【声劇台本】白銀の世界の住人
- 2021.12.24
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス
■キャスト
崇(たかし)
少女
■台本
崇(N)「その人は透き通るような白い肌で、どこか儚げで、そして……とても綺麗な人だった。そんな彼女に初めて出会ったのは、雪が舞い散る年の瀬だった」
少女「崇は夏と冬、どっちが好き?」
崇「んー。前は夏だったけど、今は冬かな」
少女「どうして?」
崇「君会えたから、かな」
少女「うわー。くさーい。なに、その時代遅れっぽい口説き文句」
崇「あれ? 敢えてだったんだけど、刺さらなかった?」
少女「私に古いって言われるって相当よ」
崇「そっか。じゃあ、今どきの口説き文句を考えておかないとな」
少女「そうそう。今どきの私達の情報網を舐めないでよね」
崇「あれ? じゃあ、デートに雪像見に行ったり、かまくら作ったり、雪だるま作ったりは、もしかしてつまらなかった?」
少女「……あれがデートだったことに、今、驚愕してるわ」
崇「じゃあ、スキーとかに誘っても良かったりする?」
少女「私はどっちかっていうと、ボード派かな」
崇「うわー。思ったより本当に進んでるというか馴染んでるね」
少女「基本、屋内じゃなきゃ、大丈夫よ。ああ、最近じゃ、屋内にスケートリンクがあるみたいね。そういうところなら、大丈夫だよ」
崇「え? スケートもできるの?」
少女「フィギュアスケートだっていけるし」
崇「ホントに? 見てみたい!」
少女「……あー、恥ずかしいから、また今度ね」
崇「でも、思ったより、色々なことできそうだね。デートプラン練り直さないと」
少女「うん。今度はちゃんとデートっぽくしてね」
崇「うーん。なにしようかなー。あれもしたいし、これも……あー、あれも捨てがたいな」
少女「そんなに焦らなくたっていいじゃない。まだ、1月だよ?」
崇「何言ってるのさ。あと3ヶ月くらいしかないんだよ。行けるところに行っておかなきゃ」
少女「ねえ、崇」
崇「なに?」
少女「ごめんね」
崇「なにが?」
少女「夏に……一緒にいてあげられなくて」
崇「……」
少女「私ね、今年の冬はすっごく楽しかったよ、崇と一緒にいられて」
崇「……まだ、会ってから一ヶ月くらいしか経ってないけど」
少女「ううん。十分だよ。崇と一緒にいるとね、なんていうか、毎日が輝いてるって感じがするの。……きっと、夏の日差しって、こうなのかなーって思ったりして」
崇「……」
少女「……夏も、崇と一緒にいたいなぁ。眩しい太陽を一緒に見たい」
崇「知ってる? 太陽はね、夏よりも冬の方が眩しいらしいよ」
少女「え? そうなの?」
崇「冬の方が太陽が近いから眩しく感じるらしいよ」
少女「へー、そうなんだ?」
崇「……同じだよ」
少女「え?」
崇「冬に君と会える。それだけで、僕の毎日は真夏の日々よりも輝いているよ」
少女「だ、だから……古いってば、口説き文句」
崇「あれ? そう?」
少女「ま、そんなことより、これからの予定決めましょ! 目いっぱい、輝かしい冬にするために!」
崇「うん、そうだね」
崇(N)「それからの3ヶ月間は、本当にあっという間だった。……そして、彼女との別れの日になった」
少女「うーん。そろそろ、春一番ってやつが来そうかな」
崇「そっか……」
少女「もう、そんな顔しないの。冬なんて、またすぐじゃない」
崇「半年も先だよ」
少女「半年なんてすぐじゃないすぐ」
崇「そりゃ、君ならそうかもしれないけど」
少女「とにかく、崇は夏の間、次の冬に何をするか考えてて! 次の冬は今回に負けないくらい、輝かしい冬にしてよね」
崇「うん、わかった」
少女「それじゃ、またね」
崇「うん、また」
崇(N)「そう言って、雪女の彼女は白銀の世界と共に、次の冬へと眠りについたのだった」
終わり。
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