【声劇台本】白銀の世界の住人

〈前の10枚シナリオへ〉   〈次の10枚シナリオへ〉

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
人数:2人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス

■キャスト
崇(たかし)
少女

■台本

崇(N)「その人は透き通るような白い肌で、どこか儚げで、そして……とても綺麗な人だった。そんな彼女に初めて出会ったのは、雪が舞い散る年の瀬だった」

少女「崇は夏と冬、どっちが好き?」

崇「んー。前は夏だったけど、今は冬かな」

少女「どうして?」

崇「君会えたから、かな」

少女「うわー。くさーい。なに、その時代遅れっぽい口説き文句」

崇「あれ? 敢えてだったんだけど、刺さらなかった?」

少女「私に古いって言われるって相当よ」

崇「そっか。じゃあ、今どきの口説き文句を考えておかないとな」

少女「そうそう。今どきの私達の情報網を舐めないでよね」

崇「あれ? じゃあ、デートに雪像見に行ったり、かまくら作ったり、雪だるま作ったりは、もしかしてつまらなかった?」

少女「……あれがデートだったことに、今、驚愕してるわ」

崇「じゃあ、スキーとかに誘っても良かったりする?」

少女「私はどっちかっていうと、ボード派かな」

崇「うわー。思ったより本当に進んでるというか馴染んでるね」

少女「基本、屋内じゃなきゃ、大丈夫よ。ああ、最近じゃ、屋内にスケートリンクがあるみたいね。そういうところなら、大丈夫だよ」

崇「え? スケートもできるの?」

少女「フィギュアスケートだっていけるし」

崇「ホントに? 見てみたい!」

少女「……あー、恥ずかしいから、また今度ね」

崇「でも、思ったより、色々なことできそうだね。デートプラン練り直さないと」

少女「うん。今度はちゃんとデートっぽくしてね」

崇「うーん。なにしようかなー。あれもしたいし、これも……あー、あれも捨てがたいな」

少女「そんなに焦らなくたっていいじゃない。まだ、1月だよ?」

崇「何言ってるのさ。あと3ヶ月くらいしかないんだよ。行けるところに行っておかなきゃ」

少女「ねえ、崇」

崇「なに?」

少女「ごめんね」

崇「なにが?」

少女「夏に……一緒にいてあげられなくて」

崇「……」

少女「私ね、今年の冬はすっごく楽しかったよ、崇と一緒にいられて」

崇「……まだ、会ってから一ヶ月くらいしか経ってないけど」

少女「ううん。十分だよ。崇と一緒にいるとね、なんていうか、毎日が輝いてるって感じがするの。……きっと、夏の日差しって、こうなのかなーって思ったりして」

崇「……」

少女「……夏も、崇と一緒にいたいなぁ。眩しい太陽を一緒に見たい」

崇「知ってる? 太陽はね、夏よりも冬の方が眩しいらしいよ」

少女「え? そうなの?」

崇「冬の方が太陽が近いから眩しく感じるらしいよ」

少女「へー、そうなんだ?」

崇「……同じだよ」

少女「え?」

崇「冬に君と会える。それだけで、僕の毎日は真夏の日々よりも輝いているよ」

少女「だ、だから……古いってば、口説き文句」

崇「あれ? そう?」

少女「ま、そんなことより、これからの予定決めましょ! 目いっぱい、輝かしい冬にするために!」

崇「うん、そうだね」

崇(N)「それからの3ヶ月間は、本当にあっという間だった。……そして、彼女との別れの日になった」

少女「うーん。そろそろ、春一番ってやつが来そうかな」

崇「そっか……」

少女「もう、そんな顔しないの。冬なんて、またすぐじゃない」

崇「半年も先だよ」

少女「半年なんてすぐじゃないすぐ」

崇「そりゃ、君ならそうかもしれないけど」

少女「とにかく、崇は夏の間、次の冬に何をするか考えてて! 次の冬は今回に負けないくらい、輝かしい冬にしてよね」

崇「うん、わかった」

少女「それじゃ、またね」

崇「うん、また」

崇(N)「そう言って、雪女の彼女は白銀の世界と共に、次の冬へと眠りについたのだった」

終わり。

〈前の10枚シナリオへ〉   〈次の10枚シナリオへ〉