【声劇台本】Team
- 2021.04.10
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
萩野 優成(はぎの ゆうせい)
高山 健吾(たかやま けんご)
課長
その他
■台本
警察署内。刑事課。
優成「……」
健吾「……(寝息)」
電話のコール音。
ガチャリと電話を取る音。
課長「はい、刑事課。……うん。うん、わかった。すぐに人を向かせる」
ガチャリと電話を切る。
課長「萩野!」
優成「はい!」
呼ばれて、課長のところまで行く優成。
課長「丸下デパート内で窃盗事件だ。すぐに行ってくれ」
優成「わかりました!」
机のところへ歩く優成。
健吾の体を揺らし。
優成「先輩! 先輩! 起きてください!」
健吾「あん?」
優成「事件です。行きますよ」
健吾「パス。お前だけで行け」
優成「いや、必ずチームで動くって決まりじゃないですか」
健吾「いいか、優成。チームで動くというのは必ずしも一緒に動くという意味じゃない。チームっていうのは一つの組織だ。つまり、役割分担で動くってわけだ」
優成「……役割分担、ですか?」
健吾「そう。新人のお前は被害者から話を聞いてくるという役割ってわけだ」
優成「じゃあ、先輩は?」
健吾「ここで、待機する役割だな」
優成「そんな……」
課長「高山、暇そうだな。倉庫の片づけやるか?」
健吾「よし、優成、行くぞ」
立ち上がる健吾。
場面転換。
デパート内。
優成「ありがとうございました」
優成が健吾の方へ走り寄る。
優成「先輩、話聞いてきました」
健吾「おう。それで?」
優成「手口からして、例の窃盗団だと思います」
健吾「(欠伸しながら)なるほどな」
優成「どうします?」
健吾「何がだ?」
優成「捜査ですよ。せっかく、あっちが尻尾を出したんですから、このチャンスを逃す手はありません」
健吾「そうだな。頑張れ」
優成「いや、頑張れって……。先輩は捜査しないんですか?」
健吾「やるよ。頭の中でな」
優成「……」
健吾「じゃあ、俺は署に帰るからな」
優成「待ってください!」
健吾「あん?」
優成「捜査、俺一人でやるんで、せめて指示をお願いします」
健吾「指示?」
優成「はい。どういうふうに捜査するとかの指示です」
健吾「んなこと、自分で考えろ」
優成「ちょ、ちょっと待ってください! 無理ですよ。俺、まだ新人ですから」
健吾「あのなあ。……まあ、いい。じゃあ、こういうとき、お前はどうすればいいと思う?」
優成「えっと……。とりあえず、目撃者がいないか聞き込み、ですかね?」
健吾「よし、頑張れ」
優成「え? いや、いいんですか? それで?」
健吾「いいもなにも、お前が出した案だろ? それをやりゃいいだろうが」
優成「……」
健吾「じゃあな」
健吾が歩き去っていく。
優成「はあ……」
場面転換。
警察署。刑事課。
ガチャリとドアが開き、優成が入ってくる。
優成「……戻りました」
健吾「おう、ご苦労さん。いい話聞けたか?」
優成「……」
健吾「メモ寄越せ」
優成「え?」
健吾「聞いた話、メモしたんだろ?」
優成「あ、はい。ですが、有力な情報は」
健吾「いいから、寄越せ」
優成「わかりました」
優成が健吾にメモ帳を渡す。
優成「どうするんですか、そのメモ」
健吾「課長に詰められた時の、仕事してた証明書に使う」
優成「ず、ずるい……」
健吾「代わりに、これをやる」
優成「ディスク……ですか?」
健吾「防犯カメラの映像」
優成「あっ!」
健吾「俺はこれから仮眠取るから、チェックしておけよ」
優成「……」
場面転換。
ボタンをポチポチ押している優成。
後ろでドアが開く音。
課長「おう、萩野、まだ残ってたのか。ん? 防犯カメラの映像か?」
優成「はい」
課長「まあ、地味な作業だが、大事なことだ。頑張れよ」
優成「あ、あの課長。その……チーム、変えて貰えませんか?」
課長「……高山と組むのは嫌か?」
優成「きっと、俺、先輩に嫌われているんだと思います。この防犯カメラの映像の件だって、最初から言ってくれれば、5時間も聞き込みしなくて済みましたし。それに何一つ、教えてもくれないんです。俺、このままだと成長できない気がして……」
課長「萩野。お前には期待している。……だから、高山と組ませたんだ」
優成「え?」
課長「大丈夫。お前はちゃんと、高山から大事なものを教わってるよ」
優成「……」
場面転換。
優成が寝息を立てている。
バンと、ドアが開き、健吾が入ってくる。
優成「はっ! あ、せ、先輩。おはようございます」
健吾「どうだ? 捜査の進展あったか?」
優成「はい……。防犯カメラに窃盗の場面が写ってました。ここです。これで犯人の顔がわかりました」
健吾「ふむ。で? 次はどうする?」
優成「えっと……。顔が割れたので、張り込みして現行犯逮捕というのはどうでしょうか?」
健吾「じゃあ、それで」
優成「いいんですか!? 本当に?」
健吾「いいもなにも、お前が考えた作戦だろ」
優成「……つまり、失敗しても俺の責任ってわけですね」
健吾「そういうことだな」
優成「はあ……」
場面転換。
駅構内。
優成「来ました! あいつです」
健吾「ああ……」
優成「盗った! 盗りました! 捕まえます!」
優成が走り出そうとする。
男1「くそっ!」
男が逃げ出す。
優成「え? なんで、バレたんだ? おい、待て! 警察だ!」
優成が男を追って走る。
優成「止まれ! 止まれよ!」
男の足音が遠くなっていく。
優成「くそっ! なんでだよ!」
優成が壁を蹴る。
場面転換。
トボトボと歩いてくる優成。
優成「すいません、先輩。逃げられました」
健吾「ま、しゃーないさ」
男2「くそ、離せよ!」
優成「先輩、その男は?」
健吾「共犯だ。これから、こいつを締め上げて、逃げた奴を捕まえる」
優成「……なんなんですか!」
健吾「ん?」
優成「先輩は最初から共犯がいたって知ってたんですよね? 俺、馬鹿みたいじゃないですか! 勝手に空回りして、失敗して」
健吾「優成。お前が聞き込みしてくれたメモと、お前が防犯カメラから犯行の場面を見つけたから、俺は共犯の可能性に気づけたんだ」
優成「え?」
健吾「お前の捜査があったから、事件が解決した」
優成「……」
健吾「お前は足を使って調べる。俺は頭を使う。お前が失敗しても、俺がフォローする。それが役割分担だ。俺たちはチームなんだからな」
優成「先輩……」
優成(N)「課長の言った通りだ。先輩は俺に色々なことを教えてくれていた。自分で考えること。考えたことを実行すること。そして、失敗から学び取ること。確かに先輩はやる気がなくて、よく仕事をサボる。でも、俺は先輩とチームを組めたことを誇りに思う」
終わり。
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