【声劇台本】嘘と秘密

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■概要
人数:2人
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
碧(あおい) 小学6年生
日向(ひなた) 小学6年生

■台本

碧(N)「僕は親友に嘘を付いている。親友だからこそ、嘘を付いている。この友情を続けるために。この絆を途切れさせないように」

碧「痛てて……」

  日向がやってくる。

日向「おーっす、碧! お待たせ―って、どうしたんだよ、そのアザ!」

碧「ああ、日向。なんでもないよ。いつものだから」

日向「また、イジメかよ! マジでイラつくな! 今度、俺がそいつ、ボコボコにしてやるよ!」

碧「いや、いいんだよ、別に。あんなのに関わってる時間の方が勿体ないって」

日向「まったく、碧は人がいいっていうか、お人よしっていうか、そんなんじゃ、いつまでたってもイジメから抜け出せないぞ」

碧「ははは。僕、平和主義だから」

日向「にしても、碧が体育で活躍するのが生意気って意味わかんねー。単なるやっかみじゃねーかよ」

碧「いやあ、僕が全力を出すのが悪いんだよ。ちょっと手を抜いて、負ければよかったんだけどね」

日向「お前、すごい大人びてるな。……ホントに小学生か? まさか、変な薬を飲んだ、高校生じゃねーだろうな?」

碧「違うって。ちゃんと頭も子供だよ。それに、勝負ってなったら本気になっちゃうから、まだまだ子供なんだと思う」

日向「いやいや、その発言がすでに大人っぽいって」

碧「それにしても、日向、今日は遅かったね」

日向「ん? ああ、今日は学校終わった後、ピアノのレッスンだったからさ」

碧「あ、そっか。日向、ピアノ習ってたんだっけ?」

日向「ああ。親がやれってうるさくってさ」

碧「へー。親に言われて習ってるんだ?」

日向「なんかピアノをやれば、少しは……あっ」

碧「ん? どうかした?」

日向「いや、なんでもないなんでもない! なんか、昔、ピアノをやってたみたいでさ。それで俺にも進めてきたってわけ」

碧「ふーん。でも、よっぽど日向の方が大人だよね」

日向「なんで?」

碧「普通さ、興味ないものを、親の勧めだからってやらなくない?」

日向「まあ、これくらいはな。それ以外は結構、我儘きいてもらってるし」

碧「あははは。やっぱり、日向も大人っぽいよ」

日向「そうかな?」

碧「うん。クラスの男子とかヤバいくらい、子供だよ。本当に同じ年かって思うくらい」

日向「あー、わかる。あれはヤバいよな」

碧「よく、あんな下品なことで盛り上がれるよね」

日向「笑いのツボが謎だよな」

碧「かといってさー、クラスの……」

日向「ん? どした?」

碧「ううん。なんでもない。話が合うのって日向だけだなーって思ってさ」

日向「俺もだよ。クラスじゃなんか、浮いててさー」

碧「うん。僕も同じ。だから、いっつも早く学校終わらないかなーってばっかり考えてる」

日向「学校、楽しくないよな」

碧「……中学生になったら、変わるのかな?」

日向「ん? クラスで浮くってところか?」

碧「うん。そこもあるけど……。日向がクラスに友達ができるのかなって」

日向「(笑って)なんだよ、その言い方。俺に友達が出来たら嫌ってことか?」

碧「あ、いや、そうじゃなくて……。ううん。そうじゃないのかも。日向に友達ができたらさ、こうして僕と遊ぶこともなくなるのかなって思って……。ちょっと怖いんだ」

日向「あのなー。怖いのはお前だけだと思うなよ」

碧「え?」

日向「俺も思ってたよ。こうやって碧と遊べるのも小学校までかなって」

碧「そんなことないよ! 僕はずっと、日向と友達でいたいって思ってる」

日向「俺だって……そう思ってるよ」

碧「でも……難しいのかな……」

日向「……」

碧「僕さ……思うんだ。ずーっと、このまま小学生のままでいられないかなって」

日向「……そうだな」

碧「ネバーランドに行きたいなぁ」

日向「ピーターパン症候群になるのが限界だよな」

碧「ぷっ! それだと単に痛い人だよ」

日向「あはは。そうだな」

碧「やっぱり、現実は残酷だよね。希望も奇跡もないもん」

日向「いや、もう奇跡は起こってると思うぞ」

碧「え? ホント?」

日向「俺は、お前に会えたことが奇跡って思ってる」

碧「……日向」

日向「……」

碧「……ぷっ! なに、それ? クサイセリフ! プロポーズかと思っちゃった」

日向「う、うるさいな! 俺も言ってみて、恥ずかしかったよ!」

碧「でも、本当に奇跡かもね。違う学校なのに、こうやって、出会えて、毎日遊んでるんだもん」

日向「だよなー。今まで学校でも、家の周りでも、碧くらい気が合うやつはいなかったからな」

碧「僕もだよ……」

日向「家の中でもさ、なんか気を遣うっていうか、意識を変えないといけないっていうか、とにかく疲れるんだよな。自然にいられるのは碧の前くらいだよ」

碧「僕もだよ」

日向「だから、俺は、ずっと碧と友達でいたい。……この先も、ずっと……」

碧「うん……」

日向「……」

碧「ねえ、日向。男女の友情ってあると思う?」

日向「なんだ? 急に? お前、好きな人でもできたのか?」

碧「あ、いや、そうじゃなくてさ。よく言うからさ。男女の友情なんてありえないって」

日向「うーん……。男女の仲って、恋愛が入るから、友情はないって話だよな? でも、俺……正直、恋愛とかまだ興味ないからわからないな」

碧「そうだよね……。実は僕もなんだ」

日向「あって欲しいよな」

碧「え?」

日向「男女の友情」

碧「そ、そうだよね! あるよね!」

日向「きっとあるさ」

碧「……あ、あのね。僕、さ」

日向「なんだ?」

碧「う、ううん。なんでもない」

日向「えー、なんだよ、それ! 気になるじゃん。言えよ」

碧「やっぱり、秘密―」

日向「ちぇっ!」

碧「いつか、言うよ」

日向「絶対だぞ」

碧「うん……絶対」

碧(N)「こうして、日向との友情は小学校を卒業するまで続いた。その頃には、いつの間にか日向の前でしか、僕と言わなくなった。結局、日向に付いていた嘘を告白せずに終わってしまった。……そして、私は中学生になり、当然だけど、中学校に行くことになる」

日向「あっ!」

碧「あっ!」

日向「ちょ、その制服……。お前、女だったのか!」

碧「いやいや、日向こそ!」

日向「ぷっ!」

碧「ふふっ!」

日向「あはははははははは!」

碧「あはははははははは!」

碧(N)「結局、男女間の友情があるのかはわからなかったけど、今でも日向との友情は続いている」

終わり

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