【声劇台本】遠い日の約束
- 2022.01.12
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、時代劇、シリアス
■キャスト
藤吉郎(とうきちろう)
五郎吉(ごろうきち)
秀吉(ひでよし)
石川五右衛門(いしかわ ごえもん)
家臣
■台本
木剣同士で打ち合う音。
藤吉郎「うおおお!」
五郎吉「てい!」
藤吉郎「いってぇ!」
五郎吉「俺の勝ちー」
藤吉郎「くっそー! 五郎吉! もう一回だ!」
五郎吉「やっぱ、藤吉郎は剣に向いてねーって。お前は頭がいいんだから、そっちで勝負しろよ」
藤吉郎「けど、強さは必要だろ。将軍は狙われることも多くなるんだしさ」
五郎吉「将軍って大きく出たな。お前、天かを取るつもりか? 平民なのに」
藤吉郎「ふっふっふ。平民が将軍になったら、みんな驚くだろ。後世にも伝えられる。大名に生まれるより、よっぽど楽しいって」
五郎吉「お前は凄いこと考えるよな。頭がいいのか、バカなのか」
藤吉郎「うるせーなー。俺が将軍になっても、家来にしてやらねーぞ」
五郎吉「はっはっは。お前の下なんてまっぴらごめんだね」
藤吉郎「なあ、五郎吉」
五郎吉「あん? なんだよ?」
藤吉郎「俺と一緒に天下目指さないか? お前の強さと俺の頭があれば、簡単だって」
五郎吉「んー。遠慮しとく。俺は大勢の人の幸せよりも、目に映る人たちを守りたい」
藤吉郎「そっか……」
五郎吉「お前が天下統一して、この乱世の時代を終わらせて、平和にしてくれよ。そうすれば、俺はのんびり暮らせる」
藤吉郎「お前が楽するために俺が苦労するのは気に食わんな」
五郎吉「はははは。けど、ま。お前ならやれるさ、絶対」
藤吉郎「ああ。やってやるさ。だから、お前は俺が平和な世の中をつくるのをしっかり見ててくれ」
五郎吉「ああ……。けど、もし、どうしても、お前が困ったときがくれば、しょうがないから助けてやるよ」
藤吉郎「ああ。期待して待ってるよ」
場面転換。
秀吉「……」
ふすまがすっと開く。
家臣「秀吉様。報告です。また、例の賊が現れました」
秀吉「……石川五右衛門。義賊か」
家臣「あんなものは民衆がもてはやしているだけです。やっていることはただの盗み。早急に捕まえて、さらし首にしてやりましょう」
秀吉「……難しいものだな」
家臣「……は?」
秀吉「儂は信長様の意思を継ぎ、天下を統一した。儂に歯向かう国は、もうない」
家臣「はい」
秀吉「天下統一。全ては世の中を平和にするため、儂はがむしゃらに進んできた」
家臣「……」
秀吉「だがどうだ? 天下統一したところで、民衆の生活は平和とは程遠い」
家臣「戦国の世と比べれば、随分と良くなっているかと……」
秀吉「ふむ。だがな。儂が目指しているのはこの程度ではない。もっと……」
家臣「……」
秀吉「原因はただ一つ。儂の権力の威を使い、民衆から金を巻き上げ、私腹を肥やす者たちの存在だ」
家臣「……はい」
秀吉「だが、その者達は実に巧妙で、儂に尻尾を掴ませない。理由がなければ、罰することなどできぬ」
家臣「はい、その通りです」
秀吉「……警告の御触れを出せ」
家臣「え? あの……」
秀吉「石川五右衛門に対し、直ちに、盗みを止めるようにと、出せ。このまま大人しくしておけば、不問とする」
家臣「そんな! 秀吉様! それでは盗みに入られた者達が納得しません」
秀吉「ふふふふ。盗みに入られたところに調査の者達を送れ。調査と言って、徹底的にその家を洗い出せ」
家臣「は、はい……。承知いたしました」
秀吉「……」
場面転換。
秀吉「……」
ふすまがスッと開く音。
家臣「秀吉様。報告です。また、石川五右衛門による盗みが行われました」
秀吉「……はあ。あのバカが」
家臣「は?」
秀吉「いや、それより、盗みに入られた家の調査はどうなっている?」
家臣「あ、はい。それが……その……多額の横領をしていることが発覚しました」
秀吉「そうか。厳重に処罰せよ」
家臣「はっ!」
秀吉「あと、もう一度、御触れを出せ。石川五右衛門にもう盗みを止めよ、と」
家臣「ですが……」
秀吉「……頼む」
家臣「はっ! 承知いたしました」
秀吉「……」
場面転換。
秀吉「……」
襖がスッと開く音。
家臣「秀吉様。石川五右衛門を捕えたとの報告が入ってきました」
秀吉「……そうか」
家臣「いかがしましょう?」
秀吉「石川五右衛門を儂の前に連れて来い」
家臣「はっ!」
場面転換。
秀吉「久しぶりだな、五郎吉」
五右衛門「今は、石川五右衛門だよ、羽柴秀吉様」
秀吉「なぜだ?」
五右衛門「あん? なにがだ?」
秀吉「なぜ、今頃になって儂の前に現れた?」
五右衛門「困ってたんだろ?」
秀吉「……」
五右衛門「戦での、敵からの危機なら、お前ならその頭で難なく切り抜けるだろ。今までしてきたようにな」
秀吉「……」
五右衛門「けど、仲間、家臣からとなれば、話は別だ。正攻法ではもちろん、多少裏から手を回したくらいじゃ、奴らは尻尾を出さない。お前に、調べる口実を作らせない」
秀吉「……」
五右衛門「だが、俺が盗みに入れば、俺のことを調べる口実で、現場をしらみつぶしに調べることができる」
秀吉「お前が入った家、全てから証拠が出た」
五右衛門「だろ? 俺の調査力も捨てたもんじゃねー」
秀吉「……どうして、捕まった? お前なら、逃げることも可能なはずだ。……今も、な」
五右衛門「いくら義賊って言っても、盗人は盗人。そんな犯罪者を逃したとなれば、お前の名も地に落ちる」
秀吉「……」
五右衛門「ま、ちと、俺もやり過ぎた。ここまで有名になっちまったら、逃げるなんてできなくなっちまったよ」
秀吉「……すまない」
五右衛門「ちゃんとやれよ」
秀吉「ん?」
五右衛門「ちゃんと世の中を平和にしろよ。そうすれば、俺もあの世でのんびり暮らせるからよ」
秀吉「……ああ。この国だけじゃなく、世界を平和にして見せるさ」
五右衛門「はははは。相変わらず大きいな、お前は。……じゃあな」
秀吉「ああ。先に行って待っててくれ」
終わり。
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