【声劇台本】陽だまりの中で

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■概要
人数:2人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
陽葵(ひなた)
直人(なおと)

■台本

陽葵「ふう。疲れた」

陽葵が草原の上に座る。

直人「疲れるなら、止めたらどうだ?」

陽葵「そうもいかないよ。みんなに期待されてるんだもん」

直人「そんなのは、期待じゃなくて、押し付けだろ」

陽葵「押し付けでもいいんだよ。押し付けでも、みんなに求められてるっていうのは嬉しいものだよ」

直人「そういうもんかねぇ……」

陽葵「それに、私が明るく振舞うだけで、その場の雰囲気が明るくなるっていうなら、私の気疲れなんて、安い物だよ」

直人「俺にはわからないな。みんなのことなんか、どうでもいいだろ。他人のことを気にして生きるなんて、俺はごめんだね」

陽葵「ふふふ。それ、ずっと言ってるもんね」

直人「俺は自由気ままに一人で

生きたい。ただ、それだけだ」

陽葵「人は一人じゃ生きていけないよ」

直人「んー。じゃあ、極力一人で、だ。とにかく他人の顔色を窺って生きるなんて、ごめんだね」

陽葵「私はそうは思わないな。人に喜んでもらえると、私も嬉しいよ」

直人「ふーん」

陽葵「誰だって、人が喜んでいるのを見たら、自分も嬉しい気持ちにならない?」

直人「ならないね」

陽葵「私ね……。よく人から、陽だまりのようだって言われるの」

直人「陽だまり?」

陽葵「うん。一緒にいると、温かくて、安心するって」

直人「ふーん。ま、名前通りって感じだな」

陽葵「そうだね」

直人「ま、お前がそう思うなら、それでいいんじゃないか?」

陽葵「私は……なれてるかな? 君の陽だまりに」

直人「……どうだろうな」

陽葵「……そこはなれてる、っていうところじゃない?」

直人「じゃあ、そういうことにしておいてやるよ」

陽葵「……意地悪」

直人「言っただろ。俺は人の顔色を窺うのはごめんだって」

陽葵「……ま、いいや。私は君の陽だまりになれてるって、勝手に思っておくよ」

直人「ああ、そうしとけ。結局、真実なんて、誰にだってわからないもんだからな。お前がそう思っておけば、それが真実だ」

陽葵「どういうこと?」

直人「つまり、本音なんて、その人間にしかわからないだろ? 言ったことが本当かどうかなんて、他人にはわからない。わかる方法なんてない。それなら、それが真実だと思っておけば、お前の中ではそれが真実だ」

陽葵「なんか、しっくりこないけど」

直人「ははは。納得するかどうかも、結局はお前次第だ」

陽葵「よくわからないけど、私は、君の陽だまりになれたって思っておくよ」

直人「ああ。それでいい」

陽葵「……君が私にとっての陽だまりだったように」

直人「……俺は他人に気を遣ったりはしない。だから、俺は、お前の陽だまりと意識してたわけじゃないぞ」

陽葵「いいの。私の中では君は陽だまりだった。それは私の中での真実」

直人「ふふ。そうか。それなら、俺が文句をいう事じゃないな」

陽葵「……ありがとう」

直人「俺にとっては意味のないお礼だけど、受け取っておくよ」

陽葵「……うん」

直人「ま、疲れたら、また来いよ。お前の陽だまりに」

陽葵「うん。ありがとう」

直人「けど、あんまりこき使うなよ。それでなくても、気ままに生きたいタイプだったんだからな」

陽葵「別にいいでしょ。君は疲れることはないんだから」

直人「ま、そうだな。お前が想像するだけだからな」

陽葵「うん」

直人「結局、自分の陽だまりは自分自身だった、ってことか」

陽葵「違うよ。ここには君がいる。私の中ではそれが真実」

直人「お前の中の真実がそれなら、俺は文句言えないな」

陽葵「うん。君はずっとずっと、ここにいてくれる。それが私の真実」

終わり。

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