ベッタベタな展開

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
天真(まさたか)
カレン
男子生徒1~3
女子生徒1~2
不良
男1~3

■台本

天真(N)「僕の名前はたかまさ。真の天と書いて、たかまさ。友達からはラノベの主人公っぽい漢字だって言われている。僕もそう思う。だが、中学までは本当に何もなかった。けど、ラノベの主人公は、高校生が多い。ということは、僕は高校から波乱の人生が待っているはずなのだ。バラ色の学校生活のため、高校から頑張るぞ!」

場面転換。

教室内。

バンと天真が机を叩く。

天真「本当か、それ?」

男子生徒1「ああ。しかも、帰国子女でハーフの女の子だってさ。さらにうちのクラス」

天真「こんな時季外れに転校生の女の子……。やっぱり、ここから……高校から僕のストーリーは始まるんだ」

男子生徒1「何言ってんだ、お前?」

天真「もちろん、その子の住所は抑えてあるんだろうな?」

男子生徒1「ふふふ。誰にものを言ってるんだ?」

場面転換。

早朝。スズメの鳴く声。

電柱の影に隠れている天真。

天真「うう……。眠い。朝の5時に起きるなんて、久しぶりだな」

天真(N)「早朝から電柱の影に隠れながら何をやっているのかというと、転校生が学校に向かうのを待っているのだ。何時に出るかわからないので、こうして朝から待っているのだ。ファーストコンタクト。ここが超重要だ。ここで勝負が決まると言っても過言ではない。絶対にミスれないのだ」

場面転換。

天真「7時前か。さすがにまだ出てこないよな……」

ガチャリとドアが開く音。

カレン「それじゃ、行ってきます」

天真「来た!」

天真(N)「……うわー、スゲー可愛い。まさしく、ヒロインって感じだ。よし! カバンからパンを出して……と」

ガリっという固いパンを噛んだ音。

天真「うおっ! 冷えて固まってる。スゲー不味い」

カレンの足音が近づいて来る。

天真「おっと、こんなことを気にしている場合ではない。……いくぞ!」

カレンの足音が近い。

天真「遅刻遅刻!」

天真が道の角から飛び出す。

カレン「きゃっ!」

シュッと身を躱す音。

天真「へ?」

天真(N)「この距離、この速さで躱しただと!? 何て反応速度だ!?」

天真「……うわあ!」

ずしゃあと天真だけが転ぶ。

天真「いてて」

カレン「あ、あの……大丈夫ですか?」

天真(N)「まだだ。まだ、修正はきく。このままで終わらせん!」

天真「おい! どこ見て歩いてるんだよ!」

カレン「え?」

天真(N)「さあ、言い返してこい! ここで喧嘩する。最初は最悪の出会いというのがセオリーなのだ」

カレン「……うう、ご、ごめんなさい」

天真「へ?」

カレン「私が……悪かったんでしょうか?」

天真「あ、いや……」

カレンが泣き出し、周りがざわざわし始める。

男1「なんだ、なんだ?」

男2「変な奴が、可愛い女の子に因縁つけてるみたいだぞ」

男3「自分で勝手に転んだのに、女の子のせいにしてるんだ」

天真(N)「やばい……」

天真「し、失礼しましたー!」

天真が走り去っていく。

場面転換。

教室内。カレンの周りに人だかりができている。

男子生徒2「ねえねえ、カレンちゃん、前の学校で、何かクラブとかやってた?」

カレン「はい。新体操を」

女子生徒1「へー、新体操? 珍しい」

男子生徒3「やっぱり英語、ペラペラなの?」

カレン「ペラペラかわからないですけど、それなりには」

男子生徒2「おおー、格好いい」

女子生徒2「今度、教えてよー」

カレン「はい、いいですよ」

天真「……」

天真(N)「くそ。出会いはしくじったが、まだ諦めないぞ。ここから挽回だ」

立ち上がる天真。

天真「おいおい、それくらいにしておけよ。転校生、困ってるだろ」

男子生徒2「あ、そっか。いきなりこんなに人に囲まれたら怖いよな」

女子生徒1「ごめんね、カレンちゃん」

ぞろぞろとみんな散るようにして自分の席に戻っていく。

天真「大変だったね。でも、もう大丈夫――」

カレン「……みんなともっと話したかったです」

天真「……」

カレン「……」

天真「あ、そうだ。学校内を案内しようか?」

カレン「結構です」

天真「……」

場面転換。

カレンが通学路を歩いている。その後ろをこそこそ尾行している天真。

天真(N)「ヤバい。このままじゃ非常にヤバい。ここは一発逆転を狙うしかない。……この手だけは使いたくなかったが、仕方ない。あんな可愛い子と楽しい学校生活を送るためだ。多少の苦痛くらい我慢するさ」

カレン「きゃっ!」

不良「ねーちゃん、ちょっと、俺に付き合ってくれよー」

カレン「やめてください」

天真(N)「来た来た。まあ、あれだけ可愛いなら、ナンパくらいされるよな。……にしても、ベッタベタな不良だな。あんなの、今どきいるんだ……?」

不良「いいから来いよ!」

カレン「きゃあ!」

天真(N)「悪い男から助け出す主人公。……これは惚れるでしょ。もちろん、勝たなくたっていい。あっちが諦めるまで殴られるか、誰かが通りかかればいい。殴られれば殴られるほど、ヒロインの気持ちは主人公に向くはずだ。……あとは痛いのを我慢するだけ。いくぞ!」

不良「うげっ!」

天真「え?」

カレン「だからやめてくださいって、忠告したんです」

不良「……つ、強ぇ」

ドサリと不良が倒れる。

カレン「大体、私、女の子にしか興味ありません!」

スタスタと歩き去って行く。

天真「……」

天真(N)「よし、大学から頑張ろう」

終わり。

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