【声劇台本】死霊巫女‐ネクロマンサー‐

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス

■キャスト
セシル
エリク
イザベラ
兵士

■台本

セシル「私、絶対、おばあ様みたいな立派なネクロマンサーになってみせるわ」

エリク「けど、セシル。ネクロマンサーって、結構酷い能力じゃねーか? 死んでからも働かさせるなんてさ」

セシル「何言ってるのよ、エリク。死んでる人が戦ってくれるおかげで、死ぬ人が減らせるのよ! 立派な能力じゃない! 私はネクロマンサーになって、この国を守ってみせるんだから」

エリク「はいはい。それじゃ、俺はお前が立派なネクロマンサーになるまで守ってやるよ」

セシル(N)「祖母は神帝王国(せんていおうこく)で一番のネクロマンサーだ。救国の女神と称えられていた」

イザベラ「セシル。お前に宿るマナは、私より上……いや、きっと歴代で一番だ。セシル、お前が私の力を受け継ぐことになる。……立派なネクロマンサーになるんだよ」

セシル「うん! 任せておいて!」

セシル(N)「祖母の周りにはいつも、護衛の兵士がいて、あまり長くは話せなかったけれど、祖母と話す時間は、私にとって宝物のような時間だった」

場面転換。

バンと、ドアが開き、エリクが入って来る。

エリク「セシル、来てくれ。……継承の儀が行われる」

セシル「……う、うん。わかった。……覚悟してたことだけど、怖いね」

エリク「大丈夫だ。儀式は絶対、成功するさ」

セシル「……ううん。違うの。儀式のことよりも、もう、おばあ様と話せないと思うと」

エリク「……行こう。イザベラ様が待ってる」

セシル「うん」

場面転換。

イザベラ「……セシル。ごめんなさいね。こんな重荷をあなたに背負わせることになるなんて」

セシル「ううん。ネクロマンサーになることは、ずっと夢に見てきたことだもの」

イザベラ「……それでは、継承の儀を行います。セシルとエリク以外は、部屋から出て行ってください」

兵士「はっ!」

兵士たちが部屋から出ていく。

セシル(N)「継承の儀。それは死ぬ前にネクロマンサーの術を継承させる儀式のことだ。稀にネクロマンサーの能力を持って生まれてくる女性がいるが、そのほとんどは、継承の儀によって継承される。ネクロマンサーの能力は子供に受け継がれることが多いが、ほとんどのネクロマンサーは子供を産むことはなく、生涯、独身を貫く人がほとんどらしい。そのため、このような継承の儀が生み出された」

イザベラ「……エリク」

エリク「はい」

イザベラ「セシルを連れて、逃げてくれないかい?」

エリク「え?」

セシル「ちょ、ちょっと待って! どうして? だって継承は……」

イザベラ「ネクロマンサーは呪われた能力だ。……本当はお前に、継いで欲しくない」

セシル「……そんな」

エリク「イザベラ様。心配しないでください。セシルは、護り手である私が、絶対に守り通します」

イザベラ「護り手……か。そのシステムこそが、ネクロマンサーが呪われているという所以だよ」

セシル「……どういうこと?」

イザベラ「いいかい……。うっ!」

セシル「おばあ様!」

イザベラ「やはり、言うことは許されないようね。……セシル。私の手を握りなさい。継承します」

セシル「はい」

イザベラ「セシル、エリク……。今度こそ、幸せになってほしかった……」

エリク「今度こそ……?」

セシル(N)「おばあ様の手から、私の中に力が入ってくる感覚と同時に、おばあ様の命は消えてしまった……」

場面転換。

セシル「ねえ、エリク。おばあ様が言っていた、あの言葉、どう思う?」

エリク「ネクロマンサーを継いで欲しくなかった話のことか?」

セシル「うん。小さい頃はずっと、私は優秀なネクロマンサーになれると言ってくれたのに」

エリク「……もしかして、だけど。イザベラ様の近くにはいつも兵士がいただろ?」

セシル「護衛の人たちのこと?」

エリク「……あの護衛の人たちは王の近衛兵だろ? だから、イザベラ様は本心が癒えなかったのかも」

セシル「……じゃあ、あの人たちは護衛じゃなくて、監視……だったってこと?」

エリク「そうかもしれないって話だ。あとは、ネクロマンサーは戦場に出るからな。純粋にセシルが心配だったのかもしれない」

セシル「……」

エリク「心配するな。お前は俺が守ってやる。俺はお前の護り手だからな」

セシル(N)「護り手。それはネクロマンサーの候補となる少女には、必ず護り手と呼ばれる専任の護衛が付くことになる。つきっきりで護衛するということもあり、年齢が近い人が選ばれることが多い」

セシル「ねえ、エリク。ねえ、エリク。私を守ってくれるのは、護り手、だから?」

エリク「え? そ、それ以外、何があるんだよ?」

セシル「そうだよね。ごめん。変なこと聞いて」

エリク「……」

場面転換。

戦場。遠くから、怒号や悲鳴、乱戦の音が聞こえてくる。

エリクがセシルを連れて走る。

セシル「はあ、はあ、はあ……エリク……」

エリク「セシル。頑張れ。もう少しで戦場を抜けられる」

セシル「でも、まだ、みんな戦ってる……」

エリク「……今、お前が残ったところで、足でまといだ」

セシル「どうして、術が発動しないの? おばあ様から能力を継承されたはずだし、ここは戦場だから、死霊だっているはずよ」

エリク「……ネクロマンサーの能力に関しては、まだまだ分からないことが多い。ネクロマンサーの半数以上が初陣で、能力が発動できずに死ぬと言われている。何かしら、能力が発動するのに条件が必要なのかもしれない」

セシル「どうして? どうして、発動しないの?」

エリク「今は逃げることだけ、考えろ」

そのとき、矢が飛んでくる音がする。

エリク「うっ!」

エリクに刺さり、エリクが倒れる。

セシル「エリク!」

兵士1「よし! 当たった! おい、みんな来てくれ!」

エリク「く、くそ……」

数人の兵士に囲まれる。

セシル「エリク……」

兵士2「……女。ってことは、お前、ネクロマンサーか。悪いが、ここで確実に死んでもらう」

エリク「俺が食い止める。セシル、お前は逃げろ」

セシル「いや! 死ぬときは一緒よ」

エリク「バカ言うな! お前のために死ぬのが護り手の俺の役目だ」

セシル「いやよ! 絶対嫌!」

兵士2「うおおお!」

エリク「くっ!」

兵士とエリクが斬り結ぶ。

セシル「どうして? おばあ様……どうして、発動しないの? お願い! 発動して! 死んだ魂なら、誰だっていいから、力を貸して!」

兵士1「くそ、能力を発動させる気だ! 先に、ネクロマンサーを殺せ!」

エリク「くそ、させるか!」

セシル「どうして! どうして、発動しないのよ!」

エリク「セシル、逃げてくれ!」

兵士1「うおおおお!」

セシル「いやあああああ!」

エリクが兵士たちに剣で貫かれる。

エリク「ぐ……」

倒れ込むエリクに駆け寄るセシル。

セシル「エリク! いや! 死なないで」

エリク「……にげ……ろ……」

セシル「いや! いや! いやーー!」

エリク「……ごめん……お前を……守る約束……果たせな……か……」

セシル「エリクーーー!」

兵士1「女。悪いな。死んでもらうぞ。はあああ!」

兵士がセシルに向かって剣を振り下ろすが、ギンという鈍い音がして、弾かれる。

兵士1「なっ、なんだ! 女の周りに……」

兵士2「くそ、能力が発動したのか」

セシル「……エリク」

エリク「……セ……シ……ル」

セシル「そっか……。そういうこと……だったんだね」

兵士1「うおおお!」

ザシュっと斬る音。

兵士1「ぐおっ!」

兵士2「ぐあっ!」

セシル「……」

エリク「セシル……行こう」

セシル「うん」

セシル(N)「全てを理解した。ネクロマンサーはどんな死霊でも操れるわけではない。心を結んだ人の……愛する人の死霊のみ、操ることができる。護り手は、ネクロマンサーを守るための存在ではない。心を通わせ、愛するために用意された存在。……おばあ様。確かに、ネクロマンサーは呪われた能力だね。でも、私は歩き続けるよ。この呪われた道を……」

終わり。

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