【声劇台本】初めての友達

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
湊川 明希人(みながわ あきと)
近藤 浩一(こんどう こういち)
英治(えいじ)
愛菜(まな)
その他

■台本

子供の頃(小学1年生)の明希人。

明希人「違う! 僕じゃない! 僕は……」

場面転換。

中学生になった明希人。

明希人(N)「俺は友達だと思っていた人に裏切られた。……つまり、そいつにとって、俺は友達でもなんでもなかったんだ。……それ以来、俺は人を信用できなくなっていた」

場面転換。

教師が黒板にチョークで文字を書く音。

教師「転校生の湊川明希人くんだ。みんな、仲良くしてやってくれ」

明希人「……湊川です。よろしく」

愛菜「へー、結構格好いいんじゃない?」

女生徒「でも、なんか、冷たそうだよね」

明希人「……」

学校のチャイムの音。

愛菜「ねえ、明希人くん。5月に転校なんて珍しいね。もう一か月前だったら、みんなと一緒に入学だったのに」

明希人「……父親の仕事の関係で」

愛菜「ふーん……」

英治「よお、転校生。まだ友達いないんだろ? 俺が友達になってやるよ」

明希人「……悪いけど、友達いらないんだ」

英治「あ?」

明希人「……」

愛奈「ちょっと、英治! なに、脅してるのよ、止めなさいよ」

英治「うるせーぞ、愛奈。おい、転校生。俺が学校内を案内してやる。ついて来い」

明希人「……別に必要ない」

英治「ああ?」

浩一「ねえ、英治くん! 化学準備室ってどこだっけ? 先生にプリント持ってくるように言われててさ」

英治「おいおい、浩一。お前、一か月も経ってるのに、まだわからないのかよ?」

浩一「あははは……。なかなか、覚えられないんだよね」

英治「しゃーねーな。連れて行ってやるよ」

浩一「ありがとう。ねえ、湊川くんだっけ? 君も一緒に行かない?」

明希人「いや、俺は……」

浩一「三時間目に化学の授業があるから、覚えておいた方がいいよ」

明希人「……」

愛奈「うんうん。行こうよ。わからなくなって授業に遅刻したら大変だもん」

明希人「はあ……。わかった」

英治「おい! 浩一、何してる! 早く行くぞ!」

浩一「はーい」

明希人「……」

場面転換。

明希人、浩一、愛奈、英治が歩いている。

愛奈「あ、湊川くん。この渡り廊下の先が、化学準備室だよ」

明希人「……」

浩一「ここ、気を付けた方がいいよ。壁がないでしょ? よく、サッカーボールが飛んでくるんだ」

英治「なあ、愛奈。今度さ、サッカーの試合、見にいかね?」

愛奈「興味なーし」

英治「んだよ、ノリ悪いな」

浩一「あっ! 英治くん、足元、危ない!」

英治「ん?」

ヒューとサッカーボールが飛んでくる。

英治「……なんもねーぞ?」

浩一「あれ? おかしい……いたい!」

サッカーボールが浩一の顔に当たる。

英治「あっはっはっは。お前、運ねーな。今、俺が屈まなきゃ、ボール当たらなかったのにな」

浩一「えへへへ。ついてないなぁ。って、感じで危険だから、湊川くんも気を付けてね」

明希人「……ああ」

場面転換。

学校のチャイムの音。

教室内は騒がしい。

愛菜「ねえ、湊川くん。お昼、一緒に食べない?」

明希人「いや……」「

英治「湊川は俺たちと食べるんだよ、な?」

明希人「……別にそんな約束をした覚えないけど」

英治「今、決まったんだよ」

愛奈「ちょっと、英治。湊川くん、嫌がってるじゃない! むさ苦しい男よりも、私と一緒の方がいいよね?」

英治「いーや! 男通しで食べた方が楽しいね。ぶっちゃけ話とかできるし」

愛奈「うわー、増々、むさ苦しい。あんたのぶっちゃけ話なんか聞きたくないって」

英治「なんだとー!」

明希人「……」

英治「とにかく、お前は俺たちと食うんだよ、な? 浩一」

愛奈「……浩一くん、いないよ」

英治「あれ? あいつどこに行った? まあ、いいや。湊川行くぞ」

愛奈「湊川くんは、お昼はお弁当? それとも何か売店で買うの? 学校の焼きそばパン、すっごく美味しんだから」

英治「そうそう。すげー、美味しい……って、あー! しまった! 買いに行くの忘れてた! くそー、もう売り切れてるよ」

浩一「……英治くん。焼きそばパン、買い過ぎちゃった。一個いらない?」

英治「え? あ、お前、購買に行ってのか?」

浩一「うん。今日はパンにしようと思ってさ。でも、慌てて買ったから、買い過ぎちゃって」

英治「マジか! 相変わらず、お前はどん臭いな。しゃーねー。食ってやるよ」

浩一「ありがとう」

英治が焼きそばパンを受け取る。

明希人「おい、パン代、払ってやれよ」

英治「ああ?」

浩一「いいんだよ。別に買って来てって頼まれたものじゃないし、食べきれないからあげただけだから」

愛奈「浩一くん、ドジだよねー」

英治「そうだよ。こいつのミスを俺がフォローしてやってんの!」

浩一「えへへ。ありがとう、英治くん」

明希人「……」

場面転換。

階段を下りている、明希人、愛奈、英治、浩一。

愛奈「ねえねえ、湊川くんって休みってなにしてるの?」

明希人「……別になにも」

愛奈「それなら、今度の土曜日にさー」

英治「……ちっ!」

浩一「うわあああ!」

明希人「え?」

浩一と明希人がぶつかって、階段から転げ落ちる。

愛奈「きゃー、湊川くん!」

英治「おい、浩一、何やってんだよ……」

場面転換。

保健室。

ガラガラとドアが開き、浩一が入ってくる。

浩一「あ、あの……湊川くん。ごめん。僕が階段を踏み外したせいで、君に怪我させちゃって」

明希人「ありがとう」

浩一「え?」

明希人「わざと、だったんだろ? 階段踏み外して、俺にぶつかったの」

浩一「い、いや……その……」

明希人「性善説と性悪説って知ってるか?」

浩一「え? いや、ううん。知らない」

明希人「中国の孟子(もうし)って人が、人間が元々は善の存在だって言ってたのと、それを否定する、荀子(じゅんし)って人が人間が元々は悪だっていう話だよ」

浩一「……?」

明希人「俺さ。人間が元々は悪だって方の意見に賛成だったんだ。人なんて信用できないって」

浩一「どうして?」

明希人「小学校の頃、俺は親友だと思っていた奴に騙された。……いや、罪を擦り付けられた。校長の銅像にさ、落書きしようって言われたんだ。そいつにさ。俺は面白そうだからって、話に乗った……。けど、すぐに見つかって怒られたんだ。そしたら、そいつが、俺に誘われたって言ったんだ」

浩一「……そんな」

明希人「俺は怒られたことよりも、そいつに裏切られたことがショックだった。そして、気付いたんだよ。人間てやつは嘘ばっかりだって。自分のためなら、平気でうそをつけるって」

浩一「……」

明希人「けど、お前は違った」

浩一「え?」

明希人「お前は人の為に嘘を付く」

浩一「そ、そんなこと……」

明希人「あの、英治ってやつが学校を案内するって言ってきたときのこと。俺が断り続けてたら、英治ってやつと喧嘩になってた。だから、お前は、自分が化学準備室の場所を忘れたって嘘をついて丸く収めようとした。自分が笑われることになっても」

浩一「あれは、本当に忘れたんだよ」

明希人「あのとき、プリントを持っていくって言ってたけど、そんなプリント持ってなかっただろ」

浩一「あっ!」

明希人「渡り廊下のときもそうだろ。ボールが飛んできてたのも英治を屈めさせるために、足元が危ないって言ってな」

浩一「……」

明希人「パンのときもそうだ。……そして、階段も」

浩一「……いや、あれは」

明希人「あのままだったら、俺は英治に突き落とされてた。そうなる前に、お前は自分が足を踏み外したってことで、俺にぶつかったんだ。自分が罪をかぶるために」

浩一「……」

明希人「俺さ。驚いたんだ。こんなやつがいるんだって」

浩一「え?」

明希人「他人の為に、嘘を付ける奴がいるなんてさ」

浩一「……」

明希人「だから、もう一度だけ、信じてみる気になったんだ。性善説ってやつを」

浩一「……湊川くん」

明希人「なあ、浩一。俺と友達になってくれないか?」

浩一「……僕と?」

明希人「ああ。ただ、友達になったら、嘘は一切なしだ。たとえ、俺をかばうためでも、だ」

浩一「う、うん……」

明希人「じゃあ、改めて。湊川明希人だ」

浩一「……初めまして。近藤浩一だよ。よろしく、明希人くん」

明希人「ああ。よろしくな、浩一」

明希人(N)「こうして、俺は初めての友達が出来たのだった」

終わり。

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