【声劇台本】不思議な館のアリス 夢

〈前の10枚シナリオへ〉   〈次の10枚シナリオへ〉  

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
人数:1人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス

■キャスト
アリス

■台本

アリス「いらっしゃいませ。アリスの不思議な館へようこそ」

アリス「おっと、申し訳ありません。本日は、明けましておめでとう、と言った方がよろしいですね」

アリス「新年早々、お会いできてうれしいです」

アリス「そういえば、本日見る夢は初夢ですね。初夢の内容で、その年の運勢が決まる……と言われています」

アリス「どうぞ、良き夢を見れるよう、願っておきますね」

アリス「……え? 夢なんてすぐ忘れてしまう?」

アリス「そうですね。実は私も、あまり夢を覚えていないことが多いです」

アリス「それに私は夢は見るものではなく、叶えるものだと思っていますから」

アリス「あなたは夢はありますか?」

アリス「ふふふ。夢は何歳でも叶えることができると思います」

アリス「年齢を気にして、夢を諦めるなんて、それこそ虚しい事だと思いますよ」

アリス「……そこまで、年齢が気になりますか?」

アリス「確かに夢によっては年齢が関係することもありますが……」

アリス「そうですね。では、年齢が関係なくなればいいと思いませんか?」

アリス「つまり、永遠の命を手に入れるのです。そうすれば、年齢なんて、些細なことだと思いませんか?」

アリス「ふふふ。そうですね。永遠の命の方が夢、ですよね」

アリス「では、本日はそんな永遠の命を夢見た男性の話をしましょう」

アリス「その男性は世界の半分を手に入れたと言われるほどの富を持っていました」

アリス「男性はその富で自由気ままに生活し、まさに日々を謳歌していました」

アリス「そんなときです。その男性は病で体を壊し、倒れてしまいます」

アリス「それはそこまで大病ではありませんでしたが、男性は自分の死を意識し始めたそうです」

アリス「そこで男性は考えました。永遠の命が欲しいと」

アリス「男性はすぐに研究チームを結成し、永遠の命を叶えるために富を注ぎ込みました」

アリス「有り余る財力を駆使し、永遠の命の研究を進めていきます」

アリス「そして、そのチームが出した答えが……機械化、でした」

アリス「肉体を永遠に維持するのは不可能と考え、維持できないのであれば、古い肉体を入れ替える、という考え方に至りました」

アリス「男性の肉体の部分で、機能が滞ってきた部分を人工的な体に入れ替えていきます」

アリス「そして、体のほぼ全てが人工的なのものになった頃、今度は脳の機能が低下していきます」

アリス「そこで、男性は脳の機械化に踏み切ります」

アリス「全ての記憶を機械に入れ込み、AIと脳を組み合わせたような技術の開発に成功します」

アリス「そして、男性は全ての記憶と性格をAIに入れ込み、脳と入れ替えました」

アリス「……ええ。その男性は今も、生き続けているそうですよ」

アリス「その男性に質問すると、記憶と性格データを組み合わせて、ちゃんと、その男性が言うであろう答えを返すそうです」

アリス「果たして、その状態が、男性が生きているか、と言えるかは……人それぞれでしょう」

アリス「あなたはどう思いますか?」

アリス「夢の内容も人それぞれですが、夢の叶え方も人それぞれなのでしょう」

アリス「ただ、忘れてはいけなのが、その夢の叶え方が、自分の願いに合っているか、というところだと思います」

アリス「ですので、その男性が満足であるのなら、それはその男性の夢が叶ったということなのでしょう」

アリス「このお話は、夢は諦めなければ叶う……」

アリス「もしくは、歪んだ執着は夢さえもゆがめてしまう……という話になるのか……」

アリス「それも、あなた次第なのでしょう」

アリス「今回のお話はこれで終わりです」

アリス「ふふ。それではまたのお越しをお待ちしております」

終わり。

〈前の10枚シナリオへ〉   〈次の10枚シナリオへ〉