【声劇台本】タイムパラドックス

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■概要
人数:1人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
陸翔(りくと)

■台本

陸翔(N)「タイムパラドックス。時間を戻った際に起こるかもしれない、時間的矛盾。たとえば、過去に戻って、両親の結婚を阻止した際、今の自分はどうなるのか? あまりにも有名な言葉だが、今まで誰一人としてどうなるかを検証出来た人間はいない。今回はそんな、タイムパラドックに関した話になる」

陸翔「よし、これで準備は整った、と。えーっとあとは、塩水でうがいをしてから、鏡をジッと見る、ね」

陸翔が塩水でうがいをする。

陸翔「で、この状態で、自分の携帯の番号にかけると、未来の自分に繋がる……って、ホントかよ。まあ、ダメもとでやるしかないよな……よし」

陸翔がスマホのボタンを押す。

数回のコール音。

陸翔(N)「あれ? こういうのって、普通、かかるんだっけ? 話し中……にはならないよな? おかけになった電話番号は……ってのも違う気もするし……。どうなってんだ?」

ピッと音がして、通話状態になる。

陸翔(未来)「もしもし?」

陸翔「え? マジで繋がった!」

陸翔(未来)「誰?」

陸翔「ああ、俺俺!」

陸翔(未来)「……今どき、そんな詐欺、ひっかかるかよ。切るぞ」

陸翔「違う違う! 俺俺詐欺じゃねえよ。過去の俺だよ」

陸翔(未来)「俺俺詐欺より雑な嘘だな」

陸翔「俺の初恋は、幼稚園の先生。俺が初めて拾ったエロ本は小学3年の時で、橋の下だ。でも、内容はデブ専のだった」

陸翔(未来)「マジで、過去の俺かよ」

陸翔「逆にお前が、未来の俺だって証明はできるか?」

陸翔(未来)「俺は足の裏フェチだ」

陸翔「……未来の俺に聞きたいことがある」

陸翔(未来)「なんだ?」

陸翔「こっちはもうすぐクリスマスなんだよ。で、彼女が欲しい。どうしたらいい?」

陸翔(未来)「知らねーよ」

陸翔「ああ? 少しは考えろよ、仕えねーな」

陸翔(未来)「はあ? てめえのことはてめえで考えろよ! 俺は忙しいんだ、切るぞ」

陸翔「あ、ごめんごめん。待って! あのさ、未来の俺は彼女とかいるよな?」

陸翔(未来)「……なんでそんなこと聞く?」

陸翔「えっと、ほら。その彼女に今から告白すれば、成功するはずだろ?」

陸翔(未来)「……あ、そういうことか」

陸翔「なんの話だ?」

陸翔(未来)「えっとな。実は俺……つまり、お前のことがずっと好きだった奴がいるんだ」

陸翔「マジでか! 誰誰?」

陸翔(未来)「ああ、それはな……」

陸翔「ん? どうした?」

陸翔(未来)「あ、いや……。えっとな。玲子さんだ」

陸翔「……え? 玲子さんって、あのクラスで一番人気の?」

陸翔(未来)「そうそう。で、これから俺が言うことなんだけど、信じられないかもしれないが、信じてやりとげてほしい」

陸翔「……わかった。玲子さんと付き合えるなら何でもする!」

陸翔(未来)「よし、それじゃ……」

場面転換。

陸翔「……意外だな」

陸翔(未来)「だろ? でも、それが彼女を落とす攻略法だ」

陸翔「よし、わかった! じゃあやってやるぜ」

陸翔(未来)「おう! 頑張ってやり遂げろよ!」

電話を切る陸翔。

陸翔「よし、やるぞ!」

陸翔(N)「……結果を言うと、未来の俺が教えてくれた方法は失敗だった。玲子さんには普通にフラれてしまった。おかしい……どこかで世界線が変わってしまったんだろうか、と思っただけですぐに忘れてしまった。……そして、それから8年が経った」

場面転換。

ドアを開ける陸翔。

陸翔「くそ……。美嘉がずっと、俺のことが好きだったなんて……。自分の結婚式のときに言うなよな……。くそ、くそ。わかってたら告白したのに……。てか、告白できなかった理由ってなんだよ! いつでもオッケーだった、つーの!」

そのとき、携帯が鳴る。

ボタンを押して通話状態になる。

陸翔「もしもし?」

陸翔(過去)「え? マジで繋がった!」

陸翔「誰?」

陸翔(過去)「ああ、俺俺!」

陸翔「……今どき、そんな詐欺、ひっかかるかよ。切るぞ」

陸翔(過去)「違う違う! 俺俺詐欺じゃねえよ。過去の俺だよ」

陸翔「俺俺詐欺より雑な嘘だな」

場面転換。

陸翔(過去)「あ、ごめんごめん。待って! あのさ、未来の俺は彼女とかいるよな?」

陸翔「……なんでそんなこと聞く?」

陸翔(過去)「えっと、ほら。その彼女に今から告白すれば、成功するはずだろ?」

陸翔(N)「過去の俺の言葉で、俺は完璧に思い出した。そう。あのとき俺は未来の俺に電話をかけたのだ」

陸翔「……あ、そういうことか」

陸翔(過去)「なんの話だ?」

陸翔(N)「今、この時点で、美嘉に告白すれば、過去の俺は確実に美嘉と付き合えるはずだ。よし……」

陸翔「えっとな。実は俺……つまり、お前のことがずっと好きだった奴がいるんだ」

陸翔(過去)「マジでか! 誰誰?」

陸翔「ああ、それはな……」

陸翔(N)「あれ? 待てよ。こいつが得するのは、なんかムカつくな。こいつだけが美嘉と付き合えるとか、ありえねーだろ。俺はずっと彼女がいなかった暗黒時代を過ごしたのによぉ」

陸翔(過去)「ん? どうした?」

陸翔「あ、いや……。えっとな。玲子さんだ」

陸翔(過去)「……え? 玲子さんって、あのクラスで一番人気の?」

陸翔「そうそう。で、これから俺が言うことなんだけど、信じられないかもしれないが、信じてやりとげてほしい」

陸翔(過去)「……わかった。玲子さんと付き合えるなら何でもする!」

陸翔「よし、それじゃな、玲子さんにいきなり好きだと言うんだ。そしたら、まず無視される。そこで、頬を叩くんだ。お高くとまるんじゃねえって」

陸翔(過去)「そんなことして大丈夫なのか?」

陸翔「ああ。その後は、私を叱ってくれたのはあなたが初めてだって言って抱き着いてくる」

陸翔(過去)「おお……」

陸翔「あとな、場所が大事だ。教室でやれ」

陸翔(過去)「教室? なんでだ?」

陸翔「みんなが見てるところじゃないとダメなんだ」

陸翔(過去)「……意外だな」

陸翔「だろ? でも、それが彼女を落とす攻略法だ」

陸翔(過去)「よし、わかった! じゃあやってやるぜ」

陸翔「おう! 頑張ってやり遂げろよ!」

電話が切れる。

陸翔「ふん。教室には美嘉がいる。他の女に告白しているのを見れば、美嘉からあいつに告白することもないだろ」

陸翔(N)「たとえ過去に戻ったとしても、こんな感じで、結局は同じ結果に落ち着くんだろ。タイムパラドックスなんて、起こることなんてないんだ。きっと、世界はそうやって上手く回っているんだろう」

終わり。

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