一寸法師は小さくない

一寸法師は小さくない

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■概要
人数:3人
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、童話、コメディ

■キャスト
一寸法師
おじいさん

■台本

一寸法師(N)「俺の名前は一寸法師。文字の通り、身長が一寸というわけではない。単に、普通の奴より若干、少しだけ小さいだけだ。……どのくらい小さいかというと、大体、普通の奴の十分の一くらいの大きさになる。まあ、このくらい誤差だろ? ちなみに俺は今まで生きてきて、俺より背の低い奴は見たことがない。これに対しては、受け入れている。身長なんてものは持って生まれたもので、変えられないものだ。あーだこーだ言ったところで、どうしようもない。ふふっ、度量があるだろ? まあ、人間、落ち込んでてもしょうがないだろ。ただ、こんなに器の大きい俺でも、悩みはある。それはモテないということだ。正直に言うと、今まで付き合えたことがない。もちろん、それなりに努力はしてきたつもりだ。女性を喜ばせる話術やサプライズのプレゼント、身だしなみも生活かつオシャレにも気を使っている。俺に合う服がないので、自分で作ったりもした。何度もいい雰囲気になったこともあった。だが、最終的には『そういう目で見れない』とフラれてしまう。……くそ、男は背の大きさで決まるもんじゃない。たかが、普通の奴の十分の一の身長なだけじゃねーか。まあ、その程度でしか男を見れない女なんて、こっちから願い下げだ。しかし、そろそろ、本当になんとかしなければならない。このままでは俺は……結婚できないのではないだろうか」

おじいさん「なんだ、また日記を書いているのか」

一寸法師「うわああ! ジジイ、驚かせるなよ」

おじいさん「すまんすまん。で、一寸法師よ。決意は変わらないのか?」

一寸法師「ああ……。今まで育ててくれたことには感謝している。けど、俺は都に行く。俺はこんな村に収まる人間じゃない」

おじいさん「……そうか。わかった。もう、十分、稼がせてもらったからな。もういいだろう」

一寸法師「……稼がせてもらった?」

おじいさん「あっ! いや、その……違うんだ! ただ、小さい人間を見たいって輩から、すこーしだけお金をもらってただけだ」

一寸法師「……前言撤回だ。今まで育ててくれたことに、みじんも感謝できねえ」

おじいさん「……最後にお前に言っておきたいことがある。それは……お前は私たちの本当の子供ではない。お前は光る扉の傍で拾ったのだ」

一寸法師「扉? 竹の中とかじゃなく? でもそっか……拾い子か。まあ、そんな気はしてたよ」

おじいさん「都は危険がいっぱいだ。気を付けていくんだぞ」

一寸法師「ああ。わかった。次、戻ってくるときは、嫁さんを連れてくるからな」

おじいさん「あ、それは期待してないから、大丈夫だ」

一寸法師「くそ、絶対に見返してやるからな」

一寸法師(N)「こうして、俺はジジイたちに見送られて都へと旅立った。その旅路は驚くほど順調だった。行く先々では、なぜか人だかりができ、なぜかお金ももらえたりもした。中には俺を捕まえようとするような悪質な奴もいたが、そういう奴は針でぶっさしてやった。悪いが、こっちはモテるために、伊達に体を鍛えているわけじゃないんだ。言っとくが素早さでは負ける気がしない。こうして、俺は無事に都へとたどり着き、そこで……運命の出会いは果たしたのだった」

姫「うふふ。素敵な殿方ですね。私、小さい方大好きですわ」

一寸法師「姫、それは本当ですか? 小さいって言っても、他の奴の十分の一しかないんだが……」

姫「それがどうかしたんですか? 素敵なことには変わりませんよ」

一寸法師「うおお! ついに俺にも春がきた!」

姫「ふふふ。面白い殿方」

一寸法師「姫、結婚してください!」

姫「あ、それはちょっと……」

一寸法師「ダメなのかよっ! 期待させんな!」

姫「……せめて、一寸法師様が今の十倍の身長があれば……」

一寸法師「そうだったら苦労しねえ。っていうか、それって普通の奴らと変わらないだろ」

姫「私、可愛らしい殿方も好きですけど、身長の高い殿方はもっと好きなんです」

一寸法師「……あ、そう。じゃあな。一瞬でも夢を見せてくれてありがとう。一生、恨んでやるよ」

姫「あの、一寸法師様。私、身長を伸ばす方法を知ってます」

一寸法師「本当か!?」

姫「はい! 牛乳をたくさん飲むんです」

一寸法師「あんたには本当にがっかりしたよ。そりゃ、一般的な話だろ。牛乳を飲んで身長が十倍になった奴は聞いたことがない。それに、そんな初歩的なことはもう試してる」

姫「では、私が一寸法師様の頭と足を持って、十倍になるまで引っ張ります!」

一寸法師「千切れて死ぬわ!」

姫「では、打ち出の小槌に頼むというのはどうでしょう?」

一寸法師「はいはい。もういいから……って、ん? 打ち出の小槌ってなんだ?」

姫「願うと、背が伸びるという伝説の宝物です」

一寸法師「随分とピンポイントの効果しかないんだな。普通、そういうのは何でも願いが叶うとかじゃないのか?」

姫「私に言われましても……」

一寸法師「すまん。そりゃそうだな。で? その打ち出の小槌ってどこにあるんだ?」

姫「巨大で凶暴な鬼が持つ、宝物の一つです」

一寸法師「なるほど。ふざけんな。俺を殺す気か」

姫「待ってください。私に考えがあります」

一寸法師「いや、いいよ。どうせ、ろくな考えじゃないだろ」

姫「そんなことありません」

一寸法師「……言ってみろ」

姫「一寸法師様は豆のように小さくてショボいです」

一寸法師「なぜ、突然、悪口を言う?」

姫「最後まで聞いてください。鬼は巨大で、一寸法師は小さいです」

一寸法師「……それで?」

姫「つまり、一寸法師様が鬼の住処に行っても、バレにくいのではないでしょうか?」

一寸法師「……うーん。一理あるな」

姫「つまり、バレにくいということはお宝を盗み放題ってことです」

一寸法師「一国の姫のいうセリフじゃないな」

姫「なので、一寸法師様。鬼の住処に忍び込んでお宝を盗んできてください」

一寸法師「可愛い顔して、平気で怖いこと言うな」

姫「悪い話ではないと思いますが……。一寸法師様は背が伸び、私はお宝を得ることができます。お互い、ウィンウィンじゃないですか」

一寸法師「あれ? 俺の背が伸びたら結婚するって話はどこにいったんだ?」

姫「それじゃ、頑張ってきてください!」

一寸法師(N)「話を聞いたときは、不覚にもいい案だと思ったんだ。だから、悔しいことについ、引き受けてしまった。背が伸びるかもしれないという希望にすがってしまった。そのことで目が曇っていたんだ。こんな簡単なことに気づかなかったなんて」

一寸法師「宝がデカくて持てない……。巨大な鬼が持ってるもんだもんな。そりゃデカいって話だ。こんなの持てるわけねえ」

鬼「ぐおおおおお!」

一寸法師「そして、見つかったし」

一寸法師(N)「まあ、ここからはちょっとした修羅場だった。だが、これを聞いている人はなんとなく予想がついているのではないだろうか。まさしくその通りになった。つまり、鬼は俺を丸のみしたのだ。普通の奴らなら噛まれて即死だろうが、俺の場合は丸のみで無事だったというわけだな。それからは、鬼の腹を内側から針で刺して勝利という、なんの捻りもない幕切れになった」

姫「さすが、一寸法師様! 私はやり遂げると信じてました!」

一寸法師「とりあえず宝を頬擦りするのを止めて、こっちを見て言え」

姫「一寸法師様は、早く打ち出の小槌で背を伸ばしたらどうですか?」

一寸法師「もう俺に興味なしかよ。まあいいや。俺も、こんな腹黒なお姫様はお断りだ」

一寸法師(N)「小槌って名前のくせに、形状は扉だった。黄金に光り輝く扉。一体これで、どうやって背を伸ばすのか……。だが、ダメで元々だ。俺は意を決して扉を開けくぐってみた。するとそこには驚くべき光景が広がっていた」

一寸法師「ここは異世界か……? いや、それより! この世界の人間は、俺と同じ大きさだ!」

一寸法師(N)「つまり、打ち出の小槌は俺の背を伸ばすのではなく、小さい人間の世界に行く扉だったのだ。相対的に見て、扉をくぐった奴の背は伸びたことになるってわけか。なんか詐欺っぽいが、俺としてはどうでもいい。ここでは俺は、普通の人間の大きさってわけだ。よし、じゃあさっそく……」

一寸法師「婚活だ!」

終わり

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