【声劇台本】あの子のために

【声劇台本】あの子のために

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、学園、コメディ

■キャスト
聡(さとる)
卓哉(たくや)
幸田 美海(こうだ みう)

■台本

コンサート会場内。

大勢の観客で賑わっている。

美海「みんなー! 今日は来てくれてありがとー! いーっぱい、楽しもうねー」

ワーッと男たちの歓声が上がる。

聡「うわー! 美海ちゃーん! サイコー!」

場面転換。

放課後。教室内。

聡「あー……。昨日のライブは本当に最高だった。昨日の思い出があれば、2週間はパンの耳で過ごせる」

卓哉「聡……。お前、また生活費を削ってライブに行ってきたのか」

聡「なんだよ、卓哉。俺は飯よりも美海ちゃんを優先した、それだけだ」

卓哉「別にそのことに対しては、文句があるわけではない。問題はただのファンでいいのか、という話だ」

聡「どういうことだよ?」

そのとき、ガラガラと教室のドアが開く。

美海「わっすれものー! わっすれものー!」

聡「あっ、みみみ、美海ちゃん! おはよう!」

美海「きゃはっ! 今はもう夕方だよー?」

聡「そ、そそうだね。じゃあ、こんばんは、かな?」

美海「うーん? まだ外は明るいから、こんばんわーも変だよねー」

聡「あ、ああ……そうだね。こんな時、どういえばいいのかな」

美海「んー。わかんない」

聡「え、えっとね、昨日、美海ちゃんのライブ、行ったよ」

美海「ホント? ありがとー!」

とことこと歩いて、机のところへ行く美海。

美海「えーっと」

ガサガサと机を漁る美海。

美海「あったあった。危ない危ない。それじゃねー。バイバイ」

美海が教室を出ていく。

聡「あっ! ……行っちゃった」

卓哉「……」

聡「いやー! でも、ラッキーだったー! まさか美海ちゃんと会話できるなんて! この学園に入学してホントよかったー!」

卓哉「聡。私が言いたいのは、そこだ」

聡「ん? なにが?」

卓哉「日常でも幸田美海を見ることができるのに、生活費を削ってライブを見に行く必要があるのか?」

聡「チッチッチ。甘いぞ。教室で見せる美海ちゃんの魅力とライブでの美海ちゃんの魅力は全然違うものなんだよ」

卓哉「ふむ。なるほど。だが、聡よ。それでいいのか?」

聡「な、なにがだよ?」

卓哉「今のお前は、完全に大勢いる中のファンの一人としか見られていない。それか、単なるクラスメイトだ」

聡「それの何が悪いんだよ」

卓哉「同じ学校で、しかもクラスメイト。そのアドバンテージを、お前は全く活かし切れていない」

聡「アドバンテージ?」

卓哉「そうだ。普通のファンであれば、直接話すことなど出来ない。直接話そうとして後を付ければ、ストーカーになってしまう」

聡「まあ、そうだな。先生からも美海ちゃんの後を付けたり見に行くなんて行動は禁止されてるもんな。俺の知ってる限りで、ルール破って7人は停学になってるもんな」

卓哉「このままいけば、お前は幸田美海に名前すら覚えられず、記憶の片隅にすら残らずに卒業するだろう」

聡「いやいや。名前くらいは憶えて貰えるだろ。クラスメイトだぞ?」

卓哉「十中八九覚えられてないだろうな。現にさっき、一度も名前どころか名字も呼ばれなかっただろ?」

聡「た、たまたまだろ」

卓哉「そう思いたければ、そう思っていればいい。だが、これだけは断言できる。このままではお前と幸田美海の距離は絶対に縮まらない」

聡「……っ!」

卓哉「まあ、お前がこのままでいいというなら、俺はもう何も言わないがな」

聡「その言い方だと、何か策があるってことなのか?」

卓哉「無論だ。一緒の学園というアドバンテージを使い、幸田美海のデータは全て洗い出している。幸田美海の好みを完全に把握できた」

聡「……頼む、卓哉。俺は美海ちゃんに名前を呼んでもらいたいんだ」

卓哉「この計画が上手くいけば、名前を呼ばれるどころか、恋人同士になることだって可能だ」

聡「お前は……神なのか?」

卓哉「だが、これは正直に言って、いばらの道だ。全てを捨てるくらいの覚悟が必要だぞ」

聡「問題ないさ。いや、美海ちゃんと仲良くなるためなら、そのくらいの代償は当然さ」

卓哉「うむ。お前の覚悟、受け取った。それでは計画を開始する」

場面転換。

腕立て伏せをしている聡。

聡「8……、きゅーう……じゅ、じゅう! うが、限界! もう無理!」

卓哉「ふむ。腕立て10回が限界か……。思ったより貧弱だな。さあ立て。次は走るぞ」

聡「ひー!」

場面転換。

走る聡。自転車で並走する卓哉。

聡「はあ……ひい……いや……無理……」

卓哉「どうした? まだ500メートルくらいだぞ。スピードを上げろ!」

聡「ひぃ……」

場面転換。

聡「うっぷ……。もう、食えないって」

卓哉「ダメだ! 運動後のたんぱく質の摂取は筋肉の成長に不可欠だ」

聡「うっ……吐きそう……」

卓哉「幸田美海と付き合いたくないのか?」

聡「うおおおお!」

がつがつと食べ始める聡。

場面転換。

腕立て伏せをする聡。

聡「99……ひゃーくー! あー、限界」

倒れ込む聡。

卓哉「ふむ。ついに腕立ても100回達成だな」

聡「いやー、続ければできるもんだな。それより、卓哉。やっぱりまだ髪切っちゃダメなのか?」

卓哉「当然だ。半年の苦労を水の泡にするのか?」

聡「うーん。かなり鬱陶しいんだけどな」

卓哉「我慢しろ。この計画は幸田美海の好みに100パーセント合わせにいくというものが肝だ。……確認するが、聡。下着は指定したものを着用してるな?」

聡「ああ……。パンツは全部、ブリーフにしてるよ」

卓哉「育毛剤は?」

聡「毎日、脇と胸と腕につけてるよ」

卓哉「うむ。では、そろそろ、言葉遣いも調整していくぞ」

聡「言葉遣い?」

卓哉「語尾は必ず、だ! や、だぜ!と付けろ。男らしい言葉遣いというのを意識しろ」

聡「わ、わかったよ……じゃなくって、わかったぜ!」

卓哉「よし、それでいい」

場面転換。

腕立て伏せをしている聡。

聡「499……500!」

卓哉「よし、ついに腕立て伏せも500回を達成したな」

聡「ふん! まだまだ余裕だぜ」

卓哉「計画を開始して、約一年。お前は俺の理想とする姿を手に入れた。よくやったな」

聡「がははは! 今の俺は誰にも負ける気がしねえぜ!」

卓哉「……それでは計画の最終段階だ。明日、幸田美海に告白だ」

聡「ああ。あっちから付き合ってくださいって言わせてやるぜ」

場面転換。

聡「おい、美海。俺と付き合えよ」

美海「うみゅ? いきなりどしたのかな?」

聡「お前、ワイルドな男が好きなんだろ? 俺はワイルドそのものだ!」

美海「あははっ! それじゃワイルドっていうより、野獣だよー! 体毛もボーボーだしー!」

聡「え?」

美海「もっと、身なりに気を付けないと、女の子に、モ、テ、な、い、ぞ! それじゃね」

美海が走って行ってしまう。

聡「……おい、卓哉。フラれたぞ?」

卓哉「ふむ」

聡「どうすんだよ?」

卓哉「……プ、プランBがあるんだが」

聡「ふざけんなー!」

終わり。

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