【声劇台本】天才の証明

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
廉治(れんじ)
高城 尚樹(たかしろ なおき)
瀬良(せら)
その他

■台本

ボクシング会場。

カンカンカンとゴングが鳴り響く。

ワーッと観客が盛り上がる。

アナウンサー「レフェリー止めた!  新たな日本王者、誕生! その名は高城尚樹! 前評判では、不利との声が多かった高城、なんと瀬良を、一ラウンドKOです!」

廉治(N)「高城尚樹。俺にとってのヒーローだ。高城の兄貴は強くて、天才で、傲慢だった。そんな兄貴の背中を見ているだけで、俺は楽しかった。……いや、兄貴の背中に俺の人生を乗せていたのかもしれない」

場面転換。

ボクシングジム。

ジムメイトが練習している。

そんな中、廉治が会長にミットを受けて貰っている。

会長「ほらほら! 廉治、顎が上がってる! そんなんじゃ、カウンターの餌食だぞ」

廉治「はい!」

ミットを打ち続ける廉治。

ビーっと3分を告げる音が響く。

会長「よし、廉治、休憩だ」

廉治「はあ……はあ……はあ……」

会長「廉治、今年のA級はいけそうだな」

廉治「頑張ります……」

ガラッとジムのドアが開く。

尚樹「うーす……」

会長「おう、来たか、尚樹。すぐにミット打ちだ! 着替えろ」

尚樹「(欠伸)はいはい……」

更衣室に入っていく尚樹。

廉治「……会長。兄貴……高城さん、勝てますよね?」

会長「どうだかな。俺の見立てじゃ、五分五分だ」

廉治「……」

会長「相手の瀬良も、3年越しのリベンジマッチだからな。かなり気合が入ってる」

廉治「前回は1ラウンドKOですよ。あれから兄貴も経験積んだし、今回も余裕ですよ、きっと」

会長「こればっかりはやってみないとわからん」

廉治「兄貴なら勝ってくれますよ」

会長「……なあ、廉治。勝負はときに、負けた方が成長することもある。負けることが必要ということもあるんだ」

廉治「会長は、兄貴が負けて欲しいってことですか!」

会長「いや、そうは言っておらん」

ガチャリと更衣室から出てくる尚樹。

バンバンっとグローブを打ち合わせる。

尚樹「廉治。すまんな。リング借りるぜ」

廉治「あ、はい」

廉治がリングから降りる。

会長「来い! 試合まで時間がないぞ!」

尚樹「はいはい」

バンバンとミット打ちが始まる。

練習生1「今回、高城さん、ダメそうだよな」

練習生2「一回勝ってる相手だから舐めてるんだよ。この時間に来て、30分くらい練習して帰るんだぜ? 信じられるかよ」

練習生1「高城さん、天狗になってるよな。天才だ、なんだっておだてられててさ」

練習生2「会長も今回は、さすがに負けて欲しいって思ってるんじゃないか? 30分の練習でも、何もいわねえもん」

練習生1「大体の奴は同じように思ってるよな」

廉治「おい! てめえら! なにふざけたこと言ってやがる!」

練習生1「あ、いえ……その、すいません」

練習生2「けど、周りの予想は五分五分です。しかもあんな練習量じゃ……」

廉治「前回は不利だって言われたのに、1ラウンドKOだったんだぞ」

練習生1「でも、あれは対戦相手がケガしてたから……」

廉治「あんなの負け惜しみだ! 1ラウンドKOで、バツが悪かったから、怪我したなんて嘘言いやがったんだよ!」

練習生2「……試合の2日前に階段で押されて落ちたって話です……」

廉治「だーかーら! そんなの、あっちの言い訳だって! 仮にそれがホントのことだったとしても、だ! 試合に万全の状態で臨めなかったのは、あっちのミスだろ!」

練習生2「は、はい……。すいません」

尚樹「おいおい、廉治。あんまり、練習生をイジメんなよ」

廉治「すんません……って、兄貴、ミット打ちは?」

尚樹「あー、今日は気分が乗らねえ。今日は帰るわ。……会長! アレは?」

会長「事務所に置いてある」

尚樹「サンキュー。じゃあ、借りていくな」

廉治「あの……兄貴。今回も、勝てますよね?」

尚樹「たりめーだ! 天才だぞ、俺」

廉治「そ、そうですよね! 兄貴、天才ですからね」

尚樹「今回は秒殺してやるよ、秒殺」

廉治「期待してるっす!」

尚樹「じゃな。お疲れー」

尚樹がドアを開けて、事務所に入っていく。

練習生1「ダメだな。完全に舐めてる」

練習生2「秒殺されるんじゃねーか?」

廉治「ああ!?」

練習生1・2「……」

場面転換。

道を歩く廉治。

廉治「ちっ! どいつもこいつも。兄貴が負けるわけないんだ! 兄貴は天才なんだ! ……こうなったら、また……」

場面転換。

瀬良がロードワークをしている。

瀬良「はっ! はっ! はっ!」

廉治「おらあ!」

ブンと廉治のバットが空を切る。

廉治「なっ!」

瀬良「あぶねえ。やっぱりな。また、来ると思って警戒してて正解だったぜ。さてと、今度はそのグラサンとマスクの下を見せてもらうぞ」

廉治「くそ!」

走り出す廉治。

瀬良「あ、待ちやがれ!」

場面転換。

廉治が歩いている。

廉治「はあ……はあ……はあ……。なんとか撒けたみたいだな。……くそ、明日、もう一回……」

尚樹「はっ、はっ、はっ!」

尚樹が走っているのを見つける。

廉治「あれ、兄貴? ロードワーク?」

場面転換。

尚樹が広場でシャドーをしている。

尚樹「しっ! しっ! しっ!」

廉治「……シャドー? どうして?」

会長「見られちまったか」

廉治「あ、会長……」

会長「尚樹は練習してないわけじゃない。というより、誰よりも隠れて練習してる」

廉治「どうして、隠れて練習を?」

会長「お前の為だろうな」

廉治「俺の……?」

会長「お前の前では天才でいたいのさ。お前が尚樹のこと天才だと信じているからな」

廉治「……あ、兄貴は天才です」

会長「確かに、いいものは持ってる。けど、あいつは努力によって、あそこまで上り詰めたんだ。まあ、それを表に出さないから、勘違いされることが多いけどな」

廉治「……」

会長「なあ、廉治。あいつを信じてやれ」

廉治「え?」

会長「尚樹は天才じゃないかもしれない。だが、努力で勝利をもぎ取ってくるはずだ」

廉治「……」

会長「相手がケガをしてなくてもな」

廉治「……会長」

会長「絶対に勝ってくれるさ」

廉治「はい……」

場面転換。

ボクシングの試合場。

アナウンサー「さあ、始まりました。日本タイトルマッチ。三年前、瀬良を倒して日本チャンプとなった高城。今度はチャンピオンとして、瀬良を迎えうちます」

場面転換。

廉治が交番のドアを開ける。

廉治「あの、3年前の瀬良選手への傷害事件と3日前の傷害未遂の自首をしたいんですけど……」

場面転換。

ボクシングの試合場。

ゴングが鳴り響く。

観客がワーッと沸き上がる。

終わり。

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