【ラジオドラマ短編シナリオ】西田家の受難 シュークリーム事件

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◆シリーズ一覧
<西田怪談> <留年未遂事件> <幼馴染の謎の行動> <アウトドアの恐怖>

■概要
主要人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、日常系、コメディ

■キャスト
西田 正志(17) 長男
西田 清 (17) 二男・正志の双子の弟
西田 総士(14) 三男
西田 隆 (5)  末っ子
ミラ   (3)  猫

■台本

○ シーン 1
西田正志が茶の間に入ってきて、歩いていく。そして、戸棚を開く。

正志「あれ?」

正志(N)「日曜日。午前十一時。事件発覚」

正志「ないっ! なんで? さっきまであったのに!」

西田清が、部屋に入ってくる。

清「正兄ぃ、うるさいよ。昼間っから何?」
正志「……清。今月の小遣いをはたいて買った、文藝堂のシュークリームがないんだ」
清「え? あるじゃん、何言ってんのさ?」
正志「数が減ってるんだよ。十時に見た時は、五個あったんだぞっ。今は四個しかない」
清「別に、一個くらい良いじゃん。シュークリームくらい」
正志「馬鹿言うな。高いんだぞっ! ……もしかして、清。お前が食ったのか?」
清「冗談。俺、和菓子派だっての。正兄ぃも知ってるだろ? クリームなんて、頼まれたって食わないよ」
正志「ああ。そうだったな。その辺、双子なのに好み合わないよな」
清「まあね」

トタトタとミラが部屋に入ってくる。

ミラ「にゃー」
正志「おっ、ミラ、どうした……」
ミラ「にゃーん」

ミラがジャンプして、戸棚を開ける。
爪で引っ掻いて、猫缶を落とす。

正志「うおっ、危ねえ」

着地して、猫缶を開けて食べ始めるミラ。

正志「なあ、清。自分で戸棚開けて、猫缶取って食べる猫って、どうよ?」
清「この前の餓死寸前事件が、きいてるんじゃない? たくましくなったよね。実際」
正志「餓死寸前って……。三日、餌やり忘れただけだろ」

西田隆が部屋に入ってくる。

隆「正志お兄ちゃん。虫取り網知らない?」
正志「……なあ、隆。お前、お兄ちゃんのシュークリーム食べなかったか?」
隆「え? 食べてないよ」
清「止めなよ、正兄ぃ。大体、隆じゃ、その戸棚に手が届かないだろ?」
正志「ああ。それもそうだな。……ミラは届くのにな。ごめんな、隆」
清「虫取り網なら、物置にあるよ」
隆「ありがとう。清お兄ちゃん」

隆がトタトタと出ていく。

正志「隆も違うとなると……。残された容疑者は、あいつだけだな」

玄関のドアが開く音。
西田総士が部屋に入ってくる。

総士「ただいまぁ~」
正志「総士! お前が犯人だっ!」
総士「は? 何の話?」

○  シーン 2
茶の間。
清がテレビを見ている。
横で、正志と総士が言い争いをしている。

総士「俺が、兄貴のシュークリーム食っただぁ? そんなの、言いがかりだ」
正志「お前じゃなきゃ、誰だよ。え? 言ってみろ」
総士「知らねえよ。なあ、きよ兄ぃも、テレビ見てないで、何とか言ってくれよ」
清「……正兄ぃ。総士には、犯行は無理だよ」
正志「は? なんでだよ?」
清「正兄ぃは十時の段階じゃ、シュークリームは減ってなかったって言ってたよね?」
正志「ああ」
清「総士は、九時から部活の練習で、家を出て、今帰ってきた。そうだよね?」
総士「ああ。そうだよ」
清「……となると、総士にはアリバイがある」
正志「あっ!」
総士「よし、これで容疑は晴れたな。じゃ、俺、シャワー浴びてくるわ」

総士が部屋を出ていく。

正志「くそぉ。捜査は難航だ。迷宮入りか?」

テレビの音楽が部屋に響く。

正志「おい、清。テレビなんか見てないで、お前も考えてくれよ」
清「あっ、B・L・Cだ。和沙ちゃん、可愛いなぁ」
正志「あれ? また、変わったのか? お前、前は恵蓮ちゃん派だったよな?」
清「正兄ぃ。好みってのは、変わっていくもんなんだよ」
正志「お前の場合、コロコロ変わり過ぎんだよ。まあ、俺は舞ちゃん派だけどな」
清「正兄ぃとは、ホント、好み合わないよね」
正志「まあな……。ん? 好み?」
清「……なに? どうかした?」
正志「あっ、いや、なんでもない。ちょっと、部屋で考えてみる」
清「あんまり、思いつめることでもないと思うけどね……」

正志が茶の間を出て、階段を登る。

正志(N)「俺の推理が正しければ、これで犯人が炙り出せるかもしれない」

正志が自分の部屋のドアを開ける。
歩いて、机の前に行き、机を漁る。

正志「あった。注射器。これで犯人を……」

○  シーン 3
深夜。正志の部屋。
外では、蛙と鈴虫が鳴いている。
ふと、誰かがドアをこっそりと開ける音   がする。そして、ゆっくりと階段を下りていく。

正志「(ガバッと起きて)動いたな」

○  シーン 4
何者かが、茶の間のドアを開き、忍び足で歩く。
戸棚を開け、袋を破って、シュークリームをパクリと食べる。

清「うわぁっ! 何だこれ? 辛い!(悶絶)」
正志「やっぱり、お前だったか」
清「(むせて)ま……さ……兄ぃ」
正志「最近、お前は何かと、好みが変わってきていた。……お前、洋菓子に目覚めたな?」
清「ち、違っ!」
正志「シュークリームの中にからしを入れておいた。涙目でむせている時点で、お前は自分が犯人と自白してるんだよ」
清「違うよ! これは、ほんの出来心なんだ。朝のは、俺じゃない」
正志「うるさい。往生際が悪いぞ。観念しろ」

正志(N)「こうして、一連の事件は解決した……と、思ったのだが」

○  シーン 5
お昼の茶の間。

正志「……え? また減ってる」

茶の間の風鈴がチリンと鳴る。

正志「くそぉ。清の奴、また、証拠にもなく」
ミラ「にゃーん」

ミラがトタトタと歩いてくる。

正志「ん? ミラ? どうした?」
ミラ「にゃーん」

ミラがジャンプして、戸棚を開ける。
そして、『シュークリーム』を落とす。

正志「なっ!」

ミラが降りて、袋を爪で刺して開ける。
そして、中のシュークリームを食べる。

正志「お、お前、だったのか……。昨日の朝、シュークリームを食べたのは?」
ミラ「にゃーん」

正志(N)「こうして、事件は意外な展開で幕を閉じた。……くそぉ。今度からは、もっと高い戸棚にしまうことにしよう」

おわり

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