【声劇台本】生き人形

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ホラー

■キャスト
拓馬(たくま)
智子(ともこ)
健斗(けんと)

■台本

男がテレビ番組で怪談話をしている。

男「するとね、今まで肩くらいまでしかなかった髪が延びてるんですよ。ええ。人形のです。延び続ける人形の髪はついに、腰よりも長くなってしまったんですよ」

観客のキャーという声が響く。

場面転換。

拓馬が走って来る。

そして、玄関のドアを開けて、家に入って来る。

拓馬「ただいまー」

健斗「よお、拓真くん。大きくなったねえ」

拓馬「あ、健斗兄ちゃん! 久しぶり。いつ、日本に戻ってきたの?」

健斗「今日だよ。一か月くらい世話になるから、よろしく」

拓馬「うん! ねえ、外国の話、聞かせてよ」

健斗「ああ、いいよ。そうだ、お土産があるから、それ食べながらにしよう」

拓馬「ホント? やったぁ!」

場面転換。

ガラガラと物置を開ける音。

拓馬「えーっと、スキー板、スキー板っと。どこにしまったかな?」

物置を漁る拓馬。

拓馬「ん? ……うわああああああああ!」

場面転換。

勢いよくドアを開けて、家に入って来る拓馬。

拓馬「うああああああああああ!」

健斗「拓真くん、どうしたの?」

拓馬「物置に……物置に!」

健斗「物置?」

拓馬「なんか変なのが……女の人が」

健斗「女の人……? ああ、人形のことか。ごめんごめん。置く場所が無くて、物置に入れさせてもらったんだよ」

拓馬「人形?」

健斗「そう。お人形。ビックリさせちゃったかな」

拓馬「なんだ。人形かぁ。もう、すげービビったじゃん」

場面転換。

拓馬と智子が歩いている。

智子「へー。そんなにおっきかったんだ?」

拓馬「すげー、ビビったよ。だって、俺よりデカいんだぞ」

智子「等身大の人形って感じかな?」

拓馬「とうしんだい?」

智子「大人の人と同じ大きさってこと」

拓馬「うん。そのくらいおっきかったと思う。それに、なんていうか、なんか生きてるみたいでさー」

智子「へー。リアルなんだ?」

拓馬「あんなの、夜に見たらトラウマだって」

智子「ねえ、私も見てみたい」

拓馬「ええー。あんなの不気味なだけだって」

智子「いいの。だって、そんな大きさの人形なんてめったに見れないじゃない」

拓馬「うーん……」

場面転換。

拓馬と智子が歩いている。

拓馬「ただいまー」

智子「おじゃましますー」

健斗「おお、拓馬くん、お帰り」

拓馬「あれ? 健斗兄ちゃん、髪切ったの?」

健斗「ん? ああ。肩くらいまで長かったからね」

拓馬「でも、随分と短くしたね。寒くないの?」

健斗「まあ、少し、スース―するかな」

智子「ねえ、拓馬。早く人形見に行こうよ」

拓馬「うん。そうだね。じゃあね、健斗兄ちゃん」

健斗「ああ……」

場面転換。

ガラガラと物置のドアを開く。

拓馬「そこの奥にあるはずだよ」

智子「えーっと、あ、あれね」

智子が人形に走り寄る。

智子「へー。確かに、すごいリアルね。生きてるみたい」

拓馬「そうでしょ? ……え? ええ?」

智子「なに? どうしたの?」

拓馬「うわあああああああ!」

拓馬が走り出す。

場面転換。

拓馬「はあ、はあ、はあ!」

智子「ちょっと、拓馬! どういうこと? 説明してよ」

拓馬「髪が……」

智子「髪?」

拓馬「人形の髪が昨日と違うんだ」

智子「え? もしかして、長くなってるの? ……私、聞いたことある。生き人形っていうのがあって、その人形って髪が長くなっていくんだって」

拓馬「……ち、違うよ」

智子「違うの?」

拓馬「髪が……短くなってるんだ!」

智子「え?」

拓馬「昨日は腰くらいまで長かったんだ。でも、今は肩くらいまでしかなかったよ」

智子「……き、きっと見間違いよ」

拓馬「そうかなぁ……」

場面転換。

拓馬と智子が歩いている。

拓馬「……」

智子「……ねえ、拓馬」

拓馬「なに?」

智子「そんなに気になるなら、もう一回、見に行こうよ」

拓馬「もう一回?」

智子「そう。昨日と同じなら、見間違いだよ、きっと」

拓馬「そ、そうだね……」

場面転換。

拓馬「ただいま……」

健斗「おお、お帰り」

智子「……あれ?」

拓馬「どうしたの?」

智子「……」

健斗「じゃあ、俺、出かけるから」

拓馬「うん、行ってらっしゃい……」

健斗が行ってしまう。

智子「ねえ、あの人……」

拓馬「ん? 健斗兄ちゃんがどうかしたの?」

智子「髪、長くなってない?」

拓馬「え? そうかな? 見間違いじゃない?」

智子「そうかな……?」

場面転換。

ガラガラと物置のドアを開ける拓馬。

拓馬「……」

智子「大丈夫よ。絶対、見間違いだって。……ほら。……って、きゃあああああ!」

拓馬「うわあああああああああ!」

二人が走って逃げる。

場面転換。

拓馬「はあ、はあ、はあ」

智子「はあ、はあ、はあ」

拓馬「ね? 言ったとおりでしょ?」

智子「うん。すっごく短くなってた」

拓馬「うう……」

智子「やっぱり、あれは呪いの生き人形なのよ……」

場面転換。

健斗が歩いて来る。

健斗「ふふふふーん」

健斗が物置のドアを開けて、中に入る。

人形のとこで立ち止まる。

健斗「さてと、明日はどれにしようかな……」

パサッという音がする。

健斗「うーん。ちょっと不自然かな? こっちかな?」

パサッという音がする。

健斗「うん。よし、これでいこう」

パチンパチンというボタンを止める音。

拓馬「……健斗兄ちゃん。カツラだったんだ……」

智子「……人形に被せて、確認してたのね」

終わり。  

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