【声劇台本】古き良き時代

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■関連小説
この作品は『トーテムポールと学校の七不思議』のその後の話になります。
<トーテムポールと学校の七不思議へ>
ただ、この作品は独立したストーリーなので、小説を読んでいなくても問題ない構成になっています。

■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、学園、コメディ

■キャスト
佐藤 達也(さとう たつや)
布姫(ぬのめ)
美桜(みお)
花子(はなこ)※美桜と兼ね役

■台本

達也が駅の奥から出てくる。

雨がザーッと降っている。

達也「うわっ! 雨かよ……」

ガサガサとカバンを漁る音。

達也「あれ? 折り畳みがないぞ? なんで……って、あ、乾かすために干してたんだった。……どうすっかな。コンビニまで遠いしな。ダッシュするか?」

ザーッと一層、雨が強くなる。

達也「……」

達也(N)「古き良き時代。昔のことを思い出しては、懐かしそうにそう言う人がいる。それはきっと、昔の、楽しかった頃のことを思い出しているんだろう。もちろん、僕にだって、楽しい思い出はある。今、思い返してみれば、高校生だった僕はなんだかんだ言って、楽しかった」

ザーッと雨は強くなっていく。

達也「雨か……」

達也(N)「目の前で激しく振る雨を見て、僕は高校時代の、ある事件を思い出した」

場面転換。

回想。ここから達也達は16歳。

達也「……というわけで、今回の僕たち新聞部の記事の内容は、トイレの花子さんについてだ」

布姫「随分とまた、ベッタベタな七不思議ね」

達也「その分、記事としては派手になるはずだ」

布姫「まあ、あなたが行方不明になったっていう、地味なオチになる可能性もあるけれど」

達也「怖いこというなよ! それに、僕が行方不明って地味なの!?」

布姫「八つ裂きにされた方が、派手かしら?」

達也「……自分を犠牲にしてまで、派手なスクープはいらない」

布姫「そう。面白くないわね」

達也「事件の解明に面白さを求めてくれ。……それより、水麗は?」

布姫「風邪でお休みよ」

達也「そうか。珍しいな」

布姫「なるほど。佐藤くんは、馬鹿は風邪をひかないはずなのに、おかしいなって思ったわけね」

達也「思ってねえよ! 人聞きの悪いことを言うな!」

布姫「安心して。例え、そう思ってなくても、そう言っていたと伝えてあげるわ」

達也「お願い、止めて」

布姫「仕方ないわね。貸しよ」

達也「……ああ。わかった。って、あれ? なんかおかしくないか?」

布姫「そう?」

達也「まあ、いいや。とにかく、今日は僕は学校に隠れてるから、お前は帰っててくれ」

布姫「あら、今日は一人で取材するってことかしら?」

達也「まあ、な。さすがに今回は、万が一のことがあるから、僕一人でやるさ」

布姫「ダメよ。佐藤くん、一人では行かせないわ」

達也「……布姫、お前」

布姫「佐藤君が花子さんに惨殺されたら、誰が写真を撮るのよ」

達也「そっちかよ!」

場面転換。

雨が強く振っている。

達也「ふわー。今、何時?」

布姫「23時50分よ。そろそろかしら」

達也「よし、行くか」

ガラガラとドアを開け、廊下に出る二人。

廊下を歩く音と外の雨の音が響く。

達也「なあ、布姫。ふと思うんだけどさ」

布姫「なに?」

達也「学校の七不思議ってさ、夜の学校で起こることじゃん」

布姫「昼間に起こったら、怖くないじゃない」

達也「まあ、そうなんだけど。だけどさ、七不思議を見たってことは、その生徒も学校に忍び込んだってことなんだよな?」

布姫「ええ。そうなるわね」

達也「でもさ、その生徒って、何のために夜の学校に忍び込んだんだろうな? 僕たちは、七不思議の検証ってことで来てるけどさ、その生徒っていうのは、そもそも七不思議を見る前ってことになるはずだろ」

布姫「……さあね。夜のうちに、忍び込んで嫌いな人の机の中に爆弾でも仕掛けようとしたんじゃない?」

達也「怖ぇよ! せめて、好きな人の机にラブレター入れるとかにしろよ」

布姫「それか、肝試しでもしてたんじゃないかしら? そういう生徒はいつの時代にだっているものだもの」

達也「あー、そうだな。あと、もう一つきになったんだけどさ。学校の七不思議で、どこで何が起こったか、割と詳細なことが噂になるよな? 音楽室のベートーベンの目が動いた、とかさ」

布姫「そうしないと、よくわからない噂になるじゃない」

達也「いや、そうなんだけどさ。でもさ、詳細なことがわかるってことは、一部始終見たってことだよな?」

布姫「そうね」

達也「ってことはさ、そいつ、無事だったってことだよな?」

布姫「……そうなるわね」

達也「つまり、学校の七不思議って噂になった時点で、危険はないってことなんじゃねーの?」

布姫「佐藤くんにしては鋭い考察ね」

達也「しては、は余計だ」

布姫「じゃあ、佐藤くんは、今回のトイレの花子さんの噂も大したことないって言いたいの?」

達也「ああ。もしくはガセかなって」

布姫「それなら、わざわざ、こうやって学校に残る必要はなかったんじゃない?」

達也「いやいや。検証の結果、なにもありませんでしたってスクープが書けるだろ」

布姫「……それはスクープって言わないんじゃないかしら?」

達也「おっと、ここか」

達也たちが立ち止まる。

布姫「よかったわね。女子トイレに入れる理由があって」

達也「……人を変態のように言うな。さてと、さっそく、調査開始だ。トイレのドアを開けるぞ」

布姫「ゆ、ゆっくりよ!」

達也「ははは。布姫、怖いのか? さっきも言った通り、花子さんなんかいないって。ガセだよ、ガセ」

ドアを開ける達也。

花子「きゃあああああ!」

達也「ぎゃーーーーーーー! 出たー!」

場面転換。

布姫「……つまり、あなたは座敷童で、気晴らしに家の人に憑いて行って、学校に来た、というわけね」

花子「……はい」

達也「……で、その家の人と逸れて、探しているうちに夜になって、怖くなってここにいたと」

花子「……はい」

達也「こんなところに一人でいる方が怖いと思うけどな」

花子「あと、雨に濡れるが嫌だったので」

達也「妖怪も雨に濡れるんだ……」

布姫「仕方ないわね。送って行ってあげるわ。家の人の名前はわかるかしら?」

花子「ありがとうございます!」

回想終わり。

場面転換。

強く雨が降っている。

達也(N)「……トイレの花子さんは、座敷童だった。なかなか、インパクトがあった事件だったよな。っと、いかんいかん。思い出に浸ってる場合じゃない。濡れるの覚悟で走って帰るか……」

その時、布姫と美桜が傘をさしてやってくる。

美桜「パパ―!」

達也「……美桜? どうして?」

布姫「呆れたわ。降水確率100パーセントなのに家に傘を忘れる、あなたの間抜けさ加減にね」

達也「……迎えに来てくれたのか?」

美桜「うん!」

布姫「あなたに風邪をひかれて、私たちに移されても困るからね」

達也「はいはい。ありがとうございます」

達也(N)「古き良き時代。確かに、昔も楽しかったけど、今の方が楽しくて幸せだ。僕にとっては今も良き時代なんだ」

終わり。

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