【声劇台本】きらきらと光るもの

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス

■キャスト
アンナ
雪の精
その他

※こちらは映像系のシナリオをボイスドラマ化したものです

■台本

〇 雪の平原

  しんしんと降る雪。

アンナ(10)が雪をかき分けながら泣いている。

雪の精(N)「しんしんと降る雪の中で、アンナが泣いていた……」

アンナ「うう……どうしよう」

雪の精「どうしたの?」

アンナ「……きれい」

雪の精「ふふ。泣き止んでよかった」

アンナ「……お姉さん、だれ?」

雪の精「私? 私は雪の精霊よ」

アンナ「雪の精霊……」

雪の精「どうして、さっきは泣いていたの?」

アンナ「えっとね、お母さんの大事なブローチ、無くしちゃったの」

雪の精「あら……。それは大変。でも、寒い中、探してたら風邪ひいちゃうわよ」

アンナ「別に風邪くらいいいの」

雪の精「ダメよ。お母さん、悲しんじゃうわよ」

アンナ「大丈夫。……お母さん、もう死んじゃったから」

雪の精「……」

アンナ「お母さんが大事にしてたブローチ。ちょっと借りただけなのに……」

雪の精「そっか。でも、こんな雪の中じゃ見つかりっこないわ」

アンナ「それでも、探すの!」

雪の精「あのね、アンナ。そんなことしてもお母さんは喜ばないわ。何かあったら大変だもの」

アンナ「……でも」

雪の精「今日はもう帰りなさい。明日、また探すのを手伝ってあげるから」

アンナ「本当?」

雪の精「ええ」

アンナ「じゃあ、また明日来るね」

アンナが駆け出していく音。

場面転換。

アンナが走ってくる音。

アンナ「雪の精霊さん、来たよ」

雪の精「ふふ。来たのね。じゃあ、探そうか。今日は晴れだから探しやすいわね」

アンナ「うん」

アンナが雪を掘り返している音。

雪の精「ねえ、アンナ。雪だるま、作らない?」

アンナ「え? でも……」

雪の精「ふふ。少しくらい遊んでもいいんじゃないの?」

アンナ「うーん。じゃあ、ちょっとだけ」

場面転換。

アンナ「えへへ。できた」

雪の精「あらあら、大きいわね。アンナは相変わらず雪だるま作るのがうまいわ」

アンナ「うん。だって、たくさん作ってたから」

雪の精「そう」

アンナ「私ね、冬が大好き」

雪の精「あら、どうして? 冬は寒くて嫌いって人が多いのよ」

アンナ「私は好き! だって、雪が降るから」

雪の精「……」

アンナ「雪はね。きらきら光るの。ほら、あそこ、きらきらってね」

雪の精「ああ、あれは太陽の光が反射してるのよ」

アンナ「あとね、雪だるま作るのも好きなの」

雪の精「たくさん、作ってるものね」

アンナ「うん! 冬は雪だるまの友達がいっぱい作れるからうれしいんだ。ひとりぼっちじゃないの」

雪の精「……ねえ、アンナ。人間のお友達は?」

アンナ「いないよ」

雪の精「あら、どうして?」

アンナ「だって、一人で遊んだほうが楽しいから」

雪の精「そんなことないわ。お友達と一緒に遊ぶの、きっと楽しいわよ」

アンナ「でも……」

雪の精「何か、心配なことがあるの?」

アンナ「あのね、アンナね、引っ越してきたの」

雪の精「……」

アンナ「だからね、お友達が一人もいなくて」

雪の精「あら、なら作ればいいんじゃないの?」

アンナ「ううん。怖いの」

雪の精「怖い?」

アンナ「なにをお話ししたらいいかわからないし」

雪の精「そんなのなんでもいいんじゃない?」

アンナ「それに、意地悪されても嫌だから」

雪の精「大丈夫。そんなことする子はいないわ」

アンナ「嫌なの! アンナは一人がいいの」

雪の精「なら、私といるのも嫌?」

アンナ「ううん。雪の精霊さんは好き」

雪の精「ねえ、アンナ。滑り台作ろうか。雪の滑り台」

アンナ「なにそれ! 面白そう!」

雪の精「ふふ。それじゃ、一緒に作りましょう」

場面転換。

雪を積み重ねていく音。

アンナ「えへへ。なんかね、お母さんと一緒にいるみたい」

雪の精「そう。それは嬉しいわ。でも、お母さんはこんな風に遊んでくれなかったでしょ?」

アンナ「うん。お母さんは病気だったから……。でも本はたくさん読んでくれたよ?」

雪の精「お母さんはアンナが友達いないって知ってたの?」

アンナ「ううん。お友達、いっぱいいるって嘘ついてたから」

雪の精「……どうして、嘘ついたの?」

アンナ「だって、お母さん、心配するから」

雪の精「でも、嘘ついたほうが、お母さん、悲しむと思うわ」

アンナ「……」

雪の精「ごめんなさい。攻めるつもりはないの。でもね、やっぱり、お友達作ったほうがいいと思うな」

アンナ「……」

雪の精「あら、今日はもう遅いわ。帰ったほうがいいわね」

アンナ「ねえ、明日も一緒に遊んでくれる?」

雪の精「ええ。もちろん!」

場面転換。

アンナが雪を積み重ねて滑り台を作っている。

雪の精「アンナは今日も頑張り屋さんね」

アンナ「えへへ」

雪の精「こんなに頑張り屋さんなアンナなら、きっと素敵なお友達ができるわ」

アンナ「……」

雪の精「そういえば、アンナはどうしてブローチを借りたの?」

アンナ「実はね、クラスの子の誕生日会の呼ばれてたの。それで……」

雪の精「あらあら、そうなの。そこでお友達できなかったの?」

アンナ「……誰とも話せなかったの」

雪の精「そう……」

アンナ「きっと、みんな、アンナのこと嫌いなんだよ」

雪の精「そんなことないわ」

アンナ「……」

場面転換。

アンナ「できた!」

雪の精「すごいわ!」

アンナ「滑ってみる」

  アンナが雪の滑り台を滑る音。

雪の精「ふふふふ」

場面転換。

アンナが走ってくる音。

アンナ「あ!」

立ち止まるアンナ。

目線の先には、数人の子供が雪の滑り台で遊んでいる声。

アンナ「……」

背を向けて帰ろうと歩き出すアンナ。

雪の精「一緒に遊ばないの?」

アンナ「……でも、断られたら」

雪の精「大丈夫。一緒に遊ぼうって言ってみて」

アンナ「……」

雪の精「頑張って」

アンナ「うん」

アンナが子供たちのところへ行く。

アンナ「一緒に遊ぼう」

子供「うん、いいよ!」

アンナと子供たちが遊んでいる声。

雪の精「ふふふ……」

場面転換。

アンナと子供たちが遊んでいる声。

場面転換。

アンナと遊んでいる子供たちの声が多くなる。

場面転換。

アンナと子供たちの笑う声。

雪の精「……」

場面転換。

春。足音が雪の上ではなく、草の上の足音。

アンナが大勢の子供たちと遊んでいる。

キランとした音。

雪の精「あら、こんなところにあったのね、私のブローチ……」

遠くくでアンナと大勢の子供たちが遊んでいる声。

雪の精「よかったわね、アンナ。これで、お母さんがいなくても、大丈夫ね。……最後に一緒に遊べて、楽しかったわ」

  雪の精が淡く光り、そして消える。

アンナ「……」

  雪の精がいたところを振り返るアンナ。

子供「アンナちゃん、どうしたの?」

アンナ「ううん、なんでもない!」

  再び、友達と遊び始めるアンナ。

終わり

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