまだ足りないよ」
場面転換。
猫「にゃー!」
ねずみ2「!」
青年「いい加減にしろよ、ねず公ども。最後の忠告だ。財宝をよこせ。さもないと、おにぎりじゃなくて、猫を放り込むぞ」
ねずみ2「……お、おむすびころりん、すっとんとん。わかりました。財宝を差し上げます」
青年「うむ。最初からこうすればよかったな」
ねずみ1「……どうぞ」
青年「……なんだ、このガラクタ」
ねずみ2「僕たちが一生懸命、集めた財宝です」
青年「……鉄屑や、金メッキばっかりじゃねーか」
ねずみ2「そう言われましても。これで、全部ですので」
青年「……くそー! 納得いかねー!」
ナレーション「こうして、青年は世の中、美味い話はないと知り、その後はなんとなく、ちゃんと働くようになりましたとさ。めでたしめでたし」
終わり
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