靴屋の小人

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、童話、コメディ

■キャスト
ジョー
アンナ
小人1~2

■台本

ジョー「やべえ。全然、靴が売れねえ」
アンナ「……作ってないからじゃない? 物がないのに売れるわけないと思うけど」
ジョー「そうは言うけどさ」
アンナ「なに?」
ジョー「面倒くさいじゃん。靴作るの」
アンナ「……はあー。なんで、こんなのと結婚したんだろ、私」
ジョー「ヤバいぞ、ヤバい。このままじゃ、食っていけない」
アンナ「……今まで食べていけたのが不思議なくらいなんだけど」
ジョー「それは、あれだよ。ジイさんの遺産だよ、遺産」
アンナ「誇らしげに言わないで」
ジョー「んー。どうしようかな。今更、働きに出るのもなー」
アンナ「靴を作るのが面倒くさいなら、仕入れれば?」
ジョー「ナイスアイディアだ! お前は天才だな!」
アンナ「……商売の基本だと思うんだけど」
ジョー「あっ!」
アンナ「どうしたの?」
ジョー「そもそも、仕入れる金がない」
アンナ「うそでしょ……?」
ジョー「くそ。こうなったら……」
アンナ「靴を作るの?」
ジョー「小人に頼るしかない!」
アンナ「は? 何言ってるの?」
ジョー「ジイさんが昔言ってたんだよ。我が家には代々、小人が住み着いているって。もし、どうしようもなくギリギリまで困ったら、小人を頼ると良いってさ」
アンナ「……いや、普通にあんたが靴を作ればいいだけどだと思うんだけど」
ジョー「よーし! そうと決まれば、食べ物の用意だ!」
アンナ「え? 食べ物が必要なの?」
ジョー「まあな。ただ働きはしないタチらしい」
アンナ「随分と世俗的な妖精なのね……」
ジョー「えーっと、何があったかな? 確か、戸棚の中にカビが生えたパンがあったはず……」
アンナ「それ、ただ働きより酷いと思うけど」

場面転換。

ジョー「よし! 準備万端だ! 靴の材料と道具は用意しておいたし、あとは明日までに小人が靴を作ってくれるのを寝て待つだけだ!」
アンナ「……ごめんなさい、小人さん。夫に悪気はないんです。ただ、バカなだけなんです……」
ジョー「さあ、張り切って寝るぞー!」
アンナ「……」

場面転換。

小人1「あー、くそ、ダリィ!」
小人2「まあまあ、そう言わないで。困ったときに手伝う約束でしょ?」
小人1「はいはい。わかったよ」

小人の2人が机の上に登る。

小人1「よいっしょっと! ふう、机の上に上がるだけでも大仕事だな」
小人2「ふう。……そうだね。もう、一仕事した感じがするよね」
小人1「よし、じゃあ、まずは休憩しようぜ」
小人2「……いきなり休憩なんだ?」
小人1「お! パンがあるぞ、パン! 久しぶりだなー」

小人1がパンをかじる。

小人1「うげっ! ぺ! ぺ! なんだこりゃ! カビ生えてるじゃねーか!」
小人2「こっちのチーズは大丈夫だよ」
小人1「どれどれ……ん、うまい!」
小人2「美味しいけど、チーズだけっていうのもねー」
小人1「ワインとかないかな?」
小人2「ちょっと、戸棚見てくる」
小人1「俺も他に食べ物ないか、探してくるよ」

場面転換。

小人1「いやー、大量大量」
小人2「なんだかんだいって、結構、隠し持ってたね」
小人1「よし、じゃあ、ワインで乾杯だ」
小人2「かんぱーい!」
小人1「ほれ、クラッカー」
小人2「ありがとう。チーズに合うよね」
小人1「で、こっちが肉で……」

場面転換。

小人1「ぐーぐー」
ジョー「……」
小人2「すーすー」
ジョー「おい!」
小人1「うわっ! ビックリした! 急にデカい声出すなよ!」
ジョー「どうなってるんだ! 靴が出来てねーじゃねーか! てか、作ろうとした形跡すらないぞ」
小人1「あっ……」
小人2「つい、宴会に夢中になっちゃって……」
ジョー「早く作れ!」
小人1「はいはい。わかったわかった」
小人2「それじゃ、えっと……」
小人1「……んー」
ジョー「どうした? 早く動けよ」
小人1「わからん」
ジョー「……なにがだ?」
小人2「靴ってどうやって作るの?」
ジョー「え? 知らないのか?」
小人1「知らない」
ジョー「ちょっと待て。ジイさんが困ったら、お前ら呼び出せって言ってんだけど」
小人1「そんなこと言われてもなー?」
小人2「うん。困っちゃうよねー」
ジョー「あれ? ジイさんのとき、お前らが靴を作って大金持ちになったんじゃねーの?」
小人1「いや。靴はジイさんが作ってたよな?」
小人2「うん」
ジョー「あれ? あれ? どういうことだ?」
小人1「大体さー、俺たち、こんなに小さいのに、人間の道具とか使えないだろ」
ジョー「あ、確かに」
小人2「そもそも、小人に頼るっていうのはどうかと思うんだよね、人としてさ」
ジョー「……お前ら、せめて食った分は働けよ」
小人1「はい、ブーメラン! ニートのお前に言われたくないし」
ジョー「ぐぅ……。二、ニートじゃないぞ。俺は靴屋だし」
小人2「でも働いてないよね?」
小人1「なら、ニートと変わらないじゃん」
ジョー「そういうこと言うなよ! 凹むだろ!」
小人1「お前さ、靴作るの面倒くさいとか言ってるけど、作れないんだろ?」
ジョー「なな、何言ってんだよ。作れるって。余裕だっての!」
小人1「はいはい。そういう見栄はいいから」
ジョー「おまっ! そういうこと言っちゃう? わかったよ! 本気出してやる! てめえらの方が無能だって教えてやんよ!」

場面転換。
靴作りをしているジョーとそれを見ている小人。

ジョー「えーと、これをこうして……」
小人1「おい、ズレてるズレてる!」
ジョー「え? マジで?」
小人2「そこがズレると、こっちに合わなくなるよ」
ジョー「うるさいな。これでいいんだろ?」
小人1「お前、仕事が雑だぞ」
ジョー「見てるだけのお前に言われたくねー!」
小人2「ほら、手を止めない!」
ジョー「わかってるよ」

場面転換。

小人1「その色合いはダサいって!」
小人2「こっちの赤を使った方がいいよ」
ジョー「ホントか? お前らが流行りを知ってるとは思えんけどな」
小人1「引きこもりのお前よりは知ってるよ」
ジョー「ぐっ!」

場面転換。

ジョー「よっしゃー! できたぞー!」
小人1「おおー、やるじゃん」
ジョー「ふふふふ。本気になればこんなもんよ」

場面転換。
ドアが開き、お客が出ていく。

アンナ「ありがとうございましたー」

客を見送り、工房まで行くアンナ。

アンナ「あなた。靴、全部売れたわよ。新しいのまだ?」
ジョー「ちょっと待ってくれ。もう少しでできる」
小人1「まだまだ無駄な動きが多いぞ」
ジョー「うるさいな!」
小人2「ほら、集中して! 段々、作るの早くなってきてるよ」
ジョー「お、そうだろそうだろ?」
小人1「調子に乗るなって」
アンナ「ふふ……」

歩き出すアンナ。

アンナ「あの人はやればできる人なのよね。……きっとおじいさんもそうだったんだわ。ああやって、小人に囃し立てられて靴を作っていたのね」

終わり。

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