鍵谷シナリオブログ

【声劇台本】変わらない思い

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブストーリー

■キャスト
達也(たつや)
布姫(ぬのめ)
水麗(すみれ)
その他

■関連小説
この作品は小説『トーテムポールと学校の七不思議』の番外編の話になります。
<トーテムポールと学校の七不思議>
ただし、この作品は独立したストーリーなので、小説を読んでいなくても問題ない構成になっています。

■関連シナリオ
〈町内の都市伝説〉 〈X’masミッション・イン・ポッシブル〉 〈古き良き時代〉 
〈星の見える丘で〉 〈丘から星を見上げて〉

■台本

布姫「達也くん。私達、別れましょう」

達也「……な、なんでだよ、布姫?」

布姫「違うわね。正確に言うと、お互い、フリーに戻りましょう」

達也「いや、同じ意味だろ。……え? え?え? 僕、なんか気に障ること、したか? それなら謝る」

布姫「そういうことじゃないわ。お互い、大学生になったわけで、これからは、色々と人との出会いが多くなるでしょう?」

達也「まあ……そうだな。で、それがどうして別れることになるんだよ?」

布姫「もし、大学でいい人が現れたらどう? 付き合った状態であれば、浮気になってしまうわ」

達也「……つまり、大学に僕よりもいい男がいるかもしれないってことか? まあ、否定はしないけど……」

布姫「それはお互い様よ。達也くんだって、私よりもいい女が出てくるかもしれないでしょ?」

達也「ぼ、僕は!」

布姫「別に好きな人が出来たってわけじゃないのよ。一旦、高校時代の関係に戻るだけ」

達也「け、けど……」

布姫「うじうじしないで。私の中の、達也くんのポイントが下がるわよ」

達也「うっ……」

場面転換。

喫茶店。

達也と水麗が向かい合って座っている。

達也「水麗、どう思う?」

水麗「おやおや。そんな相談を、振った相手にしますか」

達也「いや、別に振ったわけじゃ……」

水麗「にゃはははは。冗談だって、冗談! 水麗ちゃんとしては、嬉しい限りだよ。卒業しても、こうして達(た)っちんに会えてさ」

達也「僕も嬉しいよ」

水麗「えいっ!」

パチンと水麗が達也にデコピンする。

達也「いてっ!」

水麗「そこ! 無駄に、ドキドキさせない! ったく、相変わらず、油断も隙も無いよ。ホント、天然のジゴロ体質だよ、ちみは」

達也「ん? な、なんだかわからんが、すまん」

水麗「にしても、布布(ぬのぬの)がそんなことをねー」」

達也「どう思う?」

水麗「まあ、布布のことだから、なんか裏がありそうだけどねー」

達也「試されてる……とか?」

水麗「そんなことするキャラじゃないと思うんだけどなー」

達也「うーん……。じゃあ、何が目的だ?」

水麗「まあ、無理に聞かない方がいいと思うし、変に探ったら逆効果かな」

達也「だよな。って、ことで、水麗。頼みがある」

水麗「なに?」

達也「どういう男がモテるか教えてくれ」

水麗「ほうほう。この機に乗り換えると? しかも、それを私に言うと? さすがにイラっとしちゃったなー。玉一個潰していい?」

達也「何気に怖いこと言うな! 違う違う! そうじゃなくって! 一旦、友達に戻ったってわけだろ? なら、もう一回、僕のことを好きになってもらえばいいんじゃないかって思ってさ」

水麗「なるほど……。今度はノロケっすか。水麗ちゃんの精神、ガリガリ削られてくんですけど」

達也「別に、ノロケなんかじゃ! ……頼む! こういうことは女子に聞いた方がいいと思うし、相談できるのは水麗しかいないだ」

水麗「んー。モテる方法ねー」

達也「やっぱり、オシャレとか、格好いい趣味を持つとか? 勉強はもちろん頑張るとして、運動は……今更って感じだけど……」

水麗「布布は、そんな表面とか見ないと思うけどな」

達也「え?」

水麗「強いて言うなら、変わらないことかな」

達也「変わらないこと?」

水麗「そ。達っちんは、達っちんだからこそ、布布は好きになったと思うよ」

達也「けど、それじゃ……」

水麗「あと、私が助言できるとしたら、布布のことをずっと好きでいること、かな」

達也「それは余裕だ」

水麗「ごちそうさまでした」

場面転換。

町を歩く達也。

達也「うーん。あんまり、ためになる助言はもらえなかったな……ん?」

ピタリと立ち止まる達也。

達也「あれは……布姫? 隣にいるのは……確か、ゼミの先輩とか言ってたやつか?」

歩き出す達也。

達也「いやいや。今は友達だからな。僕に文句が言えるわけがない。ここは立ち去るのが吉……」

ピタリと立ち止まる達也。

達也「くそ!」

走り出す達也。

場面転換。

男と布姫が並んで歩いている。

男「ってわけだよ」

布姫「ふふ。そうなんですね」

その後ろをつけている達也。

達也「くそ、これじゃ完璧にストーカだよ。……って、危ない、立ち止まった!」

慌てて身を隠す達也。

達也「あんなところで立ち止まって、なにやって……って、あそこはホテルじゃねーか。……嘘だろ? ……さすがにここからじゃ何を話してるのか、聞こえねえ」

達也のつばを飲み込む音。

達也「友達の僕が口を出せる立場じゃない……。けど……。ああ、くそ!」

走り出す達也。

達也「布姫!」

布姫「え? 達也くん。どうして?」

男「ああ、彼がその、達也くんか」

達也「お前、何してるんだよ!」

布姫「いや、その……」

男「布姫ちゃんから聞いてるよ。君、彼氏じゃないんでしょ?」

達也「うっ!」

男「なら、口出しするなよ。これは俺と布姫ちゃんの話だ」

達也「嫌だ!」

男「あん?」

達也「確かに、僕は彼氏じゃない。だけど、布姫のことが好きだ。だから、布姫のことは渡さない!」

男「おいおい。随分と自分勝手な話だな。布姫ちゃんの気持ちを考えないのか?」

達也「自分勝手なのはわかってる。けど、それでも、布姫のことは渡さない!」

布姫「達也くん……」

男「ぷっ! あはははは! だってさ、布姫ちゃん。だから言ったでしょ。心配しすぎだって」

達也「……え?」

男「君が後をつけていたのは知ってたからさ、ちょっとカマをかけてみたったわけ」

達也「……どういうこと……ですか?」

男「今日は、布姫ちゃんから相談を受けてたんだよ。どうやったら、男にモテるかってね」

達也「……へ?」

男「さてと、俺は帰るよ。お邪魔みたいだしね。あとは自分の口で説明してあげなよ。じゃあね」

男が立ち去っていく。

達也「……布姫?」

布姫「ごめんなさい!」

達也「ど、どういうことだよ?」

布姫「私……達也くんに好きって言ってもらえて、彼女になれて、嬉しかった」

達也「……」

布姫「だけど、不安にもなったわ。このまま……この先もずっと、達也くんが私のことを好きでいてくれるかって……」

達也「布姫……」

布姫「私、安心してしまって……甘えてしまうと思ったの。彼女っていう立場に。……だから、友達に戻れば、ずっと努力し続けられるでしょ? 達也くんの前に、どんな素敵な女性が現れても、私を見てもらえるように努力し続けられる……」

達也「布姫。僕は、この先、どんな女の人が現れても布姫以上に好きになることはないよ。それだけは断言できる」

布姫「……達也くん」

達也「逆に僕の方が不安だよ。僕よりもいい男なんてゴロゴロいるだろうし」

布姫「ねえ、達也くん。私がこんなことを言う資格はもうないかもしれないけど……」

達也「ん?」

布姫「大好きです。私を彼女にしてください」

達也「うん。もちろん」

終わり。

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