【声劇台本】生命線

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
政弥(まさや)
その他

■台本

アナウンサー1「……容疑者が詐欺容疑で逮捕されました。被害総額は数千万に上るとのこと……」

政弥「あっ! ヤバい! 占い占い!」

チャンネルを変える音。

アナウンサー2「今週のワーストの星座は……この星座!」

ババーンという効果音。

政弥「マジかよ……。また、最悪か。……やっぱり俺は……」

政弥(N)「俺は昔から信心深かった。占いなんかも信じたし、風水なんかもこだわってもいる。そんな俺の人生が大きく変わったのは、一週間前のことだった」

場面転換。

占い師「あなた、最近、ずっと運が悪いですね?」

政弥「は、はい。そうなんです!」

占い師「……実は言いにくいのですが、あなた……今月で命を落とすことになります」

政弥「え? ……そ、そんな急に……」

占い師「ちょっと手を見せてください」

政弥「は、はい……」

手を見せる政弥。

占い師「ここの線。これが生命線です」

政弥「……み、短い」

占い師「この長さだと、本当にすぐですね」

政弥「……」

占い師「ですが、運命というのは変えられます。変えるには運が必要ですが」

政弥「運……ですか?」

占い師「そう。あなたの運が尽きた時、それが命が消えるときなのです」

政弥「でも、運なんて、自分じゃどうしようもないですよ」

占い師「そうですね。ですから、このペン弾を付けてください。そして、良いことをするのです」

政弥「いい事?」

占い師「はい。このペンダントは徳を運に変える作用があります。だから、このペンダントをして、いいことをするのです」

政弥「……もしかして、これって霊感商法じゃ……?」

占い師「はは。そう思うのも無理はありません。ですから、これは無料でお渡しします。来月、もう一度、来てください。来月来ると言うことは、命が救われたということです。そのとき、あなたなりのお礼をいただければそれでいいです」

政弥「……無料で、来月に……ですね。わかりました」

政弥(N)「ちなみに、そのときの占い料は1000円だった。それにペンダントを無料でくれたということで、金額面を見ても霊感商法とは思えない。となると、本当ということだ……」

場面転換。

道路を歩く政弥。

政弥「……最近占いの、見るもの見るもの、全部、最悪。つまり、運がないってことだ。やっぱり、俺、死に向かってるのかも……。何か、何かいいことしないと」

学生「募金、お願いしまーす」

政弥「……」

ちゃりんとお金を入れる音。

学生「ありがとうございました」

政弥「……」

政弥が歩くが、べちゃっと何かが落ちてくる音。

政弥「うわっ! 鳥のフンだ。……くそ、運がないな……。募金くらいじゃ、ダメなんだ……。……よし、それなら」

政弥(N)「それから俺は困っている人を探しては助けて回った。……だが、運は一向によくならない。それどころか、色々な人に話しかけることで、不審者として、警察に職質されたくらいだ」

場面転換。

政弥「……馬鹿らしいな」

政弥(N)「どんなに良いことをしたところで、全然、運に変換されない。俺の心は完全に折れた。そんな人間がやることと言えば……」

場面転換。

ウィーンとドアが開く音。

政弥「……やっちまったぜ、借金。いや、どうせ今月までの命だ。こうなったら、遊んで遊んで遊びまくってやるぜ!」

政弥(N)「一週間くらいは、豪遊出来ていたが、そのうち、死の恐怖の方が勝っていき、遊びにも集中できなくなってきた」

場面転換。

政弥「ダメだ……。いつ、自分に死がやってくるかわからないなんて、耐えられない。……死刑囚ってこんな気分なんだろうか」

場面転換。

ウィーンとドアが開く音。

店員「いらっしゃいませー」

政弥「……」

店内を歩く政弥が、ぴたりと立ち止まる。

政弥「あ、新刊出てる」

政弥(N)「最近ハマった漫画。結局、この漫画の最終回も見れないんだ。あー、くそ、なんで俺だけ、こんな目に遭うんだ! もうイライラする。こうなったら、万引きしてやる」

本を手に取り、服の中に入れる。

そして、そのとき、一人の男が店内に入って来る。

店員「いらっしゃいませ」

男「おい! 全員動くな! 動いたら刺すぞ!」

男がナイフを振り回す。

店内にいる客の悲鳴が響く。

政弥「うわー。ホント、俺、運がないな。コンビニ強盗に居合わせるなんて……」

男「おい、このカバンに金を詰めろ!」

店員「あ、あの……」

男「早くしろ!」

政弥(N)「こういうとき、漫画の主人公なら、身を挺して、犯人に向かっていくんだろうな。……けど、実際はそんなこと、怖くてできやしない」

政弥「……あれ? 待てよ」

政弥(N)「そうだ。俺、どうせ、死ぬんだ。なら、格好よく死にたい」

政弥「うおおおお!」

男「な、なんだお前……うわああ!」

男と揉み合う政弥。

男「く、くそ……」

政弥「うっ!」

ザクっという音が響く。

男「くそ、刺しちまった……」

政弥「逃がすか!」

男「うおおお、離せ!」

店員「うわああ!」

ドカッと体当たりする店員。

男「おわあ!」

場面転換。

レポーター「本日、コンビニ強盗を、来店していた男性客が店員と力を合わせて取り押さえました。この勇気ある男性に警察は感謝状を……」

場面転換。

警察官「いやあ、運がよかったですねぇ。服の中に入れていた本のおかげでナイフが深く刺さらなかったみたいですよ」

政弥「……そうですか。ここに来て、運が向いてきたのかな。でも、もう遅いです。もうすぐ俺は死にますから」

警察官「いやあ。あなたは100歳くらいまで長生きしそうですよ」

政弥「え? どうしてですか?」

警察官「私、手相が趣味でしてね。ほら、あなたの生命線、すごく長いじゃないですか」

政弥「……え? 生命線って、こっちじゃないんですか?」

警察官「いや、違いますよ」

政弥「でも……プロの占い師に見てもらったんですが……」

警察官「ええ? おかしいなぁ。こんなの間違える人いないと思うけど……。あ、もしかして騙されたのかも」

政弥「え? 騙された?」

警察官「ま、運が悪かったかもしれませんね。今度からは気を付けてください」

政弥「じゃあ、俺、死なないってことか? よかったー。運が上がってきたのかも。……あ、でも……」

警察官「どうしました?」

政弥「あ、いや……なんでもないです」

政弥(N)「借金、どうしよう?」

終わり。

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