【声劇台本】受け継がれる伝説

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■概要
人数:2~4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ

■キャスト
セイル ※子供時代
セイル ※大人時代
ガイル ※セイル大人時代と兼ね役可
カイル ※セイル子供時代と兼ね役可

■台本

ガイル「いいか、セイル。この石はただの石じゃない。賢者の石といって、ドラゴンの心臓から作られた、伝説の魔力増幅アイテムなんだ」

セイル「へー」

ガイル「今は、封印されているが、この賢者の石は我が家に代々受け継がれているんだ」

セイル「じゃあ、父さんの次は僕が受け継ぐってこと?」

ガイル「そうだ」

セイル「すっげー。そんな凄いものが僕の物になるのか! 早く欲しいなぁ」

ガイル「ははは。セイルにはまだまだ早いよ。それにな。これを受け継ぐには、苦しい修行に耐えないとならないんだ」

セイル「えー、どうして?」

ガイル「大魔導士になるためだ。セイル、お前には父さんを超える魔導士になってもらわないとな。……どうだ? 頑張れるか?」

セイル「嫌だ! 僕、修行、大っ嫌い!」

ガイル「ははは。父さんもな、セイルのように修行が大嫌いだったんだ。でも、セイルくらいのときから必死に修行をして、今の力を手に入れたんだ」

セイル「父さんには才能があったんだよ。僕には魔導士の才能なんてからっきしなんだ。だから、父さんみたいには、僕はなれないよ」

ガイル「そんなことはない。お前だって、努力すれば、きっと父さんを超えられるさ」

セイル「嫌だね! 僕は修行なんかしない!」

ガイル「おいおい。そんなんじゃ、賢者の石を受け継ぐことができないぞ」

セイル「いいよ、別に。そんな石、僕、いらない」

ガイル「まあ、そういうな。この賢者の石は凄いんだぞ。今のお前でも、山一つ壊すほどの威力を出すことができるんだ」

セイル「え? 僕が? ホントに?」

ガイル「ああ。それくらい、この賢者の石は凄いんだ」

セイル「……」

ガイル「もし、セイルの、そんな凄いところを見たら、ミーナちゃんもセイルを見直すだろうな。もしかしたら、結婚を申し込まれたりするんじゃないか?」

セイル「そ、そうかな……」

ガイル「ああ。父さんが保証する」

セイル「えへへへ……。ミーナちゃんと結婚……」

ガイル「どうだ? 賢者の石、欲しくないか?

セイル「欲しい!」

ガイル「だろう? もし、お前が明日から、ちゃんと修行を頑張るというなら、賢者の石の封印を解く呪文を教えてやるぞ」

セイル「ホント! するする! ちゃんと、修行するよ!」

ガイル「よし、じゃあ、教えるぞ。……あ、だが、一つ忠告しておく。絶対に封印は解くなよ。本当に、この賢者の石は凄いんだ。今のお前が使っちゃダメなものなんだぞ」

セイル「う、うん。わかった。約束するよ」

ガイル「よし、それじゃ、教えるぞ」

場面転換。

夜。フクロウが鳴いている。

忍び足をしているセイル。

セイル「えへへ。父さんにはああ言ったけど、ちょっと借りるだけなら大丈夫だよね」

立ち止まるセイル。

セイル「よし、父さんから聞いた解除の魔法を……解!」

パキンと封印が解ける音。

セイル「ちょっと、ミーナちゃんに見せるだけ。そしたら、すぐに戻すからね……」

そーっと賢者の石に手を伸ばすセイル。

セイル「あっ!」

賢者の石が地面に落ち、パリンと音を立てて割れてしまう。

セイル「割れちゃった! ……ど、どうしよう……」

場面転換。

ガイル「よし、今日も修行を始めるぞ」

セイル「ね、ねえ、父さん。あのさ……。もし、もしもなんだけど、賢者の石が無くなっちゃったらどうなるの?」

ガイル「……大変なことになる。下手をしたら世界が滅ぶ可能性があるな」

セイル「そんな! どうして?」

ガイル「いいか、セイル。今はまだ邪竜が封印されているが、もし復活したら、どうなると思う?」

セイル「……世界が壊されちゃう?」

ガイル「ああ。だから、賢者の石が必要なんだ。賢者の石の力を使って、邪竜を倒すのが我が家の使命なんだ」

セイル「……そんな」

ガイル「どうしたんだ、セイル。青い顔をして。具合悪いのか?」

セイル「ね、ねえ。もしも、もしもの話だけど、あの賢者の石が偽物だったとしたら、父さんはどうする?」

ガイル「……ん? んー。そうだなぁ。父さんなら強くなる」

セイル「……強く?」

ガイル「ああ。自分の力だけで邪竜を倒せるほどの力をつけるんだ。そうすれば、もし、賢者の石が偽物でも問題ないだろ?」

セイル「そっか! そうだよね!」

場面転換。

30年後。

セイル(N)「それから俺は、それはもう物凄い修行をした。それはそうだ。ニーナにいいところを見せたいというくだらない理由のせいで、世界が滅亡するかもしれないと思ったら、修行するしかなかった。まあ、そのおかげで俺は、父さんを超える大魔導士になることができ、大陸で俺の名前を知らない者はいない、と言われるほどになった。……けど、結局、父さんには賢者の石のことは30年経った今でも話していない」

セイル「カイル。今日の修行を始めるぞ」

カイル「えー……。今日は具合悪いからお休みするー」

セイル「はあー。またか……」

セイル(N)「そんな俺でも、ニーナと結婚し、子供を授かることができた。だが、問題なことに、息子のカイルには、俺の魔法の才能と一緒に、サボり癖も受け継がれてしまっている。……これはまずい。俺が現役でいるときに邪竜が復活すればいい。だが、もし、カイルの代で邪竜が復活すれば……。賢者の石は失われてしまっている。俺のせいで……。すまない、カイル。お前には俺を超える魔導士になってもらわないとならない。だが、このままでは無理だ。……なんとか、カイルにはやる気を出してもらわないとならない。……俺に後を継いでもらいたいと思っていた父さんもこんな気持ちだったんだろうか……」

セイル「あっ!」

セイル(N)「そして、俺はあることを思いついた」

場面転換。

セイル「よし、偽物の賢者の石に封印術を施して……っと。おっと、封印を解いた後は地面に落ちるように細工しないとな……」

場面転換。

セイル「いいか、カイル。この石はただの石じゃない。賢者の石といって、ドラゴンの心臓から作られた、伝説の魔力増幅アイテムなんだ」

カイル「へー」

セイル「今は、封印されているが、この賢者の石は我が家に代々受け継がれて……」

終わり。

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