【声劇台本】二人の夢

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■概要
人数:6~8人
時間:15分

■ジャンル
ボイスドラマ、時代劇、シリアス

■キャスト
武蔵(たけぞう) 5歳
小太郎(こたろう) 7歳
宮本 武蔵(みやもと むさし)
佐々木 小次郎(ささき こじろう)
清十郎(せいじゅろう)
宝蔵院(ほうぞういん)
梅軒(ばいけん)
木下
モブ ※兼ね役

■台本

木剣で打ち合う音。

武蔵「はああ!」

小太郎「はあああ!」

武蔵の木剣が弾かれる。

武蔵「あっ!」

小太郎「てい!」

ゴンと木剣で頭を打たれる武蔵。

武蔵「痛ってー」

小太郎「ふふん。今日も俺の勝ちだな」

武蔵「ちっきしょー! なんで小太郎に勝てないんだよ」

小太郎「いやいや。武蔵(たけぞう)も結構強くなったよ。俺もかなり危なかった」

武蔵「お世辞はいいよ」

小太郎「ホントだって。それに俺の方が2歳年上なんだぞ。お前に負けてたら逆に俺がヤバいって」

武蔵「嫌だ! 俺は小太郎にも勝って、一緒に天下無双になるんだ!」

小太郎「一緒に天下無双になるのは無理だ」

武蔵「なんでだよ!?」

小太郎「えーっと、天下無双は一人しかなれないんだよ」

武蔵「そうなのか。まあ、いいや。それより、もう一回勝負だ!」

小太郎「はいはい」

場面転換。

関ヶ原の合戦。周りでは壮絶な戦いが繰り広げられている。

武蔵「これが……関ケ原」

小太郎「武蔵! ボーっとするな、死ぬぞ!」

武蔵「あ、ああ……」

小太郎「いいか。戦は乱戦に入る。手柄をあげるために、俺は向こうに向かう。……お前はどうする?」

武蔵「俺は山の方へ向かう。お前と一緒だと、全部手柄を取られそうだ」

小太郎「わかった。じゃあ、戦が終わったら、この一本杉の下で落ち合おう」

武蔵「ああ」

小太郎「よし、行くぞ!」

二人が走り出す。

場面転換。

武蔵「うおおおお!」

敵兵1「ぐあっ!」

武蔵が敵兵を斬る。

武蔵「はあ、はあ、はあ……」

敵兵2「くそ、この小僧化物か! よし、囲め! 一気にやるぞ」

敵兵3「はああ!」

武蔵「うおおお!」

場面転換。

足を引きずりながら歩く武蔵。

武蔵「はあ、はあ、はあ。あった。一本杉。小太郎はまだ来てないみたいだな……」

そこに複数の敵兵が歩いてくる。

敵兵4「ダメだ。この戦は負けだ。早く、戦場を離れよう」

武蔵が慌てて木の陰に隠れる。

武蔵「敵兵か……。相手は2人か。勝てなくはないが……って、え? あの刀は……」

武蔵が走って、敵兵の前に出る。

敵兵4「むっ! 敵か!」

武蔵「おい、その刀……。なんでてめえが持ってる?」

敵兵4「あ? これか? その辺の死体が握ってたのから貰ったんだ。どうせ、死んでたら使えないだろうからな」

武蔵「……死体? 嘘だ」

敵兵5「なんだ? 知り合いの刀だったのか? 残念だな。戦場では誰だって、すぐ死ぬ」

武蔵「うおおおお!」

敵兵4「くそ!」

場面転換。

武蔵「はあ、はあ、はあ……。小太郎……。くそ、お前が討ち死になんて……」

小太郎の刀を手に取る武蔵。

武蔵「小太郎……。お前の刀、貰うぞ。お前と一緒に俺は天下無双になってみせる。お前と共に過ごした村での日々は絶対に忘れない。今日から俺は宮本武蔵(みやもとむさし)だ。この名を天下に轟かせてやる」

場面転換。

清十郎「吉岡に喧嘩を売るとはいい度胸だ」

武蔵「……いざ、尋常に勝負!」

清十郎「はああ!」

武蔵「うおおお!」

清十郎と武蔵が斬り結ぶ。

場面転換。

宝蔵院「宮本武蔵。吉岡一門を潰したことは耳に入っている」

武蔵「宝蔵院流槍術。ぜひ、勝負してほしい」

宝蔵院「いいだろう。来い!」

武蔵「うおおお!」

武蔵が宝蔵院に向かって走る。

場面転換。

武蔵「そなたが、鎖鎌の宍戸だな?」

宍戸「宮本武蔵……。来たか。お前を斬って、俺の名をさらに轟かせよう!」

武蔵「いくぞ!」

宍戸「ふん!」

分銅を飛ばしてくる、武蔵。

武蔵「くっ!」

宍戸「くくく。この分銅からは逃げられん。貴様の間合いに入らずに、この分銅で仕留めてくれる」

武蔵「……行くしかない! うおお!」

宍戸「はあ!」

キンと、分銅を弾く武蔵。

宍戸「分銅を弾いたか、だが! 隙が大きいぞ!」

武蔵「ふん!」

武蔵がもう一つ刀を抜き、宍戸を斬る。

宍戸「ば、バカな……。二刀だと……」

宍戸が倒れる。

武蔵「……小太郎。お前の刀のおかげで勝てたぞ」

場面転換。

武蔵「……佐々木小次郎?」

木下「ええ。武蔵殿と同等……いや、小次郎殿の方が上だと噂されています」

武蔵「もし、俺が勝てば天下無双となれるのか?」

木下「疑う者はいないでしょう」

武蔵「……受けた」

木下「では、船島にて、決戦を行ってもらいます。邪魔が入らないよう、二人だけで島に入ってもらい、勝者だけが島から出られるという形です」

武蔵「承知した」

場面転換。

海辺。波の音。

武蔵「宮本武蔵だ。……って、え?」

小次郎「……お前、武蔵(たけぞう)か?」

武蔵「小太郎! お前、なんで生きてるんだよ!」

小次郎「こっちのセリフだ!」

武蔵「え? どういうことだ?」

小次郎「お前、生きてたなら、なんで一本杉の下に来なかったんだよ? ずっと待ってたんだぞ」

武蔵「いや、俺はお前が死んだと思って……ほら、この刀! 敵兵が持ってたんだ」

小次郎「ああ、その刀か。戦場でもっといい刀を見つけたから、持ち換えたんだよ」

武蔵「名前は? なんで、佐々木小次郎なんて名前を名乗ってるんだよ」

小次郎「あの後、佐々木家に世話になって、養子になったんだ。小次郎って名前は、鐘巻先生が新たな人生を送るためにってつけてくれたんだよ」

武蔵「……嘘だろ」

小次郎「お前だって、宮本武蔵って名前にしてるだろ」

武蔵「お互い、考えることは一緒だな」

小太郎「それに、夢も変わってない」

武蔵「天下無双。この夢は譲れない」

小次郎「いざ、尋常に」

武蔵「勝負!」

場面転換。

武蔵が小次郎の刀を弾く。

武蔵「勝った……」

小次郎「強くなったな」

武蔵「これで、俺が天下無双だな」

小次郎「ああ。俺に止めをさせばな」

武蔵「え?」

小次郎「昔、言っただろ。天下無双は一人だ。俺が生きている限り、お前は天下無双にはなれない」

武蔵「……わかった」

武蔵がブンと刀を振る。

小次郎「なにやってるんだよ?」

武蔵「佐々木小次郎は死んだ。今からお前はただの小太郎だ」

小次郎「なんだよそれ」

武蔵「小太郎は無名だからな。生きてたところで、誰もお前を天下無双とは言わない。つまり、天下無双は俺だけだ」

小次郎「ぷっ! あははは! わかったよ。佐々木小次郎はここで、宮本武蔵に敗れて死んだ。それでいいさ」

場面転換。

木剣で打ち合う音。

武蔵「はああ!」

小太郎「はあああ!」

武蔵の木剣が弾かれる。

武蔵「あっ!」

小太郎「てい!」

ゴンと木剣で頭を打たれる武蔵。

小太郎「ふん、天下無双の宮本武蔵の名が泣くぞ」

武蔵「くそっ! なぜだ! 結局、勝てたのって、船島の一回だけかよ……」

小太郎「ま、いいじゃねーか。世間では天下無双はお前なんだから」

武蔵「実力でも天下無双になりたいんだよ」

小太郎「それより、そろそろ完成するんだろ?」

武蔵「ああ、五輪の書か。お前のおかげでな。あれはすげー、兵法書になるぞ」

小太郎「二人で作ったからな。当然だ」

武蔵「さ、じゃあ、もう一本やるぞ」

小太郎「返り討ちにしてやるさ」

武蔵「いざ、尋常に」

小次郎「勝負!」

終わり。

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