鍵谷シナリオブログ

【声劇台本】星の見える丘で

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■概要
人数:1人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブコメ

■キャスト
達也(たつや)

■関連小説
この作品は小説『トーテムポールと学校の七不思議』の番外編の話になります。
<トーテムポールと学校の七不思議>
ただ、この作品は独立したストーリーなので、小説を読んでいなくても問題ない構成になっています。

■関連シナリオ
〈町内の都市伝説〉 〈X’masミッション・イン・ポッシブル〉 〈古き良き時代〉

■台本

達也(N)「満天の星が輝いている。寝転がって見ていると、まるで宇宙の中に漂っている気分になる」

達也(N)「この場所は中学のときに偶然見つけてから、誰にも教えていない。何かあったとき……特別なときに使おうと思っていたからだ」

達也(N)「つまり……その……告白するときは、ここでしようと決めていた。明日は卒業式。高校、最後の日……」

達也(N)「もしかしたら明日で会うのが最後になるかもしれない。だから、この日に告白するって決めていた」

達也(N)「おかげで、昨日からほとんど寝れてない。まあ、眠くはないけど。今も、心臓が口から出そうなくらいドクドクと音を立てている」

達也(N)「……うう、やっぱり緊張するな。いざ、告白するってなると……。断られたらと思うと、凄い怖い」

達也(N)「……って、あれ? ちょっと待てよ。もし、断られたら明日の卒業式、地獄じゃないのか?」

達也(N)「え? え? え? 待って待って。告白するのは卒業式の日で良かったんじゃないか? っていうか、卒業式にするべきだろ。うわー。何やってんだよ。ヤバいヤバい! どうする? 誤魔化すか?

達也(N)「いや、待て待て。もし、明日にするとして、だ。もう一回、ここに連れてくるってことか? それはどうなんだ? さすがに二日連続って手抜き感あるよな」

達也(N)「絶対、告白より、なんで昨日言わないのよって突っ込まれるな」

達也(N)「そんなの雰囲気ぶち壊しだ。……しかも怖いのが、こいつなら平気で言いそうなところだよな」

達也(N)「……うう、ここは腹をくくって言うしかない。明日、雨とか降っても最悪だし」

達也(N)「……って、そうだ。そうだよ。もし、今日、雨降ってたらどうするつもりだったんだ?」

達也(N)「うわー。三ヶ月前から決めてたのに、ガバガバだよ。あー、よかった。今日は晴れてて。これは、もう神様や妖怪たちが言えって言ってくれてるようなもんだよな」

達也(N)「……妖怪、か。思えば、この3年間は妖怪たちに振り回された3年だった。最初は新聞部をなんとか存続させたくて、学校の七不思議を調べ始めたんだよな」

達也(N)「何度も学校に泊まって……空振りに終わったこともあれば、すげー怖い思いをしたこともあった」

達也(N)「……けど、みんながいてくれたおかげで、楽しかった。……本当は新聞部自体にそこまで執着してなかったんだ。みんなと一緒にいられる場所が欲しかった」達也(N)「……特に、お前と。部室に行けば、みんながいた。もちろん、お前もいて……。毎日が楽しかった。あの放課後の時間が何よりの大切な思い出だ」

達也(N)「……それが、明日の卒業式で終わる。不思議だよな。少し前までは、この楽しい時間がずっと続くと思ってた。終わるだなんて思いもしなかった」

達也(N)「……いや、終わることを考えたくなかったんだと思う。考えてしまうと、どうしても悲しくなって……気が狂いそうになるから」

達也(N)「……けど、もうそんなことは言ってられない。始まりがあれば、終わりがある。それは当たり前のことだ。受け入れて前に進まなければならない」

達也(N)「だから、みんなとの思い出は、ずっと心の中に残しておく」

達也(N)「……きっと、何年、何十年経っても色あせることなく思い出せるはずだ。この3年間は本当に楽しかった」

達也(N)「もし、もう一度、時間を巻き戻せるとしても、同じ時間を過ごすことに、少しも迷いはない。それくらい充実した毎日だった。だから、満足して卒業できる。前へと進める」

達也(N)「……けど、一つだけ、どうしても耐えられないことがある」

達也(N)「……それは、こいつと別れること。もう会えなくなるなんて、嫌だ」

達也(N)「ずっと一緒にいたい。高校を卒業しても、大学に行っても……就職しても……死ぬ時まで……ずっと」

達也(N)「だから決めた。告白するって」

達也(N)「もちろん、フラれる可能性だってある。……いや、その可能性の方が高いかもしれない。それでも、やっぱり、この想いを伝えたいんだ」

達也(N)「……例え、断られるとしても、この想いを知ってもらいたい。ずっと、好きだったと、大好きだって」

達也(N)「今も、これからも……。だからちゃんと言う」

達也(N)「……よし! 覚悟が決まった。行くぞ!」

達也「なあ……布姫(ぬのめ)。聞いて欲しいことがあるんだ」

達也「ずっと、思っていたことがあったんだ。これからも隣にいて欲しい。隣でずっと一緒にバカなことを言い合いたい」

達也(N)「……好きだ。大好きだ。世界中の誰よりも、一番、お前のことが好きだ。今までも……これからも」

達也「だから……付き合ってくれないか?」

達也「……」

達也「……布姫?」

達也「お、おい。聞いてるのか……って、寝てんのかよ!」

終わり。

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