憎しみの炎

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
弘幸(ひろゆき)
凛久(りく)
華憐(かれん)
男子生徒1~3

■台本

放課後の教室内。

弘幸「いいか。人の感情の中で一番強いのは憎しみなんだ。嬉しさや悲しさ、愛だって、憎しみには勝てない。それは、人の歴史を見ても証明されている」

凛久「あはははは! 今週のチャンプサイコー!」

バンと机を叩く弘幸。

弘幸「聞けよ!」

凛久「ん? なんだ? 話はもう終わったか?」

弘幸「……俺は、今、貴様に対して憎しみを抱いている。人の感情の中で一番強い憎しみをな」

凛久「はいはい。って、そろそろ、華憐ちゃんの部活終わる時間じゃね?」

弘幸「ヤバい! 行くぞ!」

弘幸が走り出す。

凛久「……あいつの憎しみの感情は随分と弱いな」

場面転換。

学校の廊下。

20人ほどの生徒たちが集まっている。

そして、教室のドアが開く。

華憐「ふう。今日も疲れましたわ」

男子生徒1「華憐ちゃん、今日も可愛い!」

男子生徒2「こっち向いて!」

男子生徒3「おい、前の方の奴、かがめ! 華憐ちゃんが見えないだろ」

弘幸と凛久が走って来る。

弘幸「くそ、出待ちに遅れた!」

凛久「おい! とにかく前に行くぞ! 一目でも華憐ちゃんを見るぞ」

弘幸「わかってる!」

人ごみを搔き分け、進む弘幸。

だが、弘幸と華憐がぶつかる。

弘幸「うわっ!」

華憐「きゃっ!」

弘幸「あっ……華憐ちゃん」

男子生徒1「おい! お前! なに華憐ちゃんと接触してるんだ!」

男子生徒2「ルール違反だぞ!」

男子生徒3「そうだ! そうだ!」

弘幸「あ、いや、これは……」

華憐「今のはわざとじゃないですのよ。事故ですわ、事故。だから許してあげてくださいね」

弘幸「……華憐ちゃん」

男子生徒1「うおーー! 華憐ちゃん、なんて良い子なんだ!」

男子生徒2「天使だ! 天使!」

華憐「ふふ、これからも応援、よろしくお願いしますわ」

弘幸「は、はいー!」

場面転換。

通学路を歩く弘幸と凛久。

弘幸「はあー。やっぱ、華憐ちゃん、マジ天使だわー」

凛久「さすが、元アイドルだよなー」

弘幸「元、じゃない! 今でも俺たちにとってはアイドルだ!」

凛久「あ、ああ。そうだったな」

弘幸「いやー。そう考えると、華憐ちゃんがうちの学校に転校してきたのは奇跡だよなー」

凛久「ああ。けど、ルールを破ったら、すぐに転校するって公言されてるからな。油断はできねーぞ」

弘幸「そうだな。……学校内および外でも、無暗に華憐ちゃんに接触するのは禁止。姿を見に行っていいのは、放課後の16時から18時の間まで」

凛久「華憐ちゃんはダンス部に入っているから、実質、部活終わりに部室の前で出待ちするくらいだからな」

弘幸「同じクラスのやつらはいいよなー。一日中、見放題なんだからさ」

凛久「まあな。けど、5秒以上の凝視も禁止されてるから、ある意味、危険って言えば危険だけどな」

弘幸「確かに。あの美貌を5秒以上見るなって言うのは、残酷だよな」

凛久「……ん?」

弘幸「どうした?」

凛久「……あれ、華憐ちゃんじゃないか?」

弘幸「……なっ! あいつ! 隣のやつ、誰だよ!」

凛久「あの制服……西高のやつじゃねーか」

弘幸「そんなことはどうでもいい! なんで、華憐ちゃんと手を繋いでるんだ!」

凛久「……完全にルール違反だよな」

弘幸「……あの楽しそうな顔。……まさか」

凛久「……彼氏、か?」

弘幸「うおー! みなまで言うな―!」

凛久「けど、手を繋いで、楽しそうに話すって、彼氏以外ありえないだろ。もし違ってたら、華憐ちゃん自身がルール違反って言うはずだし」

弘幸「ぎゃあああーー! いやだー! 俺は認めねーぞ!」

凛久「認めないもなにも……あんなのを見せられたら、どうしようもなくないか?」

弘幸「くそーーー! 裏切られた! 純粋無垢だと信じていたのに!」

凛久「……」

弘幸「許さん! 許さんぞ!」

凛久「お、おい! 落ち着けって」

弘幸「落ち着けるか! 今、俺の中では憎しみの炎が巻き上がっている! この炎は誰も消すことはできない!」

凛久「いや、待てって! 早まるな!」

弘幸「憎しみは人の感情の中で一番強いんだ! 止めることなんてできない! 末代まで恨んでやる! うおおお!」

弘幸が走り出す。

凛久「お、おい!」

凛久が後を追う。

場面転換。

華憐の前に立つ弘幸。

弘幸「おい! 華憐!」

華憐「きゃっ! ……あ、あなたはさっきの……」

凛久「おい、やめろって!」

弘幸「うっさい!」

弘幸が凛久の手を払いのける。

弘幸「隣の男はなんなんだー!」

華憐「あ、いや、この方は……」

弘幸「彼氏かー!? 許さん! ファン全員にばらしてやるー!」

華憐「……この方はいとこのお兄さんですわ」

弘幸「え?」

華憐「だから、彼氏とか、お付き合いしてるってわけではないんですのよ」

凛久「いや、さすがにその言い訳は厳しいんじゃ……」

弘幸「……だよねー!」

凛久「え?」

弘幸「そりゃ、そうだよねー! 華憐ちゃんは純粋無垢な、俺たちのアイドルだもんねー」

華憐「そ、そうですわ。私はみんなのアイドルですもの。……それじゃ、失礼しますわ」

弘幸「う、うん」

華憐「誤解させてごめんあそばせ。これからも応援よろしくですわ」

弘幸「はい! よろこんで!」

華憐たちが行ってしまう。

弘幸「いやー、やっぱり華憐ちゃんはマジ天使だよなー!」

凛久「……お前の中の憎しみの炎とやらは、マッチの火よりも弱いんだな」

終わり。

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