【声劇台本】裏切り者の親友


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■概要
主要人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
一樹(いつき)
一真(かずま)
一花(いちか)

■台本

一樹(N)「一真と一花は、いわゆる幼馴染の関係だ。何となく気が合って、遊ぶときは3人で、どこに行くにも一緒だった。それは高校に入ってからも、変わることはなかった……」

場面転換。

一樹と一真が並んで歩いている。

一真「一樹は行きたいところは、あるのか?」

一樹「うーん。海……とか?」

一真「ベタだな」

一樹「うるせーな。一真はどうなんだよ?」

一真「んー。山でキャンプ、とか?」

一樹「お前もベタじゃねーかよ」

そこに一花が走ってきて、後ろから二人の背中をバンと叩く。

一花「おっはよー!」

一樹・一真「痛っ!」

一花「あははは。隙だらけなのがいかんのだよ」

一樹「朝から、テンションたけーよ」

一花「にゃはは! 元気が、一花ちゃんの取り柄なのだー!」

一真「疲れる……」

一樹「ああ、そうだ。一花は夏休み、行きたいところあるか?」

一花「ん? んー。ニューヨーク、とか?」

一真「すまん。普通に行けるところで、行きたいところだ」

一花「じゃあ、市民プール」

一樹「……そこまで日常的じゃなくていい」

一花「ん?」

一真「まあ、一花はどこに行っても、楽しめそうだから、俺たちで決めちまおう」

一樹「そうだな」

一花「でもさ、でもさ! なんで、急に旅行の計画なんて立てるの?」

一樹「あー、そういえば、なんでだっけ?」

一真「まー、いいじゃねーか。高校最後の思い出ってことで」

一樹「いや、俺たち、まだ2年だから。高校最後は早すぎるだろ」

一真「いやいや。一年なんて、過ぎるの早いぞ。それに、来年になったら、受験とかあるから、あんま遊べないだろ」

一樹「うっ! 考えたくない現実を突きつけやがって……」

一花「にゃはははー。受験かー。2人とも頑張ってねー」

一樹「なんだ、そりゃ? お前、大学いかないつもりか?」

一花「ううん。にゃにゃんと! 一花ちゃんは、既に推薦を貰えることが決まっているのだー!」

一真「……学年一位は伊達じゃないってか」

一樹「こんなのが、学校内で一番頭がいいって、なにか間違ってる……」

一真「とにかく、俺たち2人は、来年、地獄なんだから、今年の夏は全力で遊ぶぞ!」

一花「おー!」

一樹「地獄って言うな……」

場面転換。

一樹(N)「一真の言う通り、時間なんてすぐに過ぎ去っていく。楽しい時間なら、尚更だ。気付けば、夏休みも最後の日になっていた」

場面転換。

一樹と一真が並んで歩いている。

一真「いやー、充実した夏休みだったな。今までで最高の夏休みだったよ」

一樹「……その分のツケも膨大だけどな。あーあ、半年先まで小遣い前借りしちまったからなー。しばらく、贅沢はできねーな」

一真「小遣いのことを気にするのもいいけど、宿題、やってるのか?」

一樹「あああー! やべえ! 全然、やってねえー」

一真「はははは。だと思った」

一樹「お前は、どうなんだよ?」

一真「やってねーよ」

一樹「なんで、そんなに余裕なんだ?」

一真「……そういえば、今日、流星が見れるみたいだな」

一樹「なんだよ、急に?」

一真「いや、夏休みの最後を締めくくるに相応しいな、って思って」

一樹「うーん。ここまで来たら、もう宿題は諦めて、怒られることにするか……」

一真「いつものことだな」

一樹「うるせーな。じゃあ、一花も呼んで、3人で流星、見に行くか」

一真「……なあ、樹」

一樹「なんだよ、急に真面目な声出して」

一真「俺たち、親友だよな?」

一樹「な、なんだよ! 金ならねーって言ったばかりだろ」

一真「いや、そうじゃなくてさ。この先、何があっても、裏切ったりしないよな?」

一樹「当たり前だろ。っていうか、その言い方だと、フラグにしか聞こえねーぞ。なんか、企んでるのか?」

一真「まあ、な」

一樹「おい!」

一真「お前さ、一花のこと、どう思ってる?」

一樹「は? さっきから、なんなんだよ! お前、最近、ちょっと変だぞ?」

一真「いいから、答えてくれよ」

一樹「……幼馴染」

一真「建前じゃなくて、本当の気持ちを知りたいんだ」

一樹「……」

一真「教えてくれよ。俺たち、親友だろ?」

一樹「俺さ……。3人でいるのが、すげー楽しいんだ。この先も、ずっと、このままでいたいなって思ってる」

一真「そんなことは……」

一樹「ああ。無理だ。けどさ、せめて、高校の間だけは、この関係でいたいんだ」

一真「……そうか」

一樹「一真の、一花への気持ちはわかってる。だけど、ごめん。あと1年だけ、待ってくれよ。卒業までは3人でいたいんだ」

一真「……わかった」

一樹「……すまん」

一真「ま、とにかく、今日は夏休みの最後の日だ。思い切って、楽しもうぜ」

一樹「じゃあ、一回、家に帰ってから18時に集合しようぜ」

一真「ああ、わかった。一花には俺が連絡入れとく」

一樹「おう、頼んだ」

一真「一樹、ありがとな」

一樹「……なにが?」

一真「今回の夏休み、すげー楽しかったよ」

一樹「あ、ああ……」

場面転換。

ガサガサと棚を漁る樹。

一樹「えーっと、虫よけとか持ってった方がよさそうだよな?」

そのとき、スマホが鳴る。

一樹「ん? 一真からメール? ……なっ!」

場面転換。

一樹が全力で走る。

一樹「くそ、あいつ! 何考えてるんだ!」

一真のメールの内容。

一真の声「すまん、樹。やっぱり、俺、一花への思いを抑えきれなかった。それで、一花を呼び出して、告白した。俺たち、付き合うことになったから、今日は、お前は来ないでくれ」

走る一樹。

一樹「くそ! くそ! くそ! 裏切らないって言ったばかりだろ! 一真―!」

場面転換。

一樹が走って来る。

一樹「一花!」

一花「……いっちー?」

一樹「俺も、俺……。お前のことが好きだ! ずっと、ずっと好きだった!」

一花「……え?」

一樹「あ……。ご、ごめん。いきなり、こんなこと言われても困るよな……」

一花「う、うう……。ふえー」

一樹「な、なんで、泣くんだよ!」

一花「だって、嬉しくて―。一花ちゃんも、いっちーのこと、大好きでー」

一樹「ちょ、ちょっと待て! なら、どうして一真の告白を受けたんだよ?」

一花「ふえ? かずくん? なんの話?」

一樹「え? 一真に告白されたんじゃ……?」

一花「ううん。かずくんには、ここでいっちーが来るのを待ってろって」

一樹「あいつ、何考えてるんだよ!」

スマホで電話を掛けるが出ない。

一樹「なんなんだよ、あいつ……」

場面転換。

一樹(N)「一真は、夏休みが終わったら、親の転勤で引っ越すことをずっと黙っていた。一真にとって、今年が3人で過ごす最後の夏休みだったんだ。3人で、思い出を作って、最後に俺と一花を付き合うように仕向けた。ホント、あいつはとんだ裏切り者で……最高の親友だ」

終わり。

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