【声劇台本】デジャブ
- 2020.12.25
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
正樹
諒太
彩音
■台本
正樹(N)「最初は本当にちょっとした違和感だった。何かがおかしい。……というより、既視感がある。ただ、そのときは気のせいだと思って、気にもかけなかったのだ。ただ、二ヶ月の間、それが続いているとなれば話は別だ」
大学の食堂。
周りは賑わっている。
諒太「それって、デジャブじゃね?」
正樹「デジャブ?」
諒太「ほら、前に見たことあるって感覚がすることだよ」
正樹「ああ、それそれ。そんな感じ」
諒太「けど、そうだとしても変だよな」
正樹「変? なんでだ?」
諒太「デジャブってさ、例えば、初めて行く場所なのに、来たことがあるような感じがしたり、あ、この会話、前にもしたなって感じがするんだよ」
正樹「それが、何が変なんだ?」
諒太「いや、だって、正樹。それ、自分の部屋で起こるんだろ?」
正樹「そ、そうだけど……」
諒太「毎日部屋で過ごしてるんだから、既視感があるなんて、当然じゃね?」
正樹「んー。説明するのが難しいんだよな。なんていうか……。俺の部屋って綺麗って言えないだろ?」
諒太「ああ。カオスだよな」
正樹「……まあ、否定はしないけど。だからさ、同じ状態になってることなんてないはずなんだよ」
諒太「どういうことだよ?」
正樹「部屋で過ごしてるってことは、色々状況は変化していくだろ? リモコンや本の位置とかその日によって変わるもんだろ?」
諒太「まあ……余程、神経質で、置く場所が決まってるとかいう奴じゃない限り、そうかもな」
正樹「でもさ、何となくなんだけど、その配置が全くの一緒のような気がするんだよ。その……デジャブを感じるときって」
諒太「たまたまじゃねーの?」
正樹「ま、そうかもな……」
そこに彩音がやってくる。
彩音「正樹先輩。今日はサークルに来れますか?」
正樹「あー、えっと……今日ってバイトは……どうだったかな?」
彩音「休みですよ。今週は今日と金曜日が休みです」
正樹「ああ、そうだったっけ。バイト休みなら、顔出すよ。今月はあんまり出れてないし」
彩音「……はい。お待ちしてますね」
彩音が行ってしまう。
諒太「だれ? めっちゃ可愛いし、良い匂いしたぞ?」
正樹「ゲーム研の後輩だよ。彩音ちゃん」
諒太「サークルの後輩? それだけか?」
正樹「え? ああ、そうだけど。なんでだ?」
諒太「彩音ちゃん、お前のバイトの休みとか把握してるとか、普通あり得ないだろ。秘書じゃねーんだからさ」
正樹「いやいや。そういうんじゃないよ。彩音ちゃんは、完全記憶だったけな? とにかく、一回見たり聞いたりしたことは忘れないって能力を持ってるみたいなんだよ。だから、サークルだと、みんなスケジュール管理とかしてくれてるんだ」
諒太「へー、すごい能力だな」
正樹「ああ。俺が忘れてる課題とか、出席日数とかも時々、教えてくれるんだよ」
諒太「ふーん」
場面転換。
ゲームの音。
そこに正樹が入ってくる。
正樹「ちーっす」
彩音「あ、正樹先輩、お疲れ様です」
正樹「あれ? 彩音ちゃんだけ?」
彩音「はい。多賀先輩と宮城さんは、急用があるみたいで、今日は来ないみたいです」
正樹「そっかー。久しぶりにみんなに会いたかったんだけどな。みんないないのか」
彩音「……あの、正樹先輩。この対戦ゲームやりませんか?」
正樹「おお、懐かしいな、そのゲーム。やろうやろう!」
場面転換。
ゲームの音。
正樹「うわ、また負けた」
彩音「正樹先輩は、ピンチになると動きがワンパターンになりますね」
正樹「そうかな? 自分じゃ気づかない……って、あれ?」
彩音「どうしました?」
正樹「いや、この会話って前にしたような気がしてさ。デジャブってやつかな」
彩音「……」
正樹「このゲーム、前にやったことあったっけ?」
彩音「いえ、部室では初めてです」
正樹「だよな。ごめんごめん。くだらないこと言ったな。じゃあ、続きやろうぜ」
彩音「はい……」
場面転換。
ドアが開き、正樹が部屋に入ってくる。
正樹「……少し、熱くなりすぎたな。格闘ゲームを5時間もやるとは思わなかった」
どさっと、ソファーに座る正樹。
正樹「うーん。今日はデジャブは感じないな。……何が違うんだろ。まあいいか。せっかくだから、積みゲーでも消化するか」
正樹がゲームの電源を入れ、ディスクを取り出す。
正樹「あれ? このゲーム、今日、彩音ちゃんとやったゲームだ。……持ってたっけ、俺? ……ちょっと練習するか。今日は負けまくったしな」
ゲームを起動させて、プレイし始める。
場面転換。
正樹が寝息を立てている。
ゆっくりと体をゆすられる。
彩音「正樹先輩、起きてください」
正樹「……え?」
彩音「二時限目の経済学、今日欠席するとまずいですよ」
正樹「そうだ! ヤバい!」
彩音「今なら、少し遅刻ですけど、急げば出席にしてくれるはずです」
正樹「ありがとう! 助かった!」
慌てて出ていく正樹。
講義室。
正樹「……危なかった」
そこに諒太がやってくる。
諒太「まーさーき! お前、やっぱり彩音ちゃんと付き合ってるだろ!」
正樹「だから違うって」
諒太「今日、お前の家から彩音ちゃんが出てくるところを見たって聞いたぞ」
正樹「それは、遅刻しそうだったから起こしてくれただけだ」
諒太「いやいや、今日だけじゃないって話だぞ。二か月前も朝に、お前の家から彩音ちゃんが出て来たって言うじゃねーか」
正樹「二か月前……? 二か月前……。ああ、飲み会のときのことか? そうだ、思い出した。あのとき、彩音ちゃんが終電がなくなったから、家で時間を潰したんだよ」
諒太「それって、おま! ふざけんなっ!」
正樹「……勝手に妄想を膨らませるな。朝までゲームやってたよ」
諒太「ホントか?」
正樹「ああ。手は出してない……って、ああ。そうだ。あのときか、彩音ちゃんとあのゲームをしたのは……」
諒太「何の話だ?」
正樹「いや、なんでもない。とにかく誤解だよ」
場面転換。
ドアを開けて正樹が入ってくる。
正樹「……あれ? またデジャブだ。明らかに出て行ったときと部屋の状況が違うぞ。……彩音ちゃんが片付けてくれた……ってわけでもないな。片付けた割にはすごい中途半端だ。いつものデジャブの状況と一緒だ。……ん? 待て。わかったぞ! いつも感じるデジャブでおかしいのは匂いだ!」
正樹が電話を取り出してかける。
正樹「あ、すいません。明日なんですけど」
場面転換。
ドアが開き、彩音が入ってくる。
彩音「ああ……。正樹先輩の部屋。ふふ。さっそく、いつも通り、あのときの状況を再現してっと……」
ガサガサと物を動かし始める彩音。
彩音「うん。完璧にあの日の再現が出来たわ。……楽しかったなぁ。ここで、正樹先輩と朝までゲームしたのよね。幸せな時間だったわ」
スッと物置の扉が開く。
正樹「やっぱり、彩音ちゃんだったか」
彩音「ひっ! あ、あれ? 正樹先輩? どうして? 今日はバイトの日じゃ……?」
正樹「休んだ」
彩音「……」
正樹「デジャブの正体は、彩音ちゃんが俺の家に忍び込み、部屋の再現をしたからだったんだな」
彩音「……部屋の異変に気付いていたんですね」
正樹「ああ。なんとなく変だってかんじだけど」
彩音「すいません! 今度からは入った時の状況に戻します!」
正樹「そういうことじゃない!」
正樹(N)「いや、本当に凄い能力だけどさ。もっと違うことに使ってほしい……」
終わり。
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