【声劇台本】2番手のプライド

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス

■キャスト
ルーク
リオン
ボス

■台本

ルーク(N)「2番手。一般的に見れば、1位とあまり変わらず、凄いと思われるだろう。だが、こと強さに関してはこの感覚は当てはまらない。誰が言ったのか忘れたが、優勝以外は一回戦負けと同じだ、という言葉。まさしくその通りだ。ボクシングを例に考えてみるとわかりやすいかもしれない。その階級で一番強い人間がチャンピオン。2番目は世界ランキング1位になる。チャンピンと1位。これは本当に天と地の差がある。現に、チャンピオンの名前を知っている人は多いかもしれないが、世界ランキング1位の人間の名前はすぐに出てこないように。つまり、何が言いたいかというと、あくまで2番手というポジションは、一番強い奴の引き立て役にしかならないだろう」

場面転換。

リオン「ルーク。頼んだぞ。何とか、持ちこたえてくれ」

ルーク「ああ。わかってるさ。その代わり、しっかり修行してきてくれよ。リオン。お前の手に世界の命運がかかっているんだからな」

リオン「任せてくれ。必ず、今の何倍も強くなって帰って来る」

ルーク「待ってるからな、親友」

リオン「おう!」

ルーク(N)「2番手。決して、物語の主人公にはなれない。一番強いやつの引き立て役。時間稼ぎや、せいぜい、敵のボスの手下を何人か倒す程度の活躍。つまり、スポットライトなどはほとんど当たらない。じゃあ、何のために戦うのか? ……不思議なことに俺自身、その理由を知らない。まあ、知る必要はない。俺はただ、目の前の敵と戦うだけだ」

場面転換。

ボス「随分と舐められたものだな。その程度の力で、この私に勝てるとでも思っているのか?

ルーク「思ってないさ。だから、今、俺の親友がお前倒すための修行中だ」

ボス「ほお。私を倒すための……。なるほど。なら、貴様はそれまでの時間稼ぎということだな?」

ルーク「……」

ボス「いいだろう。少し、遊んでやろう」

ボスが指を鳴らすと、魔物が現れる。

魔物「キシャ―!」

ボス「まずはこいつと戦ってみろ。少しはいい勝負をしてくれよ?」

ルーク「くっ!」

魔物「グギャー!」

魔物が咆哮して、ルークに向かって来る。

ルーク「はあああ!」

魔物「グギャアア!」

ルークと魔物との戦い。

ルーク「てやああ!」

魔物「グガア!」

ルーク「はっ!」

魔物「ギャアアア!」

ルークの攻撃で、魔物が吹っ飛ぶ。

ルーク「ふう……」

ボス「ふふふふ。少しは楽しませてくれそうだな。……では、行くぞ!」

ルーク「はあああ!」

場面転換。

ボス「はあっ!」

ルーク「ぐあああ!」

ボスの攻撃により、ルークが吹き飛ぶ。

ボス「そろそろ諦めたらどうだ? お前、そいつに見捨てられたんだ。いくら待っても、来るはずはない」

ルーク「いや……。あいつは来る。そして、お前を倒してくれるはずだ」

ボス「……はあああ!」

ルーク「ぐあっ!」

ボスの攻撃で、再びルークが倒れる。

ルーク「ま、まだまだ……」

ボス「根性だけは褒めてやろう。だが、これで終わりだ!」

巨大な火の玉が、ルークに迫る。

ルーク「くそ……。こりゃ、死んだな。すまん、リオン。俺は……お前との約束を守れなかった……」

爆発音が響く。

ボス「……なっ! 今の攻撃を弾き返しただと?」

リオン「ふう。間一髪ってところかな」

ルーク「……リオン。遅いぞ」

リオン「すまん。ちょっと修行に戸惑ってな」

ルーク「修行はバッチリなんだろうな?」

リオン「ああ。後は俺に任せて、ルークは休んでてくれ」

ルーク「……そうさせてもらう」

場面転換

ルーク(N)「リオンが来るまでの時間稼ぎ。ある意味、本当の戦いの前の、前座。なんとか、ここまで辿り着いた。物語としては、ここからが本番だろう。だが、俺にとってはここで終わり。……二番手がやれることはここまでだ。なんのスポットライトも当たらない、地味なポジション。それでも、俺は強大な敵が現れれば、また同じように時間稼ぎのための戦いに身を投じるだろう。それが俺のプライドなのだから」

終わり。

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