【声劇台本】ウサ耳メイドにご注意を! 2話

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■概要
人数:4人
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、異世界、コメディ

■キャスト
宇佐美 冥土(メイド)
アリア(店長)
ルナ

■台本

冥土(N)「刑事をしていた、俺、宇佐美冥土は、犯罪者の逆恨みにより、命を落とし、異世界へと転生することとなった。転生する際に望みを叶えてくれるとの話を聞き、俺は、次の人生は人を傷つけるのではなく、人を癒す仕事であるメイドになりたいと注文したのだった。しかし……」

  お店には数人のお客が入っている。

アリア(店長)「宇佐美くん、これ、3番テーブルにお願いね」

冥土「ああ、わかった」

  料理を持ってテーブルに持っていく冥土。

冥土「どうぞ」

男性客「お、来た来た。うまそうだ。いやー、あの客が来る前に来てよかったよ」

冥土「あの客?」

男性客「ああ。店長のアリアさんにぞっこんの客がいてね。アリアさんにべったりだから、アリアさんが料理できないんだよ。だから、料理が来るまで一時間かかるか、他の人が作った料理になっちゃうんだ。こっちはアリアさんの料理を食べに来てるのにさ」

冥土「……そうか」

  ドアが開き、ルナが入ってくる。

ルナ「アリアお姉さまー! 今日も、ルナが来ましたわよー」

冥土「いらっしゃい……」

アリア「宇佐美くん、違うでしょ」

冥土「あっ……。お帰りなさいませ、ご主人様」

ルナ「ふんっ! 男風情がルナに近づかないでくださいます? あなたのご主人になった記憶はございません」

冥土「こちらの席へどうぞ」

ルナ「ふんっ!」

  ルナがズカズカと歩いて、ドカッと席に座る。

ルナ「アリアお姉さまー。ご注文したいのですけれど」

冥土「俺が……いや、私がお聞きします」

ルナ「ルナは、アリアお姉さまに言ったんですの! あなたは引っ込んでいてくださいまし!」

アリア「宇佐美くん、ここは私がやるから、他のご主人様をお願いね」

冥土「ああ……」

男性客2「あ、俺、お勘定! ここ置いておくぞ」

女性客「私も」

アリア「ありがとうございまーす。ご主人様、おでかけです。行ってらっしゃいませー」

冥土「行ってらっしゃいませ」

  ゾロゾロと客が帰っていく。

冥土「一気に、客がいなくなったな」

男性客1「言っただろ。あの客が来たら、一気にこの店のサービスは悪くなる。なんせ、アリアさんがあの客につきっきりになるからな。アリアさんの料理とお話するのを目当ての客は、メリットがなくなるってわけさ。ってわけで、俺もお勘定」

冥土「……ありがとうございます。行ってらっしゃいませ」

ルナ「あーん! アリアお姉さまー。ルナ、腕が痛くて、スプーンが持ち上げられないですぅ。食べさせてー」

冥土「……」

  場面転換。

冥土「ありがとうございました。行ってらっしゃいませ。またのお帰りをお待ちしてます」

  ドアを開けて客が帰っていく。

アリア「よし、今日も終わりだね」

冥土「お疲れ様」

アリア「後片付けは私がやるから、宇佐美くんは帰っていいよ」

冥土「いや、手伝う。というか、そういう仕事は本来従業員の仕事だろ」

アリア「そうなの? じゃあ、手伝ってもらっちゃおうかな」

冥土「ああ」

  皿洗いをする冥土。

アリア「ねえ、宇佐美くん」

冥土「なんだ?」

アリア「もし、嫌だったら……辞めてもいいんだよ? 働き口なら、少しくらいなら、私、アテがあるから」

冥土「……俺がいたら、迷惑か?」

アリア「え? ううん! 違うの! 宇佐美くんが来てくれて、私は助かってるんだよ。他に人でもいなかったし」

冥土「……」

アリア「その……なんていうか……ほら、宇佐美くんってそういうタイプじゃないから、無理してないかなって……」

冥土「そういうタイプ?」

アリア「人に気を使うタイプじゃなくて、どちらかというと、気にかけてもらうというか、人の上に立つタイプっていうか……」

冥土「俺は元の世界では人を傷つける仕事をしていた」

アリア「え?」

冥土「悪人を捕まえるってことだ」

アリア「うん。確かにそれっぽい」

冥土「俺はもし、生まれ変わったら人を癒す仕事をしたいと思ってたんだ。だから、この店で働かせてくれているのは感謝してる」

アリア「そっか。そう言ってもらえて嬉しい」

冥土「それはそうと、この店、経営的に大丈夫なのか? 家賃がどのくらいかは知らないが、客が少なすぎる気がする。利益は出てるのか?」

アリア「うっ……。実は……ちょっとヤバい」

冥土「やっぱりな」

アリア「何がダメなのかな? メイド喫茶ってこの世界じゃ珍しいから、流行ると思うんだけど……。実際、天使様もそう言ってたし」

冥土「店長は実際、メイド喫茶に行ったことがあるのか?」

アリア「ううん。その……天使様から聞いただけで……」

冥土「だろうな」

アリア「何か、問題ある?」

冥土「まず、根本的にメイド喫茶になっていない」

アリア「え?」

冥土「これじゃ、制服が少し変わった喫茶店にしかなっていない」

アリア「そうなの?」

冥土「大体、店長はあのうざい女……ルナっていうご主人様に時間を取られ過ぎだ。そのせいで他の客が帰ってしまっては意味がない」

アリア「でも……ご主人様に尽くすのがメイド喫茶だって、天使様が……」

冥土「履き違えるな。メイド喫茶は奉仕団体じゃない。れっきとした仕事だ。つまり、利潤を求めていいんだ」

アリア「……利潤」

冥土「いいか。メイド喫茶というのは萌えを売る職業なんだ」

アリア「萌え?」

冥土「例えば、30分、店長が接客する……つまりお話することに対して金を取る」

アリア「え? お話することでお金を取るの? そんなの聞いたことないよ?」

冥土「言っただろ。メイド喫茶は萌えを売ると。つまり、店長と話をしたい客は、30分、店長と二人で話すという権利を買うということだ。それは誰にも邪魔されない、至福の時間だ」

アリア「でも……そんなの……」

冥土「あこぎだと思うか?」

アリア「うん……。っていうか、みんな怒って帰っちゃうよ」

冥土「心配なのはわかる。だが、萌えというはれっきとしたサービスだ。サービスに対して対価を要求するのは商売では当たり前のことだ」

アリア「……」

冥土「信じられないか? じゃあ、明日試してみよう」

  場面転換。

  店内に少しの客がいる。

  そこに男性客が入ってくる。

男性客1「アリアさん、今日も来たよ」

アリア「お帰りなさい、ご主人様」

冥土「ご主人様、こちらの席へどうぞ」

男性客1「お、どうも。えーっと今日はどうしようかな。……ん? なあ、この、トークタイムってなんだ?」

冥土「店内のメイドを指名して、30分、二人きりでお話……つまり、お世話させていただくメニューです」

男性客1「な、なんだと! ……その……店内のってことは……アリアさんも入るのか?」

冥土「もちろんです」

男性客1「それで、この値段か! ヤバすぎだろ!」

  店の中が一気にザワザワし始める。

男性客1「トークタイム! 頼む! もちろん、アリアさんで!」

男性客2「あ、俺も!」

男性客3「ずりー! 俺も!」

冥土「店長、トークタイム入りました」

アリア「宇佐美くん……」

冥土「言った通りだろ?」

アリア「うん。ありがとう、宇佐美くん」

冥土(N)「ふう。これで、店の経営問題はなんとかなりそうだな。……それにしても、俺、メイドやれてないな……」

終わり

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