【声劇台本】あの日もらった命
- 2021.01.07
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
沙奈(さな)
空(そら)
沙奈 子供時代
その他
■台本
車の急ブレーキ音。
沙奈「きゃーー!」
男「危ない!」
ドンと男が車に轢かれる。
沙奈「あ……」
男「……だ、大丈夫か?」
沙奈「う、うん……」
女「いやあああああ!」
男「よかった……」
女「お願い、しっかりして!」
沙奈「……」
女「あんたさえいなければ……」
場面転換。
大学の食堂内。賑わっている。
空「……それって沙奈が何歳の頃なんだ?」
沙奈「7歳の誕生日だよ。誕生日が危うく命日になりそうだったから、ハッキリ覚えてるんだ」
空「なるほどな。場所って覚えてるのか?」
沙奈「えっと……家の近くの交差点だったと思う。その事故にあってから、怖くてしばらくの間、その場所を通れなかったんだ」
空「そっか……。で、その、助けてくれたって男は誰だったんだ?」
沙奈「それがさ、不思議なことに誰なのかわからなかったんだよね。目のところに大きな火傷があって、特徴的だったんだけど、結局見つからなかったんだ。近くにいた女の人もだけど」
空「……」
沙奈「でも、急にどうしたの? 昔の事故のことを聞くなんて」
空「ああ、ちょっと気になっただけだよ」
沙奈「ふーん。……それにしても、空がサングラスしてるなんて珍しいね」
空「寝不足でクマが凄いんだよ」
沙奈「なるほどねー。いっつも研究で忙しそうだもんねー。彼女の私を差し置いて、ずーっと研究してるもんねー」
空「ああ、いや……その……ごめん。もうすぐでレポートのまとめが終わるからもう少し待って」
沙奈「え? レポート? ってことは、実験、終わったってこと?」
空「あれ? ……言ってなかったっけ?」
沙奈「聞いてない! もう、なんでそんな大事なこと言わないかな?」
空「ごめん! 今度、デートで奢るから」
沙奈「奮発してよね!」
空「わかってるって」
場面転換。
沙奈が校内を歩いている。
そこに空が走り寄ってくる。
空「よ、沙奈、久しぶり」
沙奈「……」
空「な、なに怒ってるんだよ?」
沙奈「わからない?」
空「あー、いやー、会えなくて悪いとは思ってるんだよ。ホント」
沙奈「……で? いつ、奢ってくれるの?」
空「ごめん、もうちょい待って。今、研究が大詰めなんだよ」
沙奈「え? 前にもうレポートのまとめに入ったって言ってたじゃん」
空「え? そう……だっけ?」
沙奈「あんたさー、私のご機嫌を取るために適当なこと言ってんじゃないでしょうね?」
空「そ、そんなことないって! じゃあ、明後日にデートしよう!」
沙奈「……そんなこと言って、当日にどうせドタキャンするんでしょ?」
空「いやいや、今回は絶対! 明日には実験が終わるからさ」
沙奈「……もし、今回ドタキャンしたら別れるからね」
空「お、おう……。わかった」
場面転換。
道を歩く沙奈。
男「危ない!」
沙奈が男にドンと押される。
沙奈「きゃっ!」
頭上から花瓶が落ちてきて、地面に叩き付けられて割れる。
男「大丈夫か?」
沙奈「あ、ありがとうございます……」
慌てて女性が駆け寄ってくる。
女性「すいません! 大丈夫でしたか?」
沙奈「あ、はい。この人が助けてくれて……って、あれ? いない……」
場面転換。
ドアが開き、空が入ってくる。
空「お待たせ」
沙奈「あ、空」
空「……どうした? 浮かない顔して」
沙奈「あのね、さっき、上から花瓶が落ちて来たんだけどさ……」
空「え? 大丈夫だったのか?」
沙奈「うん。通りかかった男の人に助けて貰ったんだけど、その人、急に消えちゃったんだよね……」
空「どんな奴だったんだ?」
沙奈「それがさ、咄嗟のことだったのと、帽子を被ってたから、わからないんだよね」
空「……ちなみに、それ、どこだっただ?」
沙奈「駅前のモスドのところ」
空「そっか……」
沙奈「その人、たぶん、怪我したんだと思うんだよね。血が地面にあったからさ」
空「……」
沙奈「大丈夫だったかな、あの人。お礼と治療代は払いたかったなぁ」
空「……まあ、いなくなったなら仕方ないだろ。それより、久しぶりのデート行こうぜ」
沙奈「う、うん。……研究の方はいいの?」
空「おう! バッチリ成功した!」
沙奈「ホント! おめでとう! じゃあ、今日はお祝いだね」
空「ああ」
場面転換。
ドアをノックした後、ドアが開き、沙奈が入ってくる。
沙奈「空、いる?」
空「あ、沙奈。どうしたんだ?」
沙奈「いや、昨日のことなんだけど……って、眼帯なんかして、どうしたの?」
空「ああ、ちょっと実験でヘマしちゃって」
沙奈「……研究は成功したって言ってなかった?」
空「……いや、レポートのために検証してたんだよ」
沙奈「お願いだから、あんまり無茶しないでよ」
空「わかってるって」
沙奈「そんなに危険な研究なの?」
沙奈がペラペラとレポートをめくる。
沙奈「なになに? タイムリープ理論? 偶然で試作品は何とか動いたが、もうすぐ使えなくなるだろう?」
空「あー、それは没になったやつ!」
空が慌てて沙奈からレポートを取り上げる。
沙奈「ふーん。随分とファンタジーな実験してたのね」
空「うるせ!」
場面転換。
沙奈が校内を歩いていると、空が駆け寄ってくる。
空「沙奈」
沙奈「空、どうしたの? そんなに慌てて」
空「あーいや、あのさ。付き合ったときに一度だけ話してくれたことがあったよな?」
沙奈「何の話?」
空「小さい頃、知らない人に命を助けて貰ったって」
沙奈「う、うん……」
空「そのときのこと……詳しく教えてくれないか?」
沙奈「ど、どうして?」
空「いいから! もう、時間がない!」
沙奈「え?」
空「あ、いや! 頼む、教えてくれ!」
沙奈「……ねえ、空の研究レポート。タイムリープって……」
空「沙奈!」
沙奈「いや! だって、空が……」
空「そんなこと言ってる場合か!」
沙奈「絶対に、教えない!」
空「くそっ!」
空が走り去っていく。
沙奈「大丈夫……。私が教えなければ……って、あっ!」
慌てて沙奈も走り出す。
場面転換。
ドアを激しく叩く沙奈。
沙奈「開けて! お願い! 開けて!」
体当たりしてドアを壊す沙奈。
沙奈「空! ……いない。きっと、2週間前に戻ったんだ。……その後は17年前に。……なんとか空を止めないと」
場面転換。
走る沙奈。
沙奈「お願い、間に合って! 空! 空!」
車の急ブレーキ音。
沙奈(子供)「きゃーー!」
空「危ない!」
ドンと男が車に轢かれる。
沙奈(子供)「あ……」
空「……だ、大丈夫か?」
沙奈(子供)「う、うん……」
沙奈「いやあああああ!」
空「よかった……」
沙奈「お願い、しっかりして!」
沙奈(子供)「……」
沙奈「あんたさえいなければ……あんたさえ、いなければ!」
首を絞める沙奈。
沙奈(子供)「く、苦しい……」
空「沙奈……」
沙奈「はっ!」
手を放す沙奈。
沙奈(子供)「ごほっ! ごほっ!」
沙奈「……空」
空「沙奈……。生きてくれ……」
沙奈「うう……。空――!」
沙奈(N)「全てを投げ出そうとも思った。空がいない世界を生きるのは凄く辛い。でも……私はこの先も生きていく。空からもらった、この命を無駄にはしない」
終わり。
-
前の記事
【声劇台本】友達の形 2021.01.06
-
次の記事
【声劇台本】魔王様の憂鬱 2021.01.08