【声劇台本】バレンタインデーにて
- 2021.06.25
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
中山 尚樹(なかやま なおき)
真也(しんや)
藤咲(ふじさき
■台本
ガラガラと教室のドアを開き、尚樹が入って来る。
歩いて、自分の席に座り、机の中を漁る。
尚樹「……無いか」
真也「何期待してるんだよ」
尚樹「うおお! ビックリした! 真也、急に話しかけるなよ!」
真也「すまん、すまん。けど、尚樹。お前、今日、何回トイレ行ってんだよ」
尚樹「……別にいいだろ」
真也「緊張してんのか?」
尚樹「悪いかよ」
真也「いやいやいやいや! ないって! ないない! 無駄な緊張だって」
尚樹「うるせーな。そんなのわからねーだろ」
真也「じゃあ、去年は何個だよ?」
尚樹「……1個」
真也「どうせ、母親からだろ?」
尚樹「そういうお前は? お前だって、去年、貰ってるところなんて、見なかったぞ」
真也「ああ。そうだな。去年はゼロだ」
尚樹「ほら見ろ。人のこと言えねーじゃん」
真也「去年は去年だよ。今年は違うからな」
尚樹「なんでだよ?」
真也「見ろよ、ほら! 髪形、決まってるだろ?」
尚樹「あ、ホントだ! 自分でやったの?」
真也「いや、昨日、美容室に行った。で、風呂でも頭だけは洗わなかったんだよ」
尚樹「マジで! 美容室行ったの? くっそ! 考え付かなかった。その手があったか」
真也「どうせ、お前は、自分でやったんだろ? そのセット」
尚樹「……そうだよ」
真也「普段、寝ぐせついてるくらいの俺たちが、いきなりセットしようとしたって上手くいかねーって」
尚樹「……いや、ホントにそうなんだよ。1時間早起きしたんだけどさ、全然、うまくいかねーの。本の通りにやってんのにさ。おかげで、髪がベタベタになって、何回もシャワー浴びることになって、親に怒られたよ」
真也「わかるわかる。まさに去年の俺と同じだな。だから、俺は今年はちゃんとプロにやってもらおうって思いついたんだよ」
尚樹「いいなー。俺も、そうすればよかった」
真也「今日の為に、3か月くらい髪切らないで、調整してたからな」
尚樹「作戦勝ちだな」
真也「ってことで、今年は、5個は固いと見た。ま、お前は俺が貰うところを羨ましそうに見ているんだな」
尚樹「ふっふっふ。果たしてそうかな」
真也「な、なんだよ?」
尚樹「俺が、今日の為になんの策も考えてないとでも思ったのか?」
真也「お前も、何か準備してたのか?」
尚樹「ああ。もちろんだ」
真也「何したんだ?」
尚樹「実は……2ヵ月前から筋トレしてたんだよ」
真也「筋トレ! マジか! あー、その手があったか……」
尚樹「最初さ、腕立て、15回しかできなかったけど、今は30回できるからな」
真也「2倍か。すげーな」
尚樹「ほら、女子ってさ、たくましい男が好きっていうじゃん。だから、めっちゃ、頑張った」
真也「いや、でも、2ヶ月続けてるってすげーな。俺なら、ぜってー無理」
尚樹「目標があれば、やれるもんだよ。ほら、見て見て! 少し、力こぶができるようになったんだぜ」
真也「ホントだ。くそー、筋トレか。俺もやればよかったな」
尚樹「だから、俺、今日は自信あるんだよね」
真也「シャツのボタン、2番目まで外しておけば? ワイルドに見えるかも」
尚樹「そっか。そうだよな。そうしよう」
ボタンを外す尚樹。
尚樹「……ん?」
真也「どうした?」
尚樹「なあ、真也。藤咲さん、チラチラ、こっち見てないか?」
真也「……え? あ、ホントだ」
尚樹「本を読む合間にチラチラ見てるよな?」
真也「俺とお前、どっちかな?」
尚樹「あのさ、貰えなかったからって、不機嫌になったりするのは止めようぜ。恨みっこなしで、ちゃんと相手を祝うってことで」
真也「……わかった。約束だ」
尚樹「……それにしても、藤咲さん、地味に可愛いよな」
真也「ああ。いつも本読んでるから、暗いってイメージだけど、意外と可愛いよな」
尚樹「ほら、よく、ゲームのキャラでいう、眼鏡キャラっぽくない?」
真也「あー、わかる、わかる。眼鏡外したら美少女になるやつだろ?」
尚樹「そうそう、それそれ」
真也「俺さ、藤咲なら、全然、付き合える」
尚樹「俺も俺も。てかさ、そもそも、俺、ギャル系っていうか、軽いやつは好きじゃないんだよね」
真也「わかる! なんかさ、二股とかかけられそうで、怖いよな」
尚樹「俺! 真面目な人の方が好きだな!」
真也「……お前さ、今の台詞、わざと大きめの声で言っただろ? 藤咲に聞こえるようにさ」
尚樹「い、いや、そんなことねーって」
真也「ホントか? それならさ……俺! 毎月、10冊、本読むんだぜ!」
尚樹「ちょ、おまっ! それ、ズルいって」
真也「なにが?」
尚樹「いや、明らかに声が大きかったし、会話の流れと全然違ったしさ」
真也「そうか?」
尚樹「藤咲さんがいつも本読んでるからって、本好きアピールすんなよ。大体、お前が漫画以外の本を読んでるとこなんて、見たことねーぞ?」
真也「別に、漫画だって本だろ」
尚樹「いやいや、漫画と小説を一緒にすんなよ」
真也「それよりさ、告白までされたら、どうする?」
尚樹「え? そんなの付き合うに決まってんだろ」
真也「いや、そりゃそうだけどさ。デートとかどうすんの? 行く場所とか、知ってんの?」
尚樹「……ヤバい。知らない。あ、でも、昨日買った、雑誌にそういうの書いてたかも」
真也「ああ、髪形セットするために買ったやつか」
尚樹「そうそう。ああいう雑誌なら、そういうことも書いてるんじゃね?」
真也「……頼む、尚樹! その雑誌、後で貸してくれ!」
尚樹「ジュース1本な」
真也「おい! ぼったくりすぎだって!」
尚樹「いや、だって、あれ、500円くらいしたんだぞ」
真也「マジか。そういう雑誌って高いんだな」
尚樹「それとさ、今度の休みに古着屋行かね?」
真也「え? 古着屋? なんで?」
尚樹「……お前、デートに来ていく服、持ってんの?」
真也「……あ」
尚樹「だろ? さすがに、今持ってる服だと、デートで藤咲さんに恥をかかせちゃうからさ」
真也「確かに、痛Tはマズイよな」
尚樹「ってことで、さっそく、土曜日に行こうぜ」
真也「あー、くそ、美容院代、少し残しておけばよかった」
尚樹「まあ、お互い、金出し合って買って、その後は貸し借りとかしてもいいかもな」
真也「お前、天才かよ」
尚樹「彼女が出来ても、俺たちの友情はかわらないよな?」
真也「もちろんだ!」
尚樹「それにしても、チラチラこっち見てるけど、なかなか来ないな」
真也「あー、もしかしたら、教室だと言い辛いんじゃないか?」
尚樹「あー、確かに! 教室で告白とかハードル高いもんな」
真也「ここはさ、二人とも、一旦、廊下に出ないか? そういう優しさもポイント高いだろうし」
尚樹「そ、そうだな。出よう……」
真也「あ、ちょっと待て! 藤咲が立ち上がったぞ」
尚樹「お、お、お!」
真也「来た来た来た! やっぱり、こっちだ!」
藤咲「あ、あの……中山君」
尚樹「よしっ! 俺だ!」
真也「くっ!」
尚樹「それで何かな? あ、そうだ、教室だと言い辛いだろうから、一旦、廊下に出る?」
藤咲「ううん。いい」
尚樹「そ、そっか。……で? なにかな?」
藤咲「ズボンの……チャック開いてる」
尚樹「……へ?」
終わり。
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