【声劇台本】継母

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス

■キャスト
シンデレラ
継母
セバスチャン
父親
王子

■台本

継母「……」

シンデレラ「お父様! しっかりしてください!」

父親「ああ……。シンデレラよ。お前が幸せになるところを見れなかったのが、唯一の心残りだ」

シンデレラ「うう……」

父親「お前よ。どうか……どうかシンデレラを頼む。幸せにしてやってくれ」

継母「ええ。もちろんですわ、あなた」

父親「我が愛しき娘、シンデレラ……」

シンデレラ「お父様! お父様―!」

継母「……」

場面転換。

継母「シンデレラ! シンデレラ!」

シンデレラ「は、はい!」

シンデレラが走ってくる。

シンデレラ「な、なんでしょうか、お母様」

継母「部屋の角に埃が溜まってるじゃないか! なにやってんだい!」

シンデレラ「ご、ごめんなさい! すぐに掃除します」

継母「ったく、相変わらずグズだねぇ、お前は」

シンデレラ「……あ、あのお母様」

継母「なんだい?」

シンデレラ「今までは使用人を……」

継母「まだそんなこと言ってんのかい!」

シンデレラ「ひっ!」

継母「ホント、甘やかされて育ったみたいだねぇ。あの人は、貴族としては一流だったけど親としては最低だよ」

シンデレラ「お父様の悪口は……その、やめてください」

継母「悪口なんかじゃないよ! ホントのことじゃないか! お前がグズなのは、あの人の教育が間違ったからだよ」

シンデレラ「……」

継母「いいかい、シンデレラ。今までは全部使用人にやってもらっていたようだけど、今度からはぜーんぶ、お前がやるんだ! いいね!」

シンデレラ「は、はい……」

場面転換。

継母「シンデレラ! 全然、汚れがおちてないじゃないか! ちゃんと洗濯してるのかい!」

シンデレラ「ごめんなさい。でも、手の赤切れが酷くて……」

継母「言い訳するんじゃないよ! やれと言われたら、やるんだ!」

シンデレラ「は、はい」

場面転換。

ガシャンと食器が割れる音。

継母「なんだい、このクソマズイ料理は? こんなもの、豚のエサにもなりゃしない!」

シンデレラ「ご、ごめんなさい。でも、今まで料理なんてやったこと……」

継母「まーた、言い訳かい! 言い訳の理由を考えるくらいなら、どうやったら美味しい料理を作れるか、考えな!」

シンデレラ「うう、でも……」

継母「あー、もう、イライラするねえ。こんなまずい料理を毎日出されたら、こっちの身がもたないよ!」

シンデレラ「……」

継母「ったく、しょうがないね」

場面転換。

セバスチャン「お久しぶりでございます、お嬢様」

シンデレラ「セバスチャン!」

継母「一人だけ、使用人を雇ってやったから、全部そいつに聞きな。早く、一前になるんだよ!」

ズカズカと歩いて、部屋を出ていく継母。

シンデレラ「……」

セバスチャン「お嬢様、随分とお痩せになりましたな」

シンデレラ「お父様が生きていた頃の3分の1も食べさせてもらってないわ。……それに、一日中、家事をしてるでしょ。痩せない方がおかしいわ」

セバスチャン「……お嬢様」

シンデレラ「さあ、セバスチャン。さっそく、掃除のことなんだけど、天井の埃はどうやって払えばいいの?」

セバスチャン「……まさか、お嬢様の口からこんなセリフを聞くことになるとは……」

場面転換。

継母「へー。なかなか、様になってきたじゃないか」

シンデレラ「ありがとうございます。セバスチャンに色々教わったおかげです」

継母「うん。セバスチャンを雇ったのは正解だったみたいだねえ」

セバスチャン「お嬢様の努力があってこそです。随分と上達が早いですよ」

継母「へー。ということは、時間に余裕ができてるってことだねぇ?」

シンデレラ「え?」

継母「お前、明日から働きに出な!」

シンデレラ「そんな……」

継母「7つの家に、1日ごとに順番で働きに行きな。話はついてるからね」

セバスチャン「お待ちください! それはあまりにも……」

継母「使用人は黙ってな! いいかい、シンデレラ。これから行く家で働きながら、学んできな。裁縫、料理、踊り、マナーを教えてる家だからね。仕事の合間に、しっかり見て見に着けておきな! いいね!」

ズカズカと継母が歩いて、部屋を出ていく。

シンデレラ「うう……。酷い。まさか、働きに出ることになるんて……」

セバスチャン「お嬢様……。私がなんとか説得しますので……」

シンデレラ「ありがとう。大丈夫よ。私、やるわ」

セバスチャン「お嬢様……。成長、されましたな」

場面転換。

継母「シンデレラ! シンデレラ!」

シンデレラ「なんでしょう、お母様」

シンデレラが歩いて来る。

継母「へー。歩き方にも、気品がでてきたじゃないか。……それより、家事の方はどうなってるんだい?」

シンデレラ「全て終わってますわ。あ、そうだ、お母様。お茶にしません? ちょうど、お茶菓子を作ったところですの」

継母「随分と、色々とできるようになったじゃないか」

シンデレラ「働きに行っている家で、色々教わったんですの。礼儀作法も完璧に覚えることができたんですよ」

継母「……シンデレラ。1週間後にお城で、舞踏会がある。準備しておきな」

シンデレラ「お城で、舞踏会……?」

場面転換。

王子「ああ、愛しのシンデレラ! どうか、僕と結婚してくれないか?」

シンデレラ「……はい」

ワッと歓声が上がる。

場面転換。

セバスチャン「うう。お嬢様。私は、私は感動しました。まさか、あのお嬢様が、王子とご結婚されるなんて」

シンデレラ「ありがとう、セバスチャン」

継母「……」

シンデレラ「お母様。本当にありがとうございました。全部、お母様のおかげです」

継母「な、何を言ってんだい! 私は何もしてないさ」

シンデレラ「……ずっと、小さい頃からお父様に甘やかされ、自分のことさえも何もできない、歩くことも辛いくらい、太ってた私をこうまでしてくれたのは、お母様のおかげです」

継母「……」

セバスチャン「我がままで、言い訳ばかりしていたお嬢様……。あのままでしたら、きっと、お嬢様は嫁にも行けず、不幸な人生になっていたでしょう」

シンデレラ「甘やかすだけが愛情じゃない、厳しくすることも愛情だって、ようやく気付くことができました」

継母「……シンデレラ」

シンデレラ「血の繋がっていない私を、お父様以上に愛してくださって、本当にありがとうございました」

継母「うう……」

シンデレラ「シンデレラは幸せになります」

継母「……あなた。あの世で見てますか?あなたの最後の願い、ちゃんと叶えましたよ」

終わり。

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