【声劇台本】至高の一杯

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
アレク
アリザ
ミーナ

■台本

飲み物をすする音。

アレク「私の朝は、この至高の一杯で始まる。エレガントな大人が飲む、完璧な飲み物。もちろん、砂糖とかミルクなんか入れない。ブラックだ。よくブラックは苦くて飲めないなんて奴がいるが、正直、私にはその感覚自体が理解できない。これはこの状態でこそ、完成された飲み物だ。これにさらに甘さやミルクなんかを入れて何が美味しいのか。まったく、子供や貧乏な舌は理解しがたい。……まあ、安物は飲めたものじゃないのは確かだ。私も色々と試行錯誤させた上で、ようやく、この至高の一杯に辿り着くことができたのだからな」

ガチャリとドアが開き、アリザが入ってくる。

アリザ「お坊ちゃま。おかわりをお持ちしました」

アレク「御苦労、アリザ。いいタイミングだ」

アリザ「どうぞ」

アリザがテーブルの上にカップを置く。

アレク「うむ」

カップを持ち上げ、スーっと鼻で匂いを吸い込む。

アレク「実にいい香りだ。これこそ、私に相応しい」

アリザ「……お坊ちゃま。ですが、あまりゆっくりはしてられないかと。学校に遅刻しますよ」

アレク「え? い、今、何時だ?」

アリザ「……7時半ですが」

アレク「ちょっ! 早く言えって! 遅刻したら、先生に怒られるだろ!」

アリザ「いつものことでは?」

アレク「うるさい! そろそろ、お父様に報告するぞって脅されてるんだ!」

アリザ「一度、当主様にしっかり怒っていただいた方が、お坊ちゃまの為になるかと」

アレク「メイドのくせに生意気だぞ! っていうか、何、黙って見てるんだよ」

アリザ「……なんのことでしょう?」

アレク「着替えるの、手伝えよ!」

アリザ「……お坊ちゃま、そろそろ、一人でお着換えできるようになった方がいいですよ。もう、中学生なのですから」

アレク「うるさい、うるさい、うるさい! いいから、早く手伝え!」

アリザ「……(ため息)承知しました」

アレク「そうだ、アリザ。今日、ミーナを家に連れてくる」

アリザ「お坊ちゃまが友達を連れてくるなんて珍しいですね。というか、友達、いらっしゃったんですか?」

アレク「友達なんかじゃない。愛人候補だ」

アリザ「……彼女、ということですか?」

アレク「いや、あんな下賤な家系の女と付き合うわけにはいかない。この家の恥になるからな。ただ、あの女は、血筋は悪いし頭も弱いが、顔がいい。愛人になら、考えてやらんでもない」

アリザ「血筋が良くても、中身がクズよりも、よっぽどいいと思いますが」

アレク「ん? なんの話だ?」

アリザ「いえ、なんでもありません」

アレク「そうだ、私が帰ってくるまでに、そこの本棚の本を入れ替えておけ。私好みの本に、な」

アリザ「……漫画とエロ本ですか?」

アレク「違う! えーと、ほら、前に読んでただろ。あのさ、自分を変えろ、みたいなこと書いてたやつ」

アリザ「……自己啓発のことですか?」

アレク「そうそう。それそれ。私にピッタリだろ?」

アリザ「もくじのところで、挫折していたと記憶してますが?」

アレク「……あれは、私に合わなかったんだ。書いてることが子供っぽくてな。もっと、難しそうな本にしておけ」

アリザ「無駄遣いばかりしていたら、お小遣い減らされますよ」

アレク「うるさい! 今度はちゃんと読むからいいだろ!」

アリザ「……承知しました。お望みのままに」

アレク「うむ。……ふふふ。私の高貴さがわかれば、あの女だって、自分から付き合ってくださいって言ってくるはずさ」

アリザ「……稚拙だとバレるだけだと思いますが」

アレク「とにかく、やっておけよ」

アリザ「……承知しました」

ドアを開けて出ていくアレク。

場面転換。

ドアが開き、アレクとミーナが入って来る。

アレク「ここが私の部屋だ。遠慮なく入ってくれ」

ミーナ「うわー、広いお部屋だね」

アレク「そうか? 普通だろ。……いや、私には少し狭いくらいさ」

ミーナ「ふーん。あんまり広くても、持て余しちゃうと思うんだけどなー」

アレク「そ、そんなことないさ。色々と必要なんだよ」

ミーナ「あ、本棚にいっぱい、本が並んでる。すごーい!」

アレク「ふふん。まあ、書庫にはまだまだたくさんあるんだがな。とりあえず、今、読んでるものを置いてあるんだ」

ミーナ「あ、エドワード先生の本だ! これ、すっごく勉強になるよねー」

アレク「へ? あ、ああ……そうだな」

ミーナ「最強の才能とは努力を楽しめること、ってところ、すっごい感動しちゃった。そんな考え方あるんだなーって」

アレク「……そうだな。まあまあだよな」

ミーナ「エドワード先生の本は、どれが好き?」

アレク「あー、えーっと、その……エドワードの本は肌に合わなくって。あんまり読んでないんだ」

ミーナ「そうなんだ。残念。趣味が似てると思って嬉しかったんだけどなー」

アレク「……」

ミーナ「あ、こっちの本はアルフォンス先生の魔法科学の基礎だ! 結構、マニアックなのも読むんだね」

アレク「ああ……。まあ、見聞を広げたくてな。一通り、どんな本も読んでおこうと思って」

ミーナ「すごいねー。格好いい」

アレク「ふふふ。当然さ。それより、ミーナ。せっかく、私の部屋に来たんだ。一緒になにかやらないか? 例えば、そうだな。ゲームなら一通りそろっているが……」

ミーナ「それじゃ、チェスはある? 最近、ハマってるんだ」

アレク「ちぇ、ちぇす? ……あー、あれか。あれ、面白いよな。うんうん。けど、コントローラーが壊れてしまったんだ。残念だが、今は修理中だ」

ミーナ「ふーん。そうなんだ。それならしょうがないね」

アレク「ミーナは普段、何をして過ごしているんだ?」

ミーナ「ん? そうだなぁ……。習い事が多くて、終わったら疲れて寝ちゃうことが多いかな」

アレク「習い事? 何をしてるんだ?」

ミーナ「えっとね、ピアノとテニスとゴルフ。あとは、社交マナーとかも習ってるかな」

アレク「……へ、へー。そこそこ頑張ってるんだな。少し、ビックリしたぞ。けど、まあ、私に比べたらまだまだだけどな」

ミーナ「ええ? もっとたくさん、習い事してるの? すごーい!」

アレク「ふふふ。まあ、な。自分を磨くのは当然のことだ。将来はこの家を継ぐんだからな。それに相応しい人間になるには当然の努力さ」

ミーナ「ねえねえ、どんなこと習ってるの!? 面白いのある?」

アレク「え? あー、えーっと。色々だ。たくさんあり過ぎて、言えないな」

ミーナ「……そうなんだ。残念」

アレク「もちろん、習ってるのは、全部、トップクラスだぞ。プロ顔負けだって、いつも褒められてる」

ミーナ「中学生なのにプロと同じくらいって、凄いね! ……あれ? それじゃ、学校じゃいつも手を抜いてるってこと?」

アレク「あ、ああ、もちろんだ。能ある鷹は爪を隠すって言うだろ? 学校で本気出すと、妬む奴が出るからな」

ミーナ「そっかぁ。色々大変だね」

アレク「まあな。……そうだ、ミーナ。喉乾かないか? 私がいつも飲んでいる、至高の一杯をご馳走しよう」

ミーナ「ホント? ありがとう! じゃあ、お言葉に甘えて、貰おうかな」

アレク「よし! ……アリザ! アリザ、いるか!」

ドアが開き、アリザが入って来る。

アリザ「お呼びでしょうか?」

アレク「いつものを持ってこい。朝、私が飲んでいるものだ」

アリザ「今日は特製のジュースを用意しています。そちらにしたらどうですか?」

アレク「いいから、持ってこい。私がエレガントであることを見せるんだ」

アリザ「……承知しました」

ドアが閉まる。

ミーナ「なんだろー? 楽しみだなー」

アレク「ふふふ」

場面転換。

ガチャリとドアが開く。

アリザ「お待たせしました。どうぞ」

アレク「ああ、これこれ。私はいつも、朝にこれを飲んでいるんだ。もちろん、ブラックで。この一杯があれば、最高の朝を迎えられるんだ。だが、ミーナは無理しなくていいぞ。砂糖やミルクも用意してるからな」

ミーナ「それじゃ、いただきます」

ミーナがカップを持ち、すする。

ミーナ「美味しー」

アレク「え? あ、ホント? ミーナも……大人の味がわかるんだな」

ミーナ「本当に美味しいね、このココア」

アレク「……え?」

アリザ「……」

終わり。

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