【声劇台本】全てはあなたのために

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■概要
人数:6人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
ビリー
ソフィア

医者
その他

■台本

ビリー(N)「ソフィアは、俺にとって全てだ。彼女のためならこの身の全てを差し出すことになんのためらいもない。彼女のためなら俺はどんなことでもできる。そう、どんなことでも……」

ソフィア「ごほっ! ごほっ!」

ビリー「大丈夫か、ソフィア。横になった方がいんじゃないか?」

ソフィア「ううん。平気。今日はいつもより体調がいいくらいなのよ。だから、食事、続けましょ」

ビリー「ソフィアがそういうなら……」

食事を続けるビリー。

ソフィア「ごめんね、ビリーくん。私、心配ばっかりかけちゃって」

ビリー「それは言わないって約束だろ。俺が好きでやってることなんだから」

ソフィア「ねえ、ビリーくん。私のことは気にしなくていいんだからね。いつでも見捨ててくれていいんだからね」

ビリー「怒るぞ」

ソフィア「私ね、ビリーくんには幸せになってもらいたいの。私なんかのために、ビリーくんの人生を無駄にしてほしくないわ」

ビリー「俺はソフィアと一緒にいれるだけで幸せなんだ。これだけはわかって欲しい。君を愛してるんだ」

ソフィア「ありがとう……。ごほっ! ごほっ!」

ビリー「やっぱり、横になった方がいい」

ソフィア「うん……。ごめんなさい。そうするね」

ビリー「ベッドまで運ぶよ。ほら、捕まって」

ソフィア「ありがとう」

場面転換。

ビリー「少し換気しようか」

ビリーが窓を開ける。

ふんわりとした風が入ってくる。

ソフィア「風が気持ちいい」

ビリー「もう少し体調が良くなったら、一緒に散歩にでも行こう。前に二人で行った、噴水がある公園とかどうだ?」

ソフィア「うん。あそこの噴水、とっても好きよ。また行きたい」

ビリー「それなら、体調を戻さないとな」

ソフィア「でも、最近はとってもよくなってきてるのよ。咳も出ないし。胸も苦しくないの」

ビリー「……」

ソフィア「でも……不思議よね」

ビリー「ん? なにが?」

ソフィア「こうして、ビリーくんと一緒にいられることが、ね」

ビリー「そうか?」

ソフィア「学生のときは、ビリーくんのこと、名前も知らなかったのよ。同じクラスだったのに」

ビリー「はは。そうだな。あの頃、君は大勢の人に囲まれてたから。俺は近づくことすらできなかったよ」

ソフィア「あの頃の私は傲慢だったと思う。お願いすれば、周りの人たちが何でも叶えてくれたわ」

ビリー「……」

ソフィア「でも、私が病気になって、外にも出られなくなったら、みんな、あっという間にいなくなったわ」

ビリー「あいつらは、軽い気持ちだったんだよ。ソフィアに対しての愛も、その程度だった」

ソフィア「でも、ビリーくんは残ってくれた。残り続けてくれてる」

ビリー「この先もずっと、君からは離れない」

ソフィア「ふふ。嬉しい。……あのね、ビリーくん。いつもビリーくんに迷惑かけてる私だけど……こうなってよかったって思ってるの。私、今、とっても幸せよ」

ビリー「ああ、俺もだよ」

場面転換。

路地裏。男がゆっくりと歩いてくる。

ビリーの横で立ち止まる。

男「ボスからの依頼で、6歳から8歳の男を2人だ」

ビリー「わかった。一週間以内に渡す。……それより、薬の追加を頼む」

男「……もう使い切ったのか? そのペースだと死ぬぞ」

ビリー「うるさい。お前は用意してくれればいいんだ」

男「わかったよ」

場面転換。

たくさんの人々で賑わっている商店街。

カイン「ママ―早くー」

母親「カイン、走らないの。迷子になるわよ」

突然、物陰からビリーが出てきて、カインの口をふさぐ。

カイン「うわっ! んー! んー……」

カインが薬をかがせて眠る。

母親「あら? カイン? カイン、返事して! カイン!」

場面転換。

男「確かに、受け取った。ほら、報酬と例の薬だ」

ビリー「……」

男「あと、これはボスからの忠告だ。しばらく町を出て身を潜めた方がいい」

ビリー「なぜだ?」

男「色々なところで目をつけられてる。さすがにやり過ぎだ。まあ、依頼してるこっちが言うことじゃないがな」

ビリー「忠告は感謝する。けど、町から出る気はない」

男「そうか。精々、気を付けるんだな」

場面転換。

ソフィア「ごほっ! ごほっ! ごほっ!」

ビリー「大丈夫か?」

ソフィア「う、うん。ごめんね……。最近は体調、よくなってきたと思ったんだけど」

ビリー「いいんだよ。あんまり無理はしないようにね」

ソフィア「うん……わかったわ」

場面転換。

夜。一人で歩いているビリー。

そこに一人の男2が現れる。

男2「お前が、ビリーだな」

ビリー「何者だ?」

男2「お前に子供を奪われて男と言えばわかるか?」

ビリー「……」

一発の銃声が鳴り響く。

ビリー「う、うぐ……」

男2「死ね! 死ね! 死ね!」

何発も銃弾を撃ち込まれるビリー。

ビリー「ぐ……。そ、ソフィア……」

場面転換。

医者「もう、問題ないでしょう。退院していただいていいですよ」

ソフィア「ありがとうございます」

医者「ですが、どんな副作用が出るかわからないですからね。少しでも体に異変が出たら、すぐに来てください」

ソフィア「……はい」

医者「それにしても恐ろしい男もいたものだね。自分の手元に置いておきたいからって、毒を盛るだなんて」

ソフィア「……」

医者「いいですか? あなたはまだ若い。早く忘れて、前を向いて生きてください」

ソフィア「先生。こんなことを言うのは変かもしれませんが、私、あの人のことを恨んではいないんです」

医者「……」

ソフィア「確かに酷いことをされました。でも、私はあのとき、確かに幸せだったんです」

医者「肉体的にも精神的にも弱っているときに支えられると、人は依存してしまうものなのです」

ソフィア「……」

医者「ゆっくりでいいです。あなたなら、きっと忘れることができるはずです」

ソフィア「そう……ですね」

医者「それでは、検診は終わりです。失礼しますね」

医師が病室から出ていく。

ソフィア「……」

穏やかな風が窓から入ってくる。

ソフィア「……さよなら、ビリーくん」

終わり。

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