マラソン大会

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
喜一(きいち)
克樹(かつき)
教師
男子生徒1~2

■台本

教室内。

教師「はい。来週はマラソン大会だからね。各自、体調管理をしっかりしておくように」

喜一「……」

教室中から、えーっという非難の声。

教師「はいはい。文句言わないの。人生、楽もあれば苦もある。頑張ればそれだけ、報われるってものよ」

克樹「はい、センセー! マラソンで頑張って、報われることってなんですか?」

教師「それはもちろん……えーっと……走った後の水は美味しいでしょ?」

克樹「そんな程度の報いなら、いらないなー。サボろうかなー」

教師「サボった人には、洩れなく、1をプレゼントするから、そのへん、忘れないでね」

克樹「ええー、横暴だ!」

教師「嫌だったら、ちゃんとマラソン頑張るのね。それじゃ、今日のホームルームは終わり。かいさーん」

教室内の気が緩み、一気にうるさくなる。

克樹「かー。最悪」

喜一「……ふふ」

克樹「どうした、喜一。笑みなんか浮かべて」

喜一「俺は攻略法を見つけた」

克樹「なになに? ゲームのか?」

喜一「マラソン大会のだよ」

克樹「攻略って言ってもなー。練習でもすんの? 1週間じゃ、そんなに体力付かないと思うけど」

喜一「いやいや。そんなマゾなことしないって」

克樹「なら、近道するとか?」

喜一「それは無理だって。先生たちがずっと見てるんだからさ」

克樹「じゃあ、どうするんだよ?」

喜一「簡単だよ。出なきゃいい」

克樹「お前、体育、1貰う気か? 唯一5の体育を」

喜一「んなわけないだろ」

克樹「けど、センセーはサボったら1にするって言ったんだぞ」

喜一「サボればね」

克樹「……どういうことだ?」

喜一「つまり、不可抗力であればいいんだ」

克樹「……つまり?」

喜一「風邪をひく!」

克樹「はー、くらだらねー。仮病もサボりに変わんねーだろ」

喜一「誰が、仮病を使うって言ったんだよ。ホントにひくの! ホントに!」

克樹「どうやって?」

喜一「夜、パンツ一枚で寝れば余裕だろ」

克樹「無理だろ。馬鹿は風邪ひかないって言葉、知らないのか?」

喜一「いやいや。マラソン大会まで一週間あるんだぞ。7日間、パン一で寝れば、どっかで風邪はひけるだろ」

克樹「7日連続か……。確かにそれならいけるかもな」

喜一「最悪、水を浴びて、裸で外に出てもいいし」

克樹「……確かにそれなら、風邪をひかなかったとしても、警察に捕まるから、大会を休めるな」

喜一「ただ、ここで一つ、ポイントがある」

克樹「どんな?」

喜一「例えば、当日に風邪ひいた、なんて言ったら、いかにも嘘くさいだろ?」

克樹「まあ、な」

喜一「だから、遅くても前日。ベストは2日前から風邪で学校を休むことだ。そうすれば、先生も仕方ないって思ってくれるはずだ」

克樹「おお!」

喜一「ってことで、さっそく、今日からミッション開始する」

場面転換。

喜一の部屋。

ガチャリとドアを開けて、喜一が部屋に入って来る。

喜一「ふー。いい湯だった。……さてと。今日はこのまま、裸で寝るぜ!」

場面転換。

朝。スズメの鳴く声。

喜一「……へーっくしょん! うおっ! まさかの初日から風邪をひけるとはな。幸先良いぜ」

場面転換。

教室内。

教師「はい、今日は、喜一君が風邪でお休みです。みんなも、体調管理しっかりね」

生徒たちがはーいと、声を上げる。

克樹「……上手くやったな、喜一」

場面転換。

教室内。

ざわざわしている。

男子生徒1「あー、くそ。マラソン大会ダリ―」

男子生徒2「俺、腹痛くなって来た」

男子生徒1「嘘くせー」

喜一「……」

ガラガラと教室のドアが開く。

教師「はいはい。みんな準備出来てる? 外出て。マラソン大会の開会式やるよー」

生徒たちがしゃべりながら、教室を出ていく。

喜一「……」

克樹「……喜一、お前」

喜一「何も言うな」

克樹「なんでいるんだよ? 休むんじゃなかったのか?」

喜一「うるさいな! 風邪、治っちゃったんだよ!」

終わり。

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