【声劇台本】相応しい人

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
省吾(しょうご)
沙良(さら)
美鈴(みすず)
占い師

■台本

省吾(N)「あいつは本当に、地味で暗くて、何を考えているか分からなかった。だから、俺にとって、あいつは単なる幼馴染なだけであって、正直、女として見たことはない。告白されても、ただただ迷惑なだけだった。あいつは、俺に相応しい女じゃない」

紗良「省吾君……。ど、どう……かな?」

省吾「なあ、沙良。俺にはさ、お前は勿体ないって。沙良にはきっと、もっといい奴が現れる。俺のことなんか忘れて、他の男に目を向けろよ」

沙良「う、うう……」

省吾「泣くなって。お互い、これが一番いい結果だと思う」

沙良「ふえーん!」

省吾「……」

場面転換。

美鈴が走ってくる。

美鈴「省吾くーん! おはよー」

省吾「朝から元気だな、美鈴は」

美鈴「だって、明日から夏休みなんだもん」

省吾「……なあ、あの話、考えてくれたか?」

美鈴「旅行のことでしょ? うーん、どうしようかなー?」

省吾「せっかくの夏休みなんだからさ、パーっと行こうぜ、泊まりでさ」

美鈴「そんなこと言ってー。なんだっけ? 亮子ちゃんはどうしたのよ」

省吾「亮子? ああ、あいつは別に、なんともないって。一回、遊びに行っただけだし」

美鈴「うわー。そう言って、何人の女の子泣かしてきたのよ」

省吾「人聞きの悪いこと言うなよ。美鈴は本気だぜ?」

美鈴「ホントぉ? んー。じゃあ、何人か、呼んでいい?」

省吾「なんでだよ」

美鈴「さすがに2人きりはマズイって」

省吾「それで旅行行けるならしゃーねーか」

場面転換。

海。波の音がしている。

美鈴「うーみーだー!」

省吾「……美鈴。どういうつもりだよ」

美鈴「なにが?」

省吾「なんで、あいつなんだよ?」

沙良「……」

美鈴「ああ、沙良ちゃんのこと? ほら、誰かさんにフラれたからさー、気晴らしにね」

省吾「お前、性悪だな」

美鈴「それより、省吾、地味男くん連れて来るとかさー。あり得なくない? イケメン連れてきてよ、イケメン」

省吾「バーカ。わざわざ、ライバル連れてくる奴がいるかよ」

美鈴「あははは。正直な奴―。じゃあ、さっそく泳ごうかな。水着に着替えてくるね」

美鈴が走って行くが、途中で立ち止まる。

美鈴「沙良ちゃーん! せっかくだから、沙良ちゃんも泳ごうよ。水着に着替えてさ」

沙良「え? で、でも……」

美鈴「水着持ってきてるんでしょ?」

沙良「……」

美鈴「それに、あいつのこと、忘れたいんでしょ? なら、パーッと遊ばないと。ね?」

沙良「うん……」

場面転換。

沙良が歩いてくる。

沙良「お、お待たせ……」

省吾「え……?」

美鈴「やっぱり! 沙良ちゃん、眼鏡外したらイケてると思ったんだよねー。プロポーションもいいし」

省吾「……」

沙良「は、恥ずかしいよ」

美鈴「(耳打ちするように)どう? やっぱり、沙良ちゃんのことフッたの後悔してるんじゃない?」

省吾「そ、そんなことねーよ……」

省吾(N)「頭を殴られたようなショックを受けた。恥ずかしそうに立っている、水着姿の沙良はまさに女神と言えるほど、美しかった。けど、俺は一度フッたというプライドが邪魔して、あいつを口説くようなことはしなかった。時間が経ち、俺たちは卒業し、就職のため、別々の町へと引っ越していった」

場面転換。

街中を歩く省吾。

省吾「……あー、クソつまんねえ合コンだったな。ったく、もう少しいい女連れて来いっての」

占い師「そこのお兄さん。占っていきませんか?」

省吾「え? 俺? いいよ。興味なし」

占い師「顔に女難の相が出てますよ。このままだと、あと10年は結婚できないかもしれません」

省吾「おいおい、ズルいこと言う占い師だな。そんなこと言って、高額のもの売りつける気なんじゃねーのか?」

占い師「いいえ。今なら初回サービスでタダで見てあげますよ」

省吾「……ホントか? 一円も払わないからな」

占い師「それでは顔をよく見せてください。……なるほど。あなたは過去に強い後悔がありますね。そのせいで、女性に対しての運が下がっています」

省吾「後悔? いや、そんなのないよ」

占い師「それはあなたが気づいていない、もしくは忘れているだけです。……そうですね。今ならこの水晶をあげましょう」

省吾「だから、一円だって払わないって」

占い師「いえいえ。無料です。この水晶を持って、後悔したときのことを思い浮かべてください。そうすれば、そのときの時間に一度だけ戻ることができます」

省吾「はあ? うさんくせー!」

占い師「ふふ。そうですね。信じるかどうかはあなた次第です。無料ですので、使うも捨てるもお任せします」

省吾「……」

場面転換。

カギを開けて、部屋に入る省吾。

省吾「水晶に盗聴器がついてるとかないよな……って、あれ? ハガキ?」

ぺらっと手紙を見る省吾。

省吾(N)「ハガキは沙良からだった。結婚して、子供が生まれたらしい。幸せそうな顔をして写真がプリントされていた」

省吾「昔より、美人になってるな……。って、なんだよ、このハガキは! 俺に対しての嫌味か! どうせ、俺は彼女もいないっての!」

省吾(N)「結局、美鈴とも長く続かなかった俺は沙良のことを紛らわすために、色々な女と付き合った。けど、結局は続かず、今に至る」

省吾「……あいつ。俺のこと……好きだったんだよな」

省吾(N)「あのとき……告白されたとき、付き合ってれば、今頃はあいつと結婚してたんだろうか? そんな妄想が頭をよぎる」

省吾「……あ、この水晶」

省吾(N)「俺はダメ元で水晶を握り、あの頃のことを強く思い出す。あいつが……俺に告白した、あの日のことを……」

パリンとガラスが割れる音。

沙良「……省吾君、付き合ってください」

省吾「え? あれ?」

省吾(N)「目の前には沙良が立っていた。眼鏡で地味で、根暗そうに見える、あのときの沙良だ」

省吾「ホントに戻れたのか?」

沙良「え?」

省吾(N)「例え、夢でもいい。ずっと気になっていたことを試すチャンスだ。このとき、OKを出していたら、沙良と付き合えてたんだ」

沙良「……あ、あの、お付き合い、してくれますか?」

省吾「あ、ああ……」

省吾(N)「もし……沙良が俺と付き合ったとしたら……俺は沙良を幸せにできるんだろうか? こんな俺があの写真の中の沙良のような笑顔に、できるんだろうか?」

紗良「省吾君……。ど、どう……かな?」

省吾(N)「外見しか見てない俺なんかが、沙良と付き合っていいわけ、ないよな……」

省吾「なあ、沙良。俺にはさ、お前は勿体ないって。沙良にはきっと、もっといい奴が現れる。俺のことなんか忘れて、他の男に目を向けろよ」

沙良「う、うう……」

省吾「泣くなって。お互い、これが一番いい結果だと思う」

沙良「ふえーん!」

省吾「……」

省吾(N)「これでよかったんだ。あの日の俺の選択は間違っていなかった。沙良。俺なんかより、よっぽどお前に相応しい奴が現れる。……どうか、幸せに」

終わり。

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