【声劇台本】嘘の代償
- 2021.05.07
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
優希(ゆうき)
一真(かずま)
信也(しんや)
その他
■台本
4人が通学路を歩いている。
優希「……はあ、はあ、はあ」
信也「おい、優希。遅いぞ、早く来い」
優希「……でも、カバン4つ持つのはきついよ」
信也「じゃあ、1つ置いてけよ。お前の!」
ぎゃはははと信也と取り巻き二人が笑う。
優希「……」
一真「うおおおおお!」
一真が走ってきてジャンプし、信也に飛び蹴りを入れる。
一真「おりゃー!」
信也「ぐおっ!」
少年1「信也くん!」
信也「お前は……転校生。なにすんだ!」
一真「3人で1人をイジメるなんて、情けねえ話だ」
信也「イジメじゃねえよ。だって、俺たち優希の友達なんだ。優希が進んで俺たちのカバンを持ってくれてるんだよ。だから、イジメじゃねえ。そうだよな、優希?」
優希「う、うん……」
信也「ってわけだ。関係ない奴は……」
一真「おらあっ!」
信也「ぐあっ!」
一真が信也の顎を打ち抜き、信也が倒れる。
信也「何しやがる! イジメじゃねえって言ってるだろ!」
一真「関係ねえよ。イラついたから殴る」
信也「く、くそ! お前ら行くぞ!」
信也たちが逃げていく。
優希「……あ、あの」
一真「俺は一真。俺と友達になってくれよ」
優希「え? あ、う、うん……」
一真「よし、これで今日から俺と優希は友達だ」
優希「……友達」
一真「それより、優希! お前、なんで嘘付いた?」
優希「え?」
一真「ほら、あいつらと友達だって。自分からカバン持ってるって、頷いただろ」
優希「ああ、うん。違うって言ったら、殴られるから……」
一真「……なあ、優希。一つ、俺と約束してくれ。俺には嘘は付くな」
優希「え?」
一真「俺たち友達だろ? 友達には嘘を付いて欲しくないんだ」
優希「うん。わかった」
一真「もし、今度、嘘を付いたら友達をやめる! いいな?」
優希「わかった」
場面転換。
学校のチャイム。
一真「優希。今日も屋上で飯食おうぜ」
優希「うん!」
場面転換。
一真「いやー、やっぱ、屋上は最高だな」
優希「すごく太陽が近い感じがするね」
一真「なあ、優希。お前って、なんか夢とかあるのか?」
優希「夢? うーん。ないかな」
一真「俺はさ、将来、警察官になりたいんだ。……それで、弱い人を暴力から守る」
優希「へえ。一真くんは凄いね」
一真「……いや、お前の方が凄いって俺は思う」
優希「え?」
一真「お前さ。あの信也って奴らにイジメられてても、絶対に泣かなかったよな。……正直、俺があの立場だったら、泣いてたかもしれない」
優希「あれは意地……かな」
一真「意地?」
優希「イジメられても、僕は泣かないって決めてたんだ」
一真「痛くても、嫌な思いしてもか?」
優希「それくらいなら、耐えられるよ」
一真「お前は強いなぁ」
優希「ええ!? 僕なんて弱いよ」
一真「気づいてないのが、たちが悪い」
場面転換。
体育の時間。生徒たちがグラウンドを走る。
教師のピッという笛が響く。
教師「次、優希!」
優希「はい!」
ピッ!と笛が鳴る。
信也「おらっ!」
優希「うわっ!」
足を引っかけられて転ぶ優希。
優希「いててて……」
教師「どうした?」
信也「先生、優希くんが転んで、ひざを擦りむいたみたです」
教師「そうか……誰か、保健室に連れて行ってくれ」
一真「先生、俺が行くよ」
教師「おお、そうか。頼む」
一真「優希、行こうぜ」
優希「う、うん……」
一真と優希が歩いて行く。
場面転換。
教室内でホームルームをしている。
教師「……今日、美濃下の財布からお金が盗まれた。おそらく、体育の時間だ」
教室がざわざわする。
信也「先生! 体育の時、2人ほど抜けていますよね?」
さらに教室内がざわざわする。
一真「俺たちはずっと保健室にいた」
信也「どうだか」
教師「……一真が授業から抜けたのはほんの5分くらいだ。保健室からグランドを往復したくらいの時間だ。教室に行ってる時間はないはずだ」
信也「保健室に行かずに教室に行ったんだ」
教師「なあ、優希。お前、ずっと一真と一緒にいて、保健室に行ったんだよな?」
優希「……」
教師「どうなんだ?」
優希「……僕、一人でした」
一真「え?」
優希「途中で一真くんと離れて一人でした」
一真「お前っ!」
信也「くくくく。じゃあ、一真が盗んだってことで決定だな」
教師「一真。あとで話を聞かせてくれ」
優希「待ってください!」
教師「……どうした、優希」
優希「僕です」
一真「え?」
優希「僕が盗みました」
場面転換。
ガラガラとドアが開き、優希が出てくる。
優希「……失礼しました」
一真「おい、優希」
優希「……」
優希が歩き出し、一真も歩き出す。
一真「なんで、あんな嘘を付いた? 俺を助けるためか?」
優希「……」
一真「先生に言いに行こう。大丈夫だ、俺が犯人を見つけてやる」
優希「……関係のない君に、そこまでしてもらう理由はない」
一真「俺たちは友達だろ?」
優希「もう、友達じゃない」
一真「な、何を言ってるんだ?」
優希「僕は君に嘘を付いた」
一真「……あっ」
回想の台詞。
一真「もし、今度、嘘を付いたら友達をやめる! いいな?」
一真「いや、あれは……」
優希「どんな理由があっても、僕は君に嘘を付いた。だから、もう僕たちは友達じゃない!」
一真「……本気で言ってるのか?」
優希「うん」
一真「……そっか。わかった。もう俺たちは友達じゃない。……じゃあな」
優希「……」
一真が歩き去っていく。
優希「……う、うう……。うわーーん!」
泣き始める優希。
場面転換。
歩いている優希。そこに信也たちが来る。
信也「よお、犯罪者の優希くん」
優希「……」
信也「元々、友達いなかったのに、今回のことで決定的だったな。誰もお前に近づかない」
優希「……」
信也「けど、心配すんな。俺たちがいる。俺たちは友達だろ? また一緒に遊ぼうぜ」
優希「……違う」
信也「あん?」
優希「お前たちなんか、友達じゃない!」
信也「へー! じゃあ、殴ってもいいんだな? 友達じゃないから全力で」
優希「うわっ!」
バキっと信也が優希を殴る。
信也「なあ、言い間違いだろ? 俺たち、友達だよな?」
優希「……何度も言わせないで。お前たちなんか友達じゃない!」
信也「ほー。そっかそっか。じゃあ……」
一真「うおおおおお!」
一真が走ってきてジャンプし、信也に飛び蹴りを入れる。
一真「おりゃー!」
信也「ぐおっ!」
一真「……お前ら、消えろ」
信也「なんで、お前が……。くそ、いくぞ」
信也たちが逃げていく。
優希「……ど、どうして?」
一真「俺は一真」
優希「……え?」
一真「俺と友達になってくれよ」
優希「……う、うん!」
終わり。
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