【声劇台本】世界は呪われている

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス

■キャスト
エリオット
ユグドラシル
レオン
フローラ
魔王

■台本

エリオット(N)「何かを成し遂げるには、何かを犠牲にしなければならない。世界を救おうなんて考えれば、それなりの代償が必要になる。だが、俺一人の人生と世界の平和を天秤にかけられるのだとしたら、世界を選ぶべきだろう。これは俺にしかできないことなのだから」

場面転換。

ユグドラシル「……本当によろしいのですか?」

エリオット「世界樹、ユグドラシルよ。魔王に止めを刺す方法がこれしかないというのであれば、俺は受け入れる」

レオン「考え直せ、エリオット!」

フローラ「そうよ! あなたが犠牲になることなんてないわ!」

エリオット「……レオン、フローラ。ありがとう。だが、世界は魔王の手によって、闇に飲み込まれようとしている。そうなれば、この世界は崩壊する。それを止められるのなら、俺は喜んでこの身を捧げるさ」

レオン「……エリオット」

エリオット「そんな顔をするな。それに、まだ成し遂げたわけじゃない。これから魔王と戦うんだ。お前たちにも付き合ってもらうからな」

レオン「もちろんさ」

フローラ「……絶対に、魔王を倒してみせるわ」

エリオット「……というわけだ。ユグドラシルよ。俺に究極の魔力を継承させてくれ」

ユグドラシル「魔王もこの、究極の魔力を身に着けています。だからこそ……」

エリオット「同じ究極魔力を使って、飲み込むしかない」

ユグドラシル「……はい」

エリオット「なら、やるさ」

ユグドラシル「よいですか? この魔力を継承すれば、魔力によって蝕まれていきます。身体も精神も……」

エリオット「わかっている。最終的には、俺は眠りにつこうと思う。そのことも含めて、覚悟はできている。継承させてくれ」

ユグドラシル「……わかりました。それでは、エリオット。あなたに究極の魔力をお渡しします」

エリオット「……頼む」

場面転換。

レオン「はあああああ!」

ザシュっと魔王を剣で斬るレオン。

魔王「ぐああああ!」

フローラ「やった!」

魔王「……くくく。残念だったな。我の体は究極の魔力により、滅びることはない。我をここまで追い詰めたことは称賛に値するが、結局は我の勝ちだ」

エリオット「それはどうかな?」

魔王「……なっ! 貴様! 究極の魔力を継承したのか!?」

エリオット「そういうことだ。魔王よ、貴様には消滅してもらう! はああああ!」

究極の魔力が発動され、轟音が鳴り響く。

魔王「ぐああああああああああ!」

爆発音が響く。

レオン「……倒したのか?」

魔王「見事だ……」

レオン「く、まだ生きていたのか! 究極の魔力の効力が切れた今、俺でも止めをさせるはずだ」

エリオット「レオン、ちょっと待ってくれ」

レオン「……どうしたんだ?」

エリオット「魔王よ。消える前に答えてくれ。どうして、ユグドラシルを放置していた?」

魔王「……」

レオン「どういうことだ?」

エリオット「魔王を倒すためには究極の魔王の継承が必要だ。逆を言えば、究極の魔力の継承さえ阻止できれば、魔王は無敵でいられたはずだ」

レオン「確かに……」

エリオット「破壊はできなかったとしても、封印くらいはできたはずだ。……なぜ、しなかった?」

魔王「ふふふふふ。あははははは!」

エリオット「……」

魔王「じきにわかる。そして、お前は絶望に取り込まれる」

エリオット「……」

魔王「さあ、止めをさすがいい」

エリオット「ああ……」

魔王「……ようやくだ。今、いくぞ」

エリオット「消えろ」

エリオット(N)「こうして、俺たちは魔王を倒すことに成功し、世界に平和が訪れたのだった」

場面転換。

エリオット「うう……。うがああああああ!」

魔力を乱発し、破壊音が響き渡る。

エリオット「……はあ、はあ、はあ。もう、この破壊衝動を抑えるのは限界だな……。もう、ユグドラシルに頼るしかない……」

場面転換。

ユグドラシル「お久しぶりですね、エリオット。姿は全く、変わりませんね」

エリオット「ああ。魔王を倒してから、100年以上経っているがな。この体は全く年を取ることがない」

ユグドラシル「……」

エリオット「頼む、ユグドラシル。容姿はまったく変わることはないが、精神が蝕まれていくことに、もう耐えられそうにない。お前の力で、俺を封印してほしい」

ユグドラシル「私の力で、あなたを、ですか?」

エリオット「本当は、自分で眠りにつく方法を見つけたかったんだが……。もう、タイムリミットだ。頼む、ユグドラシル」

ユグドラシル「……それはできません」

エリオット「な、なんだと!? そんな馬鹿な! そんなはずはない! できるはずだ」

ユグドラシル「ええ。私ならできるでしょう。ですが、私は、あなたを眠りにつかせることはしません」

エリオット「なぜだ?」

ユグドラシル「あなたには、新しい魔王になってもらうためです」

エリオット「……なにを言っているんだ?」

ユグドラシル「あなたが継承した、究極の魔力は100年かけてあなたの体を侵食し、魔王として作り変えました」

エリオット「ユグドラシル。お前、何が目的なんだ?」

ユグドラシル「世界樹の養分は人々の魂のエネルギーなのです。それも膨大な量が必要です」

エリオット「……」

ユグドラシル「膨大な魂のエネルギーを得るのに効率なのは、戦いを起こすことです。平和な世界だと、私の体を維持することができないのです」

エリオット「待ってくれ。それが本当だとしたら、なぜ、俺に究極の魔力を継承させた? 継承させなければ、魔王を倒すことができず、お前の言う、戦いを誘導し続けることができたはずだ」

ユグドラシル「それは無理なのです。人間は勝てないと悟った時、戦いを止め、支配されることを選びます。これは何度も繰り返して見て来た結果なのです」

エリオット「……だから、定期的に魔王を倒させて、新しい魔王を用意する、というわけか」

ユグドラシル「はい、その通りです。さすが究極の魔法を継承した者ですね。理解が早いです」

エリオット「まさか、世界の敵は魔王ではなくユグドラシルだったとはな。まんまと騙されたぜ。悪いが、お前を消させてもらう」

ユグドラシル「私の根は世界の深くまで入り込んでいます。どちらかというと、私は世界を取り込んだと言った方が正しいでしょうね。つまり、私を消せば、世界も消えますよ」

エリオット「……で、でたらめだ」

ユグドラシル「そう思うのであれば、私を消してください」

エリオット「くっ……。消せないなら、封印する! そうすれば、この悪夢の連鎖は断ち切れる」

ユグドラシル「封印ですか。いいでしょう。ですが、私が眠りにつけば、あなたを倒す唯一の方法である、究極の魔力も封印されることになります。つまり、あなたは魔王として生き続けることになります。魂を侵食され続けながら」

エリオット「……そうか。『前任者』が言っていたのは、このことだったのか。確かに、絶望に取り込まれたな」

エリオット(N)「こうして、俺は次の魔王として、世界の脅威として君臨した。……そして、俺は待ち続ける。俺を倒すために究極の魔力を継承し、次の魔王となる者がやってくるのを。……ああ。この世界は……呪われている」

終わり。

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